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seisai_no_resonance:sce04_05_02_0
午前中、勉強をはじめ2時間ほど経ったころ……。
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私は休憩して勉強を続けるか、少し付近を散歩してみるか
考え始めていた。
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よくよく考えると、ここひと月の間、ほとんど学園と寮の間しか
行き来していない。
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実際は御花会で森に行ったりはしてるけど、他の場所にはほぼ、
といっていいほど、足を運んでいない。
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寮の事務に申請を出せば学園の外に出ても問題ないハズだし……。
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今日は十分に勉強したし……いいかな?
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と、思い散歩する事を決めて立ち上がって、大きな伸びをする。
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「んー、頑張った~」
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ひとまず着替えて、冒険の旅に出よう!
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気持ちよく学園の門を出たところで、私は足を止めざるをえない
状況に立たされる……。
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どうも私が一人のタイミングを狙ったかのように、なぜか彼女と
出会ってしまったのだった……。
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「…………なんだ、そのあからさまに嫌そうな顔は……」
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「そ、それは中村さんだって……そうじゃない」
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確かに向こうも、出会いたくない相手に出会いましたって、
顔をあからさまにしている。
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先日、彼女に模擬戦で勝ったって事もあるし……。
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確実に彼女は私に対していい感情など持っていないに違いない。
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でも、この状況、立ち去るにも立ち去れない……。
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誰か、助けて……と、言いたくなる。
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「お、お、お前は、今日は、こ、これから、どこかにいくのか?」
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彼女は何を思ってか、とてもぎこちなく私にそう聞いてきた。
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「そ、そうだけど……」
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「ど、どこに行くんだ?」
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「き、決めてないけど……」
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そういうと、中村さんは何かを考えるような仕草をする。
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えーっと、よくわからないんだけど……。
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「と、と、とりあえず、あ、アテがないというのなら……
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何となく言葉の続きは分かるんだけど、その真意がよめなくて、
私は半分思考が停止しそうになっていた。
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「私が案内してやっても……いいぞ」
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「え、えーっと、中村さん?」
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「な、な、な、なんだ……」
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「どういう心変わりなの?」
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「う、うるさい、これは家の事情だ……」
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とっても素直に返答をくれました。
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家の事情で私と仲良くするように……と、言われたの……かな?
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「えーっと、私が拒否した場合って、どうするの?」
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「ど、ど、どうすれば……いいのか、わからないな……」
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彼女は真剣な顔でブツブツと考え事をはじめる。
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「とりあえず、無理矢理に連れ回す……いや……でもな」
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危険な考えが漏れてますよ、中村さん……。
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「しかし……ま、まぁ……嫌われていても、仕方ない……と言えば
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なんだか、見ていると放っておくのも、悪い気がしてくる……
私ってば……もしかして、とってもお人好しなのかな……。
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そんな事を考えながら彼女に対して、拒否する事を選択肢から
消している自身に笑みがこぼれてしまう。
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「な、何がおかしい……」
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「ごめん、ごめん、いいよ、どこか案内してよ、学園の外って……
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「そ、そうか、では……そうだな……あそこがいいか……」
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「では、ついてこい」
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そう言って、彼女は私の手を無理やり引っ張って、学園内に
連れ戻していく。
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「ええっ!?(BROKEN:8_20)
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「学園外といっても、南側だけが学園外じゃない。こっちにだって
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「ちょ、ちょっと……もう……」
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彼女は思い立ったら、どこまでも突っ走っていく性格なのだ、
ということがよくわかる。
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言っても無駄だと思って、とりあえず騙されたと思って、彼女に
手を引かれるままついて行くことにした。
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学園寮の脇にある小さな小道から森へ入り獣道を進んでいく。
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森への入口の道は雑草など草木に隠されて、本当に気がつかない
ような場所だったけど、彼女はそこにハッキリと道があると認識
していて、さすがに地元民といいたくなる瞬間だった。
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先日まで憎しみをぶつけていた相手の手を引いて歩くというのは、
どういう気分なんだろうか……。
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などと思いながら彼女の後ろ姿を見ていると、ふと、彼女が
立ち止まる。
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「どうした?」
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「え、あ、なんでもない……」
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「そうか、行くぞ、こっちだ……」
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「ちょ、ちょっと、ストップ……」
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「なんだ、ハッキリ物を言え」
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「ついていけるから、手を放して貰えないかなぁって……」
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「…………!?」
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彼女は急に驚いて、手を放し、サッと私との間合いをあける。
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「す、す、す、すまない……て、手を繋いで……しまった」
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小さなことに動揺する彼女の姿はひどく滑稽で、私の中の憎むべき
中村真琴像がグラグラと音を立てて瓦解していく。
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「ちゃんと、ついていくから」
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「そ、そうか、こっちだ……」
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「で、どこに向かってるの?」
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「それは……ついてからのお楽しみだ」
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彼女は得意げな顔をして、再び歩を進めだす。
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なんだか少し少年っぽい笑顔がとても好印象に感じられて……。
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いままで私の前にいた中村真琴という存在はなんだったのだろう?
