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seisai_no_resonance:sce05_03_12_0
プツンッと照明が落ちる音が聞こえた気がした。
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眠気から船を漕いでいた私は慌てて頭を起こす。
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「…………」
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奈岐の部屋は相変わらず閉じられたまま、
夕食の入った容器にも手が付けられていない。
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私はドアに手を伸ばし、小さくノックをする。
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「奈岐、起きてる?(BROKEN:8_20)
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そろそろ先生の見回りが来るかも、と暗に告げておく。
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しかし、奈岐からの反応が無く……私は肩を落とす。
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「ねえ、どうしたら返事してくれる?(BROKEN:8_20)
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「……奈岐と友達じゃなかったら、ここまでしない。
(BROKEN:8_20)
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「そういうのって大事なことだと思う」
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ドアの向こうにいると思う彼女に語りかける。
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相変わらず反応は無いけれど、その代わりとばかりに――。
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「うっ……」
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廊下の端を懐中電灯の光が照らす。
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先生が見回りに来たんだ。
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葉子先生、見回りの時間早いよ……
もしかして三階から回ってるのかな?
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「奈岐、先生が来ちゃう。ちょっとまずいかも」
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座り込みをしていながら、助けを求めるなんて、
情けない真似かもしれない。
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でも思い返してみれば、私は謹慎中の身で……
これ以上の問題は笑って済む気がしない。
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「奈岐も謹慎中?(BROKEN:8_20)
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ドアに語りかけながら、廊下を照らし出していく明かりを見た。
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懐中電灯の光が曲がり角に近づくにつれて、大きくなっていく。
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ゆらゆらと揺れる灯りは獲物を探しているかのようにも思えて、
顔が僅かに引きつってしまう。
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「奈岐、そこまで来てる。葉子先生って怒ったら怖い?
(BROKEN:8_20)
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どちらが答えでも困る質問ではあるけど、これが最後になりそう。
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懐中電灯の灯りと奈岐の部屋を見比べる。
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間も無く灯りが廊下を曲がり、直線に入ろうとしていた。
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限界……かも。
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そう思った時、カチャカチャッと鍵の外される音が聞こえた。
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「奈岐……?」
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音を立てずにドアが開き、私を中へ誘ってくれる。
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この(BROKEN:8_20)
素早く室内へ入り込んでいった。
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部屋の中は真っ暗だった。
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目が慣れるまでの数秒間、何も見えないほどで、
ドアを背にしたまま、しばらく佇む。
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「奈岐?(BROKEN:8_20)
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微かに人の気配はあるものの、奈岐の姿が見えない。
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部屋の中へ踏み出そうとした時、突然服の裾を引っ張られる。
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「わっ!?」
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慌てて振り返ると、奈岐がドアの隣で腕を組んでいた。
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それもそっか、ドアを開けてすぐに入ったわけだし……。
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「奈岐、大丈夫?(BROKEN:8_20)
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手に持っていた容器を差し出すと、
奈岐が素直に受け取ってくれる。
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それが少し意外で目を瞬かせていると、奈岐は無言のまま、
部屋の奥へ歩いて行く。
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「奈岐?」
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名前を呼んだ時、奈岐は机の上に容器を置き、私へ振り返る。
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閉じこもっていたとは思えないほど、
冷静な双眸で私を見つめていた。
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「……先に私から話がある」
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「話……?」
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ただ声色には疲れが滲み出ていて不安感をかき立てられる。
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「その勾玉の力を使うことを止めた方がいい」
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「勾玉の力って、どうして急に……?」
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「松籟会はその力を禍々しいと言っていたが、あながち間違いでは
(BROKEN:8_20)
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禍々しい――確かに何度か耳にした記憶があった。
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「……その勾玉の力、島に封じた災いに反応している。
(BROKEN:8_20)
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「それって……祠に行ったの?」
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昼間、学園長と末来さんが祠から出てきたのを覚えている。
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確か、あの時――。
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	「あの様子では……それほど長く持たないでしょう」
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	「そうだね。キミの読み通り、反応していると考えていい」
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	「しかし、まだ巫女の用意は調っていません。
	(BROKEN:8_20)
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	「その他の手段が通じる状況だと思う?」
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	「…………」
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二人は奈岐と同じように反応していると言っていた。
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お母さんの勾玉が島の災いと関係している……?
