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seisai_no_resonance:sce05_03_02_0
廊下に出てみるが、もう奈岐の姿はどこにも無かった。
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手すりから身を乗り出すようにして、ロビーを見下ろす。
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入口の扉は閉じられたままで、ロビーには人気が無い。
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外には出ていない?
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それとも、いつもの空き部屋から外に出た可能性もある。
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「カナカナ、寮の外はヤヤが捜してみるよ」
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奈岐の部屋から出てきた八弥子さんがそう言ってくれた。
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「それ、逆でお願いします。八弥子さんパジャマなんで」
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自分は私服です、とパーカーを両手で摘んで広げてみせる。
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「でも、外は危ないよ?」
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「危ないのは慣れっこですよ」
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八弥子さんに笑って見せてから周囲をぐるりと見渡す。
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「連絡手段が無いんで、朝には八弥子さんの部屋に行きます。
(BROKEN:8_20)
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どこを見ても、この階には人気を感じない。
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やっぱり奈岐は外に出た?(BROKEN:8_20)
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「カナカナ、ナギっちがヤヤに言ってたことだけどさ……」
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「……?」
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「カナカナは気になる?」
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何人殺した――そんな質問が投げかけられる八弥子さんの家。
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気にならないといえば嘘になるけど、そう言ってしまえば、
奈岐に思考を誘導されたみたいに思える。
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「その話をされた時、八弥子さんは辛そうな顔をしていました」
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「だから、無理に話してもらうようなことじゃないと思います」
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「カナカナ……うん、そっか……」
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「それじゃあ、行ってきます。寮内はお願いします」
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「――分かった、まっかせて!」
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八弥子さんに小さく手を振ってから、私は廊下を走っていく。
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今の奈岐はいつものコートを羽織っていない。
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外見もともなって、夜の闇に紛れることは出来ないはず。
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だから、一度でも見つけてしまえば――そんなことを考えながら、私は空き部屋へと急いだ。
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少し冷える夜風が髪をかき上げていく。
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寮の外に出たけど、あの目立つ姿はどこにも見当たらない。
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こうなると闇雲に捜すか、もう少し頭を使ってみるか……。
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「…………」
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ふと考えが閃き、空き部屋の窓へ駆け寄っていく。
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窓の高さから考えて、もし奈岐が外に出たなら、
ここに必ず足跡が残るはず。
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目を凝らす――二つ並んだ足跡、大きい方は私だろう。
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そして、もう一つ子供かと思えるほど小さい足跡が残っていた。
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「奈岐、外に出たんだ」
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その足跡は森の方へと続いている。
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夜の森は暗く、唯一の光源である月明かりを遮るように
木々が重なりあう。
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どこに穢れが潜んでいるかも分からない場所に、
泣きながら飛び出すなんて……。
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一度戻って、八弥子さんに声をかけるべきか悩む。
でも、奈岐が寮に戻って来る可能性もゼロじゃない。
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つくづく連絡手段が無いことが惜しまれる。
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「とにかく、今は急ごう」
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何かがあってからじゃ遅い。
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勾玉を片手に握ると、私は奈岐の足跡を追って、森に向かった。
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茂みが生い茂った森の中で、奈岐の小さい足跡を探し出すのは
困難を極めていた。
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夜の暗さもあってか、立ったまま目を凝らしても、
草が生えている、いない程度しか見分けが付かない。
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「……奈岐、どこまで行ったんだろう」
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足跡を見失った地面から目を離し、天を仰ぐ。
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月の傾きからして、時間が深夜帯に差し掛かっていることを
教えてくれる。
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一番は奈岐が寮に戻ってくれていることだけど……考えにくい。
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「はぁ……知ってる場所、回ってみるしかないかな」
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息を吐き出し、私は足先を北側へ向ける。
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幸いにも穢れの気配は無く、奈岐が力を使った跡も無い。
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ただそれはどこにも彼女の痕跡が無いということで……
結局、私は朝が来ても奈岐を見つけることが出来なかった。
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seisai_no_resonance/sce05_03_02_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)