と、思ってしまう……。
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ただ、彼女は一人でどんどんと進んでいくので、ついていくのは
結構大変なことだった……。
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かれこれ、20分ほど歩いたところで、森を抜け、明るく開けた
場所にでる。
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そこには古びたボロボロの神社があり、あたりは広く開けているが
その先は海しか見えない風景となっていた。
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遠くの海が見え、少し先の地表がいきなり水平線に変わっている
ということはそこは崖なのだ、と思う。
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この場所は妙に空気が澄んでいて、潮風が心地く、確かに彼女が
おすすめしたくなる気持ちがよくわかる。
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ただ、目の前に見える神社がもう少し綺麗だったら……。
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「ここの神社は今にも朽ちてしまいそうだが、由緒ある神社
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「ただ、今は管理する人間もおらずこのありさまだ。
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「向こうの崖も以前は崖ではなかったらしい。遥か昔、空から隕石
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「ま、崖を眺めたら分かるが、円形に島がえぐり取られている
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「へぇ、じゃぁ、遥か昔に火の玉が降ってきて……って伝説、
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「それはこの場所のことだと伝えられている」
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「でも、そんな場所なら、もっと綺麗にしててもいいのにね……」
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「確かにな……しかし、それも随分と昔の長老達が決めたことだ。
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「ハッキリ言って、何を考えているかさえ……わからない…………」
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「諏訪?」
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そのことを聞くと中村さんは少し視線をそらして、何かを考える
仕草をし、勢いよく首を振ってから私の質問に答えた。
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「そうだ……諏訪家は<RB='まつりおさめしゅう'>祭納衆<RB>の長老で学園を取り仕切る家だ」
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「学園を取り仕切る……」
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「ああ、そして……中村家は今や諏訪の犬だ……」
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彼女は悔しそうというより、悲しそうな表情をする。
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「も、もしかして……私のせい?」
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「ちがう、私のせいだ……貴様を島に入れてしまった時点で、
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「それに、私は模擬戦でも負け……情けないとしか言い様がない」
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「…………」
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なんとなく、彼女に謝った方がいいような気がしてきた……。
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そんな空気を彼女は(BROKEN:8_20)
だったけれど……。
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「謝らないでくれ、同情や哀れみを掛けられても嬉しくも
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先に釘を刺されたけど、彼女がそう言いたくなる気持ちは
わからなくはなかった。たぶん、私が彼女の立場なら、
同じ事をいうに違いないと思った。
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それでも家の為に今でも動いているんだと感心さえする。
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ただ、彼女がどう思って、なんのために私をここまで連れてきたか
だけはハッキリと聞いておかないといけない。
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「ねぇ、中村さんは今度は私と仲良くなる事が目的なの?」
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「それとも……別の理由がある?」
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「高遠と出来るだけ仲良くしておけ、そうとしか言われていない。
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「出来るだけ……ね」
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「別に恩を売ったりする気はない、今日はたまたま出会った
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「私はいつもながら愚かだ……」
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「愚か?」
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「ああ、愚かしい……私にとって家の<RB='めい'>命<RB>は絶対だ。高遠を憎めと
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「そう思っていたのだが、中々に人を憎むのは難しい……そして、
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「何より、勝手がわからない……私にはこれまで友人らしい友人
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彼女は寂しそうに笑った、普段からみせる強さとは全く反対の
とても儚く崩れてしまいそうな雰囲気だった。
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私は思わず彼女の手を取る。
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彼女は何事が起きたのかわからず、驚いて固まる。
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「中村さん、ここにいるよ……友達」
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「高遠……」
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「私と……えっと、中村さんがよければ……その、
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「私と……本当にいいのか?(BROKEN:8_20)
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彼女はそんな事をいったけど、たぶん……たぶんだけど、
中村さんはそんなことが出来る人じゃない。
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彼女はどこまでも真っ直ぐな人間だと、なんとなく分かる。
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だからこその行動だと思う。
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「よろしくね、中村さん」
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「えっと、ああ……わ、私の方こそ……よろしくだ」
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そして、私と彼女はガッチリと握手を交わす……。
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が、その時――。
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二人の腹の虫が同時に鳴り響く。
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「!?」
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「!?」
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「そういえば……昼を食べてなかった」
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「私も……おなじく……」
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「まだ3時くらいだ、食堂で何か食べるか……」
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「だね、そうしよっか……」
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会話自体はあまりなかったけれど、何となく悪い雰囲気ではない、
妙な空気で私と彼女は来た道を戻る。
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「……高遠は和食か洋食、どっちが好きなんだ?」
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「どうなんだろう、どっちも嫌いじゃないけど、どちらかと言えば
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「そうか……」
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「中村さんは、洋食派だった?」
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「いや、和食だ。できれば朝、昼、夕と和食が食べたいと思って
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「確かにそうだね。でもお昼は海鮮丼とか定食って、
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「だからかも、しれないな……三食和食を食べる連中が少ない
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「この時間って何か食べられるかな……」
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「私もこの時間に寮の食堂に行ったことがないからな……
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「行ってみるしかないかなぁ」
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「ああ」
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私たちはお腹がぐぅぐぅと暴れるので、歩を早めた。
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「さて……食料まであと少しだ」
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「だね、急ごう!」
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seisai_no_resonance/sce04_05_02_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)