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「祠には行った。勾玉がどういう仕組みで反応しているか……
(BROKEN:8_20)
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「どうしてそんなことを急に……?」
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「奴らも急でな、向こう側から私にコンタクトを取ってきた」
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「私と同じモノ――理事長が直々に解説してくれた。
(BROKEN:8_20)
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理事長……奈岐と同じ鬼子で、人を食ったような印象がある人。
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「何を見たの……?」
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「それは言えないことになっている。口にしてならないし、
(BROKEN:8_20)
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「…………」
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「関連性は調べてみる。だから、それまで待ってほしい」
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とても今まで立てこもっていたとは思えないほど、
強い意志が混ざった言葉だ。
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でも、私は素直に首を縦には振れなかった。
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「私達が調べていた穢れのことも関係しているの?」
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「それは確実だ。しばらくは接触しない方がいい」
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事態は知らぬ間に深刻なものへ――。
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学園長と末来さんの話、奈岐が理事長と話した結果、
雲行きが怪しくなっているのは分かる。
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「勾玉のこと、分かった。善処する。でも、いくつか条件」
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「……条件?」
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「八弥子さんと遠山先輩にちゃんと謝ること――
(BROKEN:8_20)
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「深刻そうな問題が見つかっても、まずはそこからスタートだよ」
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奈岐は戸惑うように視線をそらす。
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「……だけど、それは……」
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「だけど、じゃないよ。奈岐が鬼子だとしても、
(BROKEN:8_20)
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「悪いことをしたら謝らないと。
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「…………」
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「そうしないと……鼎は奈岐のことが嫌いになる?」
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怯えるような奈岐の瞳が私を捉える。
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それに対し、私は首を横へ振るう。
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「嫌いにはならないよ。でも、悪いことをしたら、
(BROKEN:8_20)
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「私も時々やらかしちゃうから……
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私はそう言ってから奈岐に微笑みかける。
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奈岐は迷っているのか、私から再び目をそらしてしまう。
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「奈岐は……そういうの慣れていないから」
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「慣れていけばいいよ。ほら、今が切っ掛けになる」
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私は奈岐に歩み寄り、その手を取った。
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微かに震える手を握りながら、もう一度微笑みかける。
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「まず私と仲直り、それから八弥子さんのところに行こ。
(BROKEN:8_20)
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「でも……奈岐は禰津のことを酷く言ってしまった」
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「だから合わせる顔が無い……じゃなくて、
(BROKEN:8_20)
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「…………」
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「奈岐、私は友達でいるから。嫌いになったりしない。
(BROKEN:8_20)
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「あれは……痛かった。でも当然だと思う」
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奈岐は頭をあげると、私の肩に目元を押し当てた。
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「鼎、ごめんなさい……見鬼のこと言われて……取り乱した」
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「うん、私もごめん。すごく(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「そんなこと……」
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「でも、事実だから。素直に受け取って」
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「…………」
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私は奈岐の手を離し、彼女の両肩をぽんっと(BROKEN:8_20)
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「よし、仲直りだね。奈岐、いつものマントはどこ?
(BROKEN:8_20)
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「ホントに……今から?」
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「こういうのは早い方がいいんだよ。気持ち的にも、ね」
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私の言葉に迷いながらも、奈岐はベッドに脱ぎ捨てられていた
マントを見やる。
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「あとは奈岐も私も謹慎中だから先生に見つからないように」
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「……鼎には敵わないな。頭の中まで真っ直ぐだ」
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呆れたように言いながらも、
奈岐は微笑んでマントに手を伸ばす。
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「あはは……考えてることと言ってること、同じだしね。
(BROKEN:8_20)
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「フッ、それでいい。その方がいい」
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マントを羽織った奈岐は行こうと視線を入口へ向ける。
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私は奈岐に頷くと、先ほどまで頑なに侵入を拒み続けていたドアに手をかけた。
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seisai_no_resonance/sce05_03_12_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)