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seisai_no_resonance:sce05_04_05_2
「――お願い、私の炎」
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勾玉を中心として微かに空気が振動する。
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同時に私の炎が周囲を熱気で包み込んでいく。
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抑えなきゃいけない……そう思っていても、力を解放するには、
これだけの炎じゃ足りない。
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だから、奈岐を信じて、今まで通りに――。
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「燃えろッ」
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中空を漂う勾玉を握ると、炎が吹き荒れていく。
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これだけの炎が集まれば……あとはコントロールすればいいだけ。
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勾玉を握り締めた左手で暴れるように燃えさかる炎を抑え込む。
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念を込めて強く握れば、さらに火の粉が上がり、
腕や手の位置を少しでも動かせば、私を囲む炎が大きくぶれる。
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だから、全神経を自分の左手に集中させて、炎を抑えながら、
ゆっくりと手を掲げていく。
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「これで――!」
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充分な力を溜め込んだ勾玉が一際強く輝いた。
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身体中を火の粉が包み、制服から巫女の装束へ変化していく。
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次は――奈岐の番。
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私の視線に頷き、奈岐が私の勾玉と力の交信を交わす。
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「集中しろ……炎にそのまま触れるな……」
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そして、奈岐を冷気が囲み始める。
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星霊石が輝けば輝くほど、その冷気が強くなっていく。
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奈岐は昨晩のように穢れを呼ぶ声はあげず、
冷気を抑え込むことに全ての意識を集中させている。
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「――――!」
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私の肌に張り付いた氷塵が溶け、水蒸気が上がっていく。
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このまま奈岐が力を解放したら、また……!
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吹き荒れる氷の粒が次第に大きくなり、
炎とぶつかっては水蒸気になる。
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奈岐っ……!!
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心の中で彼女の名前を呼びながら、今は祈ることしか出来ない。
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下手に声をかければ、集中を乱すだけ――。
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そして、氷の塊が衝撃を伴って森を駆け抜けていく。
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そうか、私が先に炎の力を使っている分だけ……
奈岐はさらに氷の力を展開させないといけない。
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炎とぶつからない限界の範囲で、
冷気を最大限まで溜め込む必要がある。
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「…………っ」
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集中を続ける奈岐の表情が険しくなっていく。
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限界のラインがどこにあるのか、見極めるのは難しいはず。
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私は一度この姿になった以上……力を戻さない限り、
炎を再びコントロールすることは出来ない。
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だから、奈岐が上手くやってくれることを――。
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「グウゥゥ――ガアア(BROKEN:8_20)
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静寂を切り裂く咆吼、茂みが大きく揺れて巨体が闇から躍り出る。
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「なっ!?」
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「なんだとっ!?」
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暗闇の中で感じる気配は……一つ、二つ、三つ……四つ!?
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四匹なんて……さすがに一人じゃ相手しきれない。
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でも――!
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「奈岐、私が時間を稼ぐから!」
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「鼎っ!(BROKEN:8_20)
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「でもっ……!」
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今の奈岐と私では、身体能力に差がありすぎる。
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それに穢れだって武装している私より、
武器を持たない奈岐を狙ってくるはず。
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だったら、せめて時間を稼いでる間に奈岐が星霊石の力を……。
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そう考えていた時、奈岐の小さな手が私の腕を掴む。
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「鼎、私を――鬼子を信じろ」
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奈岐が神狼ではなく、忌み嫌っている鬼子の名を口にする。
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「奈岐……?」
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「穢れ共――ゲームの始まりだ」
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険しい視線で闇を睨んだ後、奈岐は口早に言葉を紡いでいく。
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「鼎、合図と共に左手の木に炎を放て、二匹の足止めになる」
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「左手の……えっと……?」
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途端に早口になったので、上手く聞き取れない。
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「そこの表面が枯れている木だ。中身も腐って抜け落ちている。
(BROKEN:8_20)
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「わ、分かった……!」
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今度は聞き逃さないようにしつつ、右手に炎を集束させ、
指示された木へ解き放つ。
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火球を受けた木が燃えさかり、めきめきと音を立てて、
穢れ達の進路を塞いでいく。
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「よし、後退する――走れ!」
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「私、身体能力は上がってるから!(BROKEN:8_20)
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駆けだしていた奈岐をそのまま抱きかかえて、地面を蹴った。
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すぐに背後から穢れの咆吼が聞こえ、迫ってくる気配を感じる。
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「鼎、手前の枯れ草!(BROKEN:8_20)
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「了解っ!(BROKEN:8_20)
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見た目以上に軽い奈岐の身体を右手で抱いたまま、
左手に炎を集束させていく。
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「燃えろッ!」
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茂みを飛び越えると、すぐ背後に向けて火球を放つ。
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「ガア(BROKEN:8_20)
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茂みが炎を上げたところに穢れが踏入り、その身を焦がす。
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「このまま真っ直ぐ!(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「任せて!」
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奈岐を右手で抱いたまま、腰に下げた剣を握り締める。
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「さっきの二倍の炎――燃えて!」
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剣自体に炎を宿すと、奈岐の指示通りに左右の木を切り裂く。
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すぐに木々が揺らめき、炎に焼かれて倒れると道を閉ざす。
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奈岐の策通り、穢れ達の動きがまた止まったのが分かる。
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その隙に私は跳躍して、さらに加速した。
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このまま逃げ切れる――!
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「って行き止まり――!?」
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森を抜けた先には岩場が広がり、そしてそこは断崖絶壁。
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「動じるな。ここへ来ることは予定通りだ」
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「でも、ここからどうするの……?」
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「この私が穢れからただ逃げると思ったか?(BROKEN:8_20)
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私の腕の中で奈岐が得意げに唇の端を釣り上げる。
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「うん、分かった。信じる」
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「鼎は岩場を進みながら追っ手を妨害、その隙に私が力を使う」
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頷いてから、私は奈岐を抱えたまま、岩場を駆け出す。
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「穢れは?」
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目視出来ないぐらいには距離を離している。
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でも、この肌で感じる気配……一匹、二匹……!
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「よし、妨害を頼む。私はここから上へ向かう。深追いはするな。
(BROKEN:8_20)
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私の首から腕を離し、奈岐が地面に降り立つや否や、
すぐに岩場を駆けだしていく。
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「分かった!」
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奈岐の後に続き、岩場へ飛んだ時、
背後から穢れの咆吼が響き渡る。
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「来た……!」
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岩場を進みながら、背後に現れる穢れ達を目視した。
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やっぱり二匹――。
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このまま距離を取りながら時間を稼ぐ。
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岩に飛び移りながら、剣を両手で構え、
穢れに放つべき炎をイメージしていく。
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「来るなら来いっ……!」
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炎を纏わせた剣を振るい、背後に迫った穢れを迎え撃つ。
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seisai_no_resonance/sce05_04_05_2.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)