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seisai_no_resonance:sce05_03_03_0
朝が訪れると、私は気怠い身体を引きずるようにして、
寮にまで戻ってくる。
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一晩中、森を探しても奈岐は見つからず、
疲労と眠気が収穫とはやるせない。
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「カナカナー、って……その様子じゃダメだったみたいだね」
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寮の玄関に座り込んでいた八弥子さんが私の様子に苦笑する。
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朝が来たからか、八弥子さんはパジャマから制服に着替え、
いつも通り頭をガジに囓られていた。
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「寮には戻ってきてませんか」
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「戻ってないね。ナギっちが本気で隠れたらさ、
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「でも、こういうのって時間が経つほど、
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隠れて塞ぎ込んでいる時間の方が辛く感じてしまう。
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そして、その時間が長ければ長いほど、合わせる顔が
無くなっていくのは自然なことだと思う。
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「それはカナカナが強いからだよ。
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「……八弥子さんはあんなこと言われても、
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「カナカナはナギっちの友達じゃないの?」
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「友達ですよ。だから、ちょっと怒ってるんです」
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そう言いながら八弥子さんの側まで歩いて行くと、
不意に頭を撫でられてしまう。
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「どうどう、カナカナ。カナカナが怒ってると、
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「そうかもですけど……」
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こうして撫でながらなだめられていると、
自分が子供みたいに思えてくる。
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というか、実際に子供みたいな怒り方をしてるかもしれない。
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「……八弥子さんは怒らないんですか?」
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「んー?(BROKEN:8_20)
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私の頭を撫でたまま、顔を傾けられてしまう。
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「だって、酷いこと言われたじゃないですか。
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「カナカナ、なんだかヤヤの分まで怒ってない?」
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「それは……そう、かもしれないです」
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八弥子さんが笑顔でいる分だけ厳しくしないと、
自分にそう言い聞かせている気もした。
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それに気付いたからといって、
すぐに怒りが静まってくれるわけもない。
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「でも、ちゃんと遠山先輩と八弥子さんに謝るまで、
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「あはは、カナカナ、思ってたより頑固だねえ……」
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八弥子さんが私の頭から手を離した時、
玄関の扉がゆっくりと開かれる。
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「私に謝るまで?(BROKEN:8_20)
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「わっ……」
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そんな言葉と共に姿を見せた遠山先輩に驚く。
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早い時間から登校するとは聞いていたけれど、
タイミングが悪いような、いいような……。
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「おはようございます、禰津さん、高遠さん」
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「おっはよー」
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「おはようございます……」
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遠山先輩は挨拶の後、扉を閉めると私達へ振り返る。
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「それで、いったい何の話をされていたのかしら?」
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当然ながら、そう訊ねる遠山先輩の視線は険しい。
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それだけでも、奈岐が散々やり込めたのだろうと伝わってくる。
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「……遠山先輩、昨日はすみませんでした。
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「…………」
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「奈岐の話の後だと、言い訳にしか聞こえないかもしれませんが、
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遠山先輩は胸元で腕を組むと、改まった口調で私に訊く。
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「話しておきたいこと、ですか?」
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「はい。一昨日の火事と落石の件、ご存じだと思いますが……
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「ただ四匹も穢れが現れて、ああしなければ、私も奈岐も
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私の話に耳を傾けていた遠山先輩が小さく息を漏らす。
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「……どうして夜中にあんな場所で穢れと?」
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「それは奈岐と一緒に……」
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穢れを調べるため、と先輩に告げていいのか迷ってしまう。
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御花会や寮の規律どころか、島の問題に関わっている気もする。
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先輩の家は松籟会に繋がりがあるみたいだし……。
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「それより、カナカナ、本題に移った方がいいんじゃない?」
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「禰津さん……?」
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「ヤヤはナギっちが言ったこと、もう忘れちゃったけどね」
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言い淀んでいた時、八弥子さんが話題を逸らしてくれる。
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そんな八弥子さんに感謝しつつ、私は再び口を開く。
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「昨日、奈岐が遠山先輩に酷いことを言ったと思います」
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「本当は奈岐を引っ張ってこないといけなかったんですけど、
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「遠山先輩、すみませんでした」
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言葉に合わせ、下げられるだけ頭を下げる。
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「高遠さん……」
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「奈岐が言ったこと、取り下げて下さい。
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「それに……奈岐が知ってることを
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「…………」
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「さっきも言ったけど、ヤヤはもう忘れちゃったしね」
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どこか茶化すような八弥子さんの言葉に、
遠山先輩が困ったように息を漏らした。
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「……高遠さん、許可無く夜間に外出したのは問題です」
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「ですが、あの事件が穢れから身を守るためということでしたら、
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「ただし、謹慎処分はまぬがれないと思って下さい」
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「それは覚悟しています」
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「高遠さん、頭を上げて下さい」
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そう言われてから頭を上げると、
遠山先輩が微笑んでくれていた。
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「私と由布のことは、高遠さんも忘れて頂けると助かりますわ」
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「えーっと……はい、忘れます」
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予想外の微笑に困惑しつつも、しっかりと答えておく。
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「ふふっ、応援してくれてもいいのですけれど、
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「それは……そうですね」
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由布もまんざらでは無いみたいですし――
と言いかけた言葉を呑んでおく。
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「この後ですが、高遠さんは部屋へ戻っておいて下さい。
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「はい、分かりました」
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「それでは」
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遠山先輩は私達の前から立ち去り、学園の校舎を目指していく。
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その背中を目で追いかけながら、長い息を吐き出した。
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「はぁ……先輩、怒ってなかったですよね?」
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「カスミはいつも真面目だからねー。
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「でも、カナカナの言葉には、ちょっと安心してたみたい」
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「あはは、それは良かったです」
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胸を撫で下ろしたところで、ようやく気が抜けていく。
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「さてとー、カナカナはちょっと休憩だね。
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この辺りだよ、と八弥子さんが自分の目元を指さした。
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「でも、奈岐がまだ……」
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「でも、じゃないよ?(BROKEN:8_20)
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「処分の話が来るまで、少しでも休憩する方がいいよー」
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また熱くなりかけていたところを、
八弥子さんが引き戻してくれる。
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「私……気を遣わせちゃってますね、すみません」
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「気にしない気にしない。ほら、寮に戻って朝ご飯一緒に食べよ。
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「あはは、そうですね、私もお腹ぺこぺこです」
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ふふっと笑いかけてくれた八弥子さんに頷いてから、
私は玄関の扉に手をかけた。
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奈岐のことを後回しにするわけじゃないけれど、
少し休んだ方がいいのは確かな気がする。
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すぐに熱くなりすぎ……と自分で反省しておく。
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seisai_no_resonance/sce05_03_03_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)