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seisai_no_resonance:sce05_03_06_0
昼の森は夜と比べものにならないほど明るい。
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不気味さはいずこへやら、足取りも軽快になってくれる。
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そして、森へ入って数十分後、私はその場で立ち止まった。
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北へ向かって進んでいた時、不自然に折れ曲がった草木を
いくつか発見したのだ。
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獣道とは少し違う。
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目を凝らし、地面に足跡がいくつか残っているのを見つける。
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「……これ、人の歩いた跡だ」
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すぐに足跡を追って進んでいく。
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こんな森の奥にも関わらず、人が行き来するように草木が折られ、僅かな道が開けていた。
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奈岐がやったとは思えないけれど、この先に探している祠か神社のどちらかがある気がする。
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意識して私は息を潜めながら、さらに森を進んでいく。
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そして、森の奥深く――
岩山の麓で大きな口を開けている洞窟が目に映った。
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「こんなところに洞窟……?」
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森から続いている足跡は、洞窟の中へ入っていっていた。
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洞窟前に残されている足跡は二つ。
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どちらもそれほど大きくないことからして、女性だと思う。
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でも、二人組み?
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奈岐がいるにしても、誰か一緒とは少し考えにくい。
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「…………」
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だとしても、ここは数少ない手がかりだ。
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虎穴に入らずんば、なんとやら――進んでみよう。
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昼間でも、洞窟内には陽の明かりが届いていなかった。
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時間帯も関係あるんだろうけど、わざと明かりが差し込まない
角度で、この空洞が作られている。
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それに、人を拒むような冷たさは、穢れの気配に似た感覚だ。
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嫌な予感を感じるけれど、ここに足跡が続いていたのは事実だし、立ち止まるつもりも無かった。
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「あの明かり……」
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洞窟を少し進むと、奥から僅かな明かりが見える。
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かがり火や照明ではなく、岩自体が不思議と発光していた。
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「不思議……こんな鉱石があるんだ」
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自然と発光する石は身近な何かを連想されてくれるけど、
その正体までは思い出せない。
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鉱石に触れてみようと奥へ歩み出した時――。
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カツンッ――と入口の方から靴音が響いた。
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誰か来る……!
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咄嗟に身を隠す場所を探す。
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幸いにも近くに大きな岩があり、私はその陰に潜む。
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足音は一人ではなく、複数だということがすぐに分かった。
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きっと洞窟へ足跡を残していた二人だろう。
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靴底が洞窟内に響き、私へ近づいてきた。
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「…………!」
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あっと声をあげそうになった口を手で押さえる。
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見間違いではなく、末来さんと学園長の二人だった。
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どうして、こんなところに……?
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「あの様子では……それほど長く持たないでしょう」
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「そうだね。キミの読み通り、反応していると考えていい」
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足音とは別に二人の話し声が聞こえてくる。
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どこか不安が混ざった学園長の声に対して、
末来さんはいつものように淡々としていた。
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「しかし、まだ巫女の用意は調っていません。
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「その他の手段が通じる状況だと思う?」
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「…………」
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「ボクに一案ある。それを伝えたいところだったけど」
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末来さんが言葉を句切った後――。
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「盗み聞きは感心できないよ、鼎?」
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しっかり隠れていたにも関わらず、言い当てられてしまう。
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「……あはは」
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頬を掻いてから、岩陰から立ち上がる。
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「高遠さん、こんなところで何を?(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「待って。ボクから話すよ」
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耳が痛くなる学園長の言葉を遮って、末来さんが歩み寄ってきた。
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「鼎、ここはどんな場所だと思う?」
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「どんな……ですか?」
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「思ったことを言ってみるといい」
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抽象的な質問に少し困りつつも、考えながら口を開く。
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「ええと……普通の洞窟じゃないと思います。
(BROKEN:8_20)
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「どんな風に?」
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「冷たくて……まるで穢れがいるような……そんな感覚です」
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私の答えを聞いた末来さんが息を漏らす。
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「……危ない場所という認識はあったんだね。
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「鼎の感覚は正しい。だから、ダメだよ」
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末来さんの視線はいつもと同じく優しいものだったけど、
怒られていることぐらいは分かる。
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こうして(BROKEN:8_20)
姿もあいまってか、その面影が重なってしまいそうだった。
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「……ごめんなさい」
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「うん。次は気を付けるんだよ」
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そして、末来さんの手が私の頭を撫でてくれた。
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ちゃんと心から謝れば、すぐに頭を撫でて許してくれる。
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そんなところまでお母さんと同じで……胸が締め付けられた。
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「それでどうしてここに来たのかな?」
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「奈岐を捜してて……」
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「奈岐を?(BROKEN:8_20)
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「昨日の夜に飛び出したまま、戻ってないんです」
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「はぁ……向山さんも謹慎処分のはずなのですが……」
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学園長の重いため息が洞窟内に響いた。
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「分かった。奈岐はボクが連れて帰る。
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さらりと末来さんがそんなことを言うので耳を疑ってしまう。
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「連れて帰るって……奈岐の居場所が分かるんですか?」
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「うん、奈岐が隠れていそうな場所は一つだからね」
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「一つ……それって、どこですか?」
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「学園より北側に位置していて、身を隠せそうな場所――
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ここ以外――この洞窟が例の祠だとすると。
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「神社ですか?」
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「そうだよ。ボクはそこへ寄っていく。奈岐とも少し話がしたい。
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末来さんが学園長に振り返り、そう問いかけていた。
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「……分かりました。片倉さんは後で私の部屋へ来て下さい。
(BROKEN:8_20)
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「そのつもりだよ。それじゃあ、先に行くから」
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最後に末来さんが私の髪を手で優しくとかしてくれる。
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「ちゃんと部屋で待ってるんだよ、鼎」
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「あ、はい……」
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末来さんが口元に笑みを残し、洞窟を出口の方へ歩いて行く。
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その後ろ姿を目で追いかけていると、
学園長が私の隣に立った。
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「さて、高遠さん?(BROKEN:8_20)
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「わ、分かりましたっ」
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末来さんと違い、学園長はいつも通りの凛とした声で私を促す。
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謹慎中にも関わらず、こんな場所に立ち入ったことを、
少なからず怒っている……そんな雰囲気にたじろぎそうになる。
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「えっと、ここ、祠って呼ばれている場所なんですよね?」
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「……そうです。ここは織戸伏島で禁足地とされる場所、
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何か一つ質問すれば、一つお小言がついてくるらしい。
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そんなことを思いながら、洞窟の出口を目指して歩き出す。
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「お二人は……ここに何か用があったんですか?」
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「用があったとしても、巫女候補のあなたにお話することは
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「えっと、出口の明かりが見えましたよっ!(BROKEN:8_20)
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やっぱりお小言が続いてしまうので、
出口の明かりへ逃げるように向かっていく。
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「まったく……」
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何度目かになる学園長のため息が背後で響いていた。
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seisai_no_resonance/sce05_03_06_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)