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seisai_no_resonance:sce05_03_11_0
夕食が終わると、騒がしかった食堂も静けさを取り戻していく。
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私は借り物の容器にご飯とおかずを詰め終えると、
八弥子さんが待つテーブルへ向かった。
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「奈岐の分のご飯もらってきました」
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「ありがとー。ナギっち、ご飯につられて出てこないかなあ」
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「あはは。でも、奈岐って食が細いですからね」
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「まだガジの方が食べるもんねー」
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ニャーと頭の上でガジが鳴いている。
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ホントにガジの方が食べてそうで吹き出しそうになった。
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「もう一度、奈岐のところに行ってみましょうか」
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「そうだねー。最悪、あのドア外しちゃう?」
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「外す?(BROKEN:8_20)
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「ドーン、って!」
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八弥子さんが両手を突き出す仕草の後、カラッと笑う。
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「八弥子さん、それ、先生に怒られますよ?」
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「うっ……ヨーコ先生が出てくるのはゴメン」
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すぐに手を引っ込めてしまう八弥子さんに私も笑みを零す。
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「ふふっ、八弥子さんって葉子先生が苦手なんですか?」
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「に、苦手……じゃないよ……?」
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と言うものの八弥子さんの声は上擦っていた。
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「それより、カナカナ、早くナギっちのとこに行こっ!」
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「わっ!?」
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八弥子さんが私の手を取ると、食堂の出口へ向かって、
早足で歩き出す。
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もしかしてペット禁止の寮内でガジを飼っている以上、
葉子先生には頭が上がらないのかも?
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向かうところ敵無しのイメージがある八弥子さんだけあって、
意外な一面かもしれない。
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そんなことを思っている間にも、
私は八弥子さんに手を引かれていく。
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コンコンッ――これで三度目のノック。
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相変わらず奈岐の反応は無かった。
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「奈岐?(BROKEN:8_20)
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呼びかけても反応無し。
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また逃げ出したってことはないだろうけど、
ここまで黙りを決め込まれると対策に困ってしまう。
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「奈岐、夜ご飯、ここに置いておくからね?」
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ドアの側に食堂から持ってきた容器を置いておく。
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私は踵を返し、八弥子さんに向かうと首を横に振るった。
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「カナカナ、怒られないぐらいに開けちゃう?」
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「奈岐のへんてこな鍵は壊してもいいかもしれませんけど、
(BROKEN:8_20)
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「鍵だけ壊すのは、ちょっと器用だなぁ……」
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それは困ったと八弥子さんが頬を掻く。
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あと無理矢理開けたりしたら、また逃げ出しそうな気もする。
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それも今度は戻ってこないオマケ付きで。
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「はぁ……また明日にしましょうか」
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「カナカナのため息、重いねー。幸せが逃げちゃうよ?」
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「あはは、奈岐には逃げられてますね」
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立ち去る前にもう一度だけドアへ振り返る。
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僅かに気配を感じるのは、私の問いかけへの返答だろうか?
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いるかいないか――言葉にぐらいして欲しいところだけど。
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「奈岐、おやすみ。また明日来るからね」
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「ナギっち、おやすみー」
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八弥子さんと顔を見合わせ、少しだけ待ってみるが、
やはり反応は無かった。
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仕方なく、自室へ続く廊下を歩き出す。
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「何か方(BROKEN:8_20)
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「カナカナは課題もあるし、夜更かししすぎたらダメだよ?」
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山のような課題のことを思い出すだけで、またため息が出そう。
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「そんなものもありましたね……」
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廊下の分岐路に差し掛かり、
八弥子さんが部屋の前で足を止める。
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「じゃ、カナカナもおやすみー」
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「はい、八弥子さん、おやすみなさい」
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ドアを開け、八弥子さんが部屋の中へ入っていく。
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その姿を目で追いかけた後、奈岐の部屋がある方向を見た。
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奈岐が夕食を取りに出てきてくれないかと期待したけれど、
人気の無い廊下が寮の端まで続いているだけ。
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「…………」
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朝行ってみた時、ご飯がそのままだったらどうしよう……?
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何も食べずに閉じこもり続けていたら、心だけじゃなくて、
身体まで弱ってしまいそうだ。
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気持ちがもやもやとする。
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このまま部屋には戻れない気分だとすれば……
やれることは一つぐらいしかない。
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私は大股で来た道を引き返し始める。
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そして、再び奈岐の部屋の前に立つと、強めにノックを繰り返す。
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「奈岐、今、私一人だから。ここを開けて」
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反応が無いのは相変わらず。
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「開けてくれないなら、先生に怒られるまで、ここにいるからね」
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「ちゃんと奈岐と話をしないと、安心して寝られない」
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そう告げた後、私はドアの隣に座り込む。
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ドアの向こうに感じる気配は動かないまま。
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根比べになるのか、それとも迷ってくれているのか、
それは分からないけれど……有言実行するつもり。
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私は壁に背中をつけ、奈岐の動きがある時まで待ち続ける。
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見回りで先生が来るか、奈岐が開けてくれるか……
出来れば前者であって欲しくないなぁ……。
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そんなことを願いつつ、静かな耐久戦が幕を開けた。
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seisai_no_resonance/sce05_03_11_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)