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seisai_no_resonance:sce05_04_04_0
「鼎、起きろ――鼎」
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私を呼ぶ声と共に頬が突かれた。
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「うぅん、由布……ご飯なら後で食べるから……もう少し……」
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「むぅ……私は風間じゃないぞ。鼎、もう夜だ」
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ゆさゆさと今度は肩を揺すられて、徐々に意識が戻ってくる。
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「……んんっ……奈岐……?(BROKEN:8_20)
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「寮の入口で待ってても、いつまでも鼎が出てこないから、
(BROKEN:8_20)
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奈岐がどこか心配そうに尋ねていた。
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問題……?(BROKEN:8_20)
身体を起こす。
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「ううん、平気だよ。御花会の練習でちょっと疲れてただけ」
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「無理、していないか?」
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「んー……」
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四肢を伸ばし、手でグーとパーを繰り返す。
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身体のどこかが痛んだり、疲労が蓄積して動けないということは
無さそう。
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「大丈夫、少し寝たから元気になったよ」
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「そうか、良かった。もう門限の時間を過ぎているから、
(BROKEN:8_20)
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「うん、それはいいけど……由布は?」
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部屋は暗いまま、ルームメイトの姿が見当たらない。
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「食後、遠山の部屋に行っている。しばらく戻らないだろう」
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「そっか、分かった――じゃあ、行こう」
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私の言葉を聞いた奈岐が僅かに口元を緩める。
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何となく分かってきたけど……これは奈岐がとても喜んでいる、と解釈しても良さそう。
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感情をあまり表情に出さない奈岐だからこそ、ほんの些細な変化
だけでも、とても大きな感情の動きなのかもしれない。
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「っ……か、鼎……行くなら、すぐに行くぞ!」
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いつものマントを翻して、奈岐が少し慌てて部屋の入口へ向かう。
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これは照れている時――と、やっぱり少し分かってきた気がする。
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笑みが零れるのを堪えつつ、ベッドから抜け出した時、
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「うっ……」
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ズンッと全身に重しが付けられたような感覚が襲い来る。
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ゆ、油断した……いざ立ってみると、まだ疲れが抜けきってない。
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「鼎……?(BROKEN:8_20)
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「あ、ううん、なんでもない!」
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今は待ちに待った時間でもあるんだし、考えないようにしよう。
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動いていれば、なんとかなる――そう思って奈岐のもとに歩む。
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昨晩使った空き部屋の窓から外へ。
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消灯時間はまだなのか、寮からは明かりが漏れている。
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ただ門限はもうとっくに過ぎてそう。
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「ねえ、奈岐、昨日と同じ場所まで行くの?」
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「いや、昨日の場所は避けたい。例の水蒸気を目撃した学生が
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「あー……昨日の……」
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昼間、八弥子さんもその話をしていたことを思い出す。
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「方角こそ同じだが距離を取るつもりだ――行こう」
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奈岐が迷うことなく森の中へ入っていく。
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「今から昨日と同じ距離を歩くのか……大丈夫かな」
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そこは体力と相談しつつ進んでいこう。
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奈岐に遅れないように私も森の中へ入る。
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やっぱり、夜の森はどこまでも暗い。
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月明かりだけを頼りにして、私と奈岐は学園よりも北を目指す。
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草木の上を歩き、時には茂みを掻き分けながら、
森の中を歩き続ける。
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「ねえ、奈岐、一つ聞いてもいい?」
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「何だ?」
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隣に並んで歩きながらの会話。
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「どうして学園の北なの?(BROKEN:8_20)
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「祭りで使う祠がある。あとは何を祀っているのか分からない
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奈岐がポケットからいつものマル秘ノートを差し出してくる。
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「読んでもいいの?」
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「鼎は私と同じく穢れの正体を追い求める者――同士だからな」
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「ありがと。でも、同士より友達の方が嬉しいかな」
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「……と、友達だからな」
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わざわざ言い直してくれた。
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思わず吹き出しそうになるのを堪えつつ、
奈岐からノートを受け取る。
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「地図……織戸伏島の?」
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ノートを開くと、島の地図が大きく描かれており、
赤い点がいくつも散らばっている。
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ただ赤い点のほとんどが学園より北……私達が向かう方向にある。
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「その点が穢れの出現ポイントだ。ちなみにそれは五月、
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言われるがまま、ページをめくると、同じように織戸伏島の地図が描かれており、赤い点が三つ――これも全部学園の北だ。
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「穢れは……北からやってきているってこと?」
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「間違いないだろうな。時折、南の方でも発見したが……
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「北に何かあるのかな……さっき言ってた祠とか神社?」
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「神社はもう管理している人間がおらずボロボロだが……
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私がノートを返すと、奈岐はポケットに押し込む。
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「ただ昼夜問わず、松籟会の手下が見張りに付いている。
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「お祭りで使う大切な場所だから、かな?」
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「私もそう思っている。それに穢れが祠から発生していたら、
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じゃあ、一体どこから穢れは現れているんだろう?
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それも合わせて、ちゃんと穢れのことを調べないといけない。
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と、決意を新たにしていた時、
ぐぅ……とお腹がわびしい音を立てた。
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「あ……そういえば、夕飯食べてない」
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「寮を急ぎで出てしまったからな……」
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奈岐がポケットをあさり、スティック状の栄養食を取り出す。
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「腹はふくれないと思うけど、足しにはなるか?」
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「もらえると助かるー……もう、お腹ぺこぺこで」
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「すまない、食事の確認をしておくべきだったな」
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奈岐から栄養食を受け取って首を横へ振る。
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「ううん、私も寝起きで慌ててたし仕方ないよ」
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「……そうか」
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「それじゃ、いただきます」
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奈岐にもらった栄養食を囓りながら、再び歩き出す。
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「鼎はよく食べるし……足らないだろう?」
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「お腹が空っぽと、少しでも入ってるとじゃ大違いだよ」
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奈岐の言う通り、物足りないけど、空腹で動けなくなる方が
問題だらけに思える。
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「それなら……良かった」
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そう言った後、隣を歩いていた奈岐が空を見上げた。
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「今日は、この辺りでいいか――」
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奈岐がノートを取り出し、昨日のようにメモを取り出す。
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「……六月四日、快晴。月は満月か。時間は午後九時過ぎ。
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「今日、御花会で幸魂の練習をしてきたんだ。
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「またしても蒸気をあげてしまえば、不審に思った学園が動くかも
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メモを取り終えた奈岐がノートをしまい、胸元の星霊石に触れる。
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「鼎、問題がなければ始めよう。今日は鼎から力を解放してみて
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「うん、分かった」
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腰に下げた勾玉を手に取り、奈岐に一度頷く。
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二の舞だけは避けないと……
そう思いながら、勾玉を強く握り締めた。
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seisai_no_resonance/sce05_04_04_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)