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seisai_no_resonance:sce05_03_00_0
一度止まった足はすぐに動いてくれなかった。
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まるで根でも生やしたかのように両足は床を離れず、
私は壁にもたれたまま、何度目かになるため息を吐く。
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「…………」
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奈岐を恐怖してしまった自身への嫌悪感――。
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目を背けたくなる気持ちと再び向かい合う。
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奈岐は理事長と違い、私の頭の中を掻き乱すようなことはしない。
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むしろ感情が先走ってしまう私を抑えてくれる。
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見鬼と呼ばれる業を悪用なんてしていない。
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「でも……」
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どれだけ前向きに捉えても、やっぱり怯えてしまう自分がいた。
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考えを払おうと頭を振るい、再び長い息を漏らす。
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そうしていた時、ガチャッと近くのドアが開く音が聞こえる。
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「んー、誰かいるの?(BROKEN:8_20)
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「あれ……八弥子さん?」
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寝巻き姿の八弥子さんが部屋から顔を出していた。
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「お、カナカナだ。でも、こんなとこで、どしたの?」
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慌てて部屋番号を見ると、ちょうど八弥子さんの部屋のところで
立ち止まってしまっていたらしい。
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「ええと……」
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少し眠れなくて、と言いかけた言葉が紡げず、視線を彷徨わせる。
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「んー?(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「でも、もう時間も遅いですし……迷惑かけちゃいます」
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「時間?(BROKEN:8_20)
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思い出したように小声で言った後、八弥子さんが私の腕を掴む。
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「先生に見つかる前に、カナカナ、こっちこっちっ」
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「わわっ!?(BROKEN:8_20)
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少し強引に部屋の中へ私を引っ張った後、
八弥子さんがドアを静かに閉める。
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「はぁ……セーフセーフ……
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「ご、ごめんなさい」
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「それで、強引に連れ込んじゃったけど……
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そう訊きながら八弥子さんがベッドに腰をかける。
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隣では寝入っているガジが丸くなっていた。
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「…………」
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「あ、無理に話してってことじゃないからね。
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笑顔でそう言ってくれる八弥子さんに対して、
どう話すべきか言葉に迷う。
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八弥子さんは見鬼のことを知っているんだろうか?
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理事長は学園でもごく一部の人間しか知らないと言っていた。
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ただ……そのごく一部に含まれていそうな遠山先輩も知らない様子だったし、八弥子さんが知っている可能性は低そう。
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そう思うと、余計に話しづらくなっていく。
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「んー、何だかカナカナ、どんどん落ち込んでいってる?」
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「あ、あはは……そう見えちゃいますよね、やっぱり」
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これ以上、こうしていて八弥子さんに心配をかけてしまうのも、
悪い気がした。
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今日は部屋に帰って寝てしまおう――そう思った時。
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「ナギっちと何かあった?」
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「えっ……?」
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正確に、ではないけれど、的を射た言葉に声が出てしまう。
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「……あれ?(BROKEN:8_20)
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聞いた八弥子さん自身が顔を傾けている。
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きっと私が思いも寄らぬ反応をしたからだろう。
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「……正確には、奈岐と何かあったわけじゃないですけど」
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一呼吸置いてから、私は八弥子さんに話し始める。
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反応してしまった以上、私の事情ぐらいは話しておかないと、
余計に心配をかけてしまう気がした。
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「ちょっと奈岐に会いづらくなっちゃって……」
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「……?(BROKEN:8_20)
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「いえ、そういうわけじゃなくて……理事長から鬼子のことを
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言葉を選びながら、私は一つずつ八弥子さんに話していく。
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「鬼子のこと?」
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八弥子さんは首を傾げたまま、うーんとそのまま考え込む。
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「それってさ、ヤヤ達も知らないような秘密とか?」
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「そう、ですね……きっと」
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奈岐とは違うけれど、八弥子さんもなかなか勘が鋭い。
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「ねえ、カナカナ、鬼子にどんな秘密があったとしてもさ、
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「他の人の話に左右されてたら、カナカナまでこの島の人達と
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「同じ……ですか?」
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「鬼子ってだけで変な目で見ちゃう。それって寂しいよ?」
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「…………」
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思わず返す言葉が無くなってしまう。
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理事長にどんな意図があったのか知らないけれど、
こんな気持ち、奈岐には向けられない。
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きっと傷つけてしまう。
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「よーし、カナカナ、今からナギっちのところに行こう!
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「えっ?(BROKEN:8_20)
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心の準備その他色々が――。
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「そういうのってさ、顔を見たらスッキリすると思うし、
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立ち上がった八弥子さんが私の腕を再び取る。
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「えーと、消灯時間過ぎてるのに平気なんですか?」
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「平気ー、カナカナがそんな顔をしてる方が心配だよ」
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そう言った八弥子さんが私の頬をぷにぷにとつつく。
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「ほら、らしくない顔してる」
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「……八弥子さんって私より強引ですよね」
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素直に感想を告げてから長い息を吐く。
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「んー?(BROKEN:8_20)
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あまり自覚がないらしい本人に苦笑してから、
部屋の入口へ視線を向ける。
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「本人に会えばスッキリするっていうのは同意します。
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「おー、その調子だ、カナカナ」
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そして、どちらともなく歩き出し部屋を出て行く。
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向かう先は奈岐の部屋だ。
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seisai_no_resonance/sce05_03_00_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)