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seisai_no_resonance:sce04_04_20_2
マントの中心で星霊石が輝くと同時に周囲の空気が変わる。
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身を焼くような熱――いや、違う、これは冷気?
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先輩を中心に氷塵が踊り、月明かりに反射して煌めく。
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神秘的な光景――でも、凍てつく空気はいつか八弥子さんが言ったように、冷たく、人を拒む。
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「近くにいるなら来い――」
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呼ぶ声。
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人ではなく穢れを呼び寄せるための声。
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それが今はどうしてか胸を痛ませる。
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「お前達が悲鳴をあげているのは知っている。私には視えるんだ」
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「来い――この私が祓ってやる」
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先輩を中心に輪となり、氷の粒が衝撃と共に駆け抜けた。
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吹き荒れる氷の冷たさに目を細める。
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その先で先輩の星霊石がさらに輝きを強めていく。
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衝撃と共に身を包んでいた外套も弾け飛んだのか、
先輩の雪のように白い肌が冷気に晒される。
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「……私は此処にいるぞ」
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再び衝撃波が冷気を伴って駆け抜けていく。
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先輩の言葉通り、此処にいる事を伝えるように、
幾度も力が駆け抜ける。
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でも、その声は幾度も私の胸を苛む――痛み。
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得体の知れない痛みに目を閉じた瞬間、
辺りの冷気が急激に集束していく。
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そして――――。
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見慣れぬ装束に身を包んだ先輩が目を開く。
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巫女として星霊石の力を使い、内なる魂を具現化した。
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先輩を守るようにして、氷柱のような切っ先の鋭い短刀が浮かぶ。
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他者との絶対的な距離、他人を拒む冷たさ――
全てが形作られていく魂の姿。
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巫女の力を発現させるということは、
自身の内面を晒すことに通じる。
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私は向山奈岐という先輩を知った。
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そう、知った――知ったはずだった。知ったつもりだった。
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でも、一歩たりとも先輩に歩み寄れていなかった。
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それをこの冷気が嫌というほど、私の身に刻んでくれる。
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だから、痛みを感じたのかもしれない。
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これから知っていけばいい――なんて軽々しいことは思えないし、思いたくもなかった。
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そんな気持ちで向き合ったら、きっと目の前にいる人には届かないし、何一つ伝わらない。それが分かっている。
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だったら、どうすれば?
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それはもう決まってる。
知っていくなんて真似はしない。
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私が向山奈岐という先輩を知るために出来ること――すべきこと。
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きっと私だから、私の魂だからこそ出来ること。
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私は先輩に歩み寄り、輝く星霊石に触れ、力の交信を交わす。
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そして――。
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「……燃えろ」
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勾玉を握りしめ、静かに、然れど強く言葉を発する。
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彼女へ続く道を冷たい氷が閉ざすなら――。
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私の炎でこじ開けるまで――それが私のやり方、私の魂の在り方。
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「燃えろッ!」
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二度目の言葉はさらに強く。
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全ての氷を溶かすほど、燃え盛る炎を呼び起こす。
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肌に貼り付いていた冷気が溶け、熱気に包まれていくのが分かる。
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でも、まだ先輩には届かない。
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だから、もっと――。
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勾玉を掲げ、全ての炎を集束させていく。
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「もっと燃えろッ!!」
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冷気があの人を閉ざすなら、私の炎が溶かすだけ。
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絶対にあの人に触れる。
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そして、向山奈岐という人を知るんだ。
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それが一対であること、一つの魂になること。
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勾玉に集束した炎が衝撃で駆け抜け、火の粉を散らしていく。
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「もっと――!」
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「高遠、落ち着け!(BROKEN:8_20)
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「えっ……?」
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身体を火の粉が包み、装束が私の身に纏った瞬間だった。
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ドンッ――という爆発音が鼓膜にまで響く。
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その瞬間、全身を立ってられないほどの衝撃が駆け巡り、
身体が草木の上に投げ出されるのを感じた。
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「わわわわっ!?」
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「みぎゃっ!?」
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身体を起こすと目の前を煙が――違う、これは霧が閉ざしている?
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どうして……霧?
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「くっ……高遠、無事か?」
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霧の中で先輩の声が聞こえた。
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「無事です!(BROKEN:8_20)
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先輩に対して声を上げながら立ち上がる。
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そして、巫女の力と共に発現した剣を手に取り、周囲を警戒した。
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「まさか穢れが……?」
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「はぁ、高遠……穢れにここまで器用なことは出来ないぞ」
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「でも――」
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言いかけた時、身体をぞくりと悪寒が駆け巡る。
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この感覚は間違い無い。
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「チッ、さすがに勘付かれたか……!」
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「穢れ……数は……二、三……多い!(BROKEN:8_20)
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私か先輩、どちらかが幸魂となって支援しないと!
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剣を構えつつ、霧の中で先輩の姿を探す。
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「私が二匹やる!(BROKEN:8_20)
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「でも、先輩、幸魂は!?」
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「ッ――!?(BROKEN:8_20)
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「今は合わせている時間が無い!(BROKEN:8_20)
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霧の中から穢れの唸り声が響いてくる。
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こうなったら覚悟を決めないと――剣を握る手に力を籠めた。
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海から吹き付けてくる潮風が僅かに霧を払う。
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そして、私の視界に一匹の穢れの姿が映る。
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どれもが共通して、この世のモノとは思えない出で立ち。
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そして人為的な装飾品らしきもの。
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先輩はこいつを猿神が残した呪いだと言った。
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こうして二足で歩行してくる辺り、そう考えられるかもしれない。
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「私にも……加護はあるよね」
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剣を構え直し、頭の中で燃えさかる炎を鮮明に描いていく。
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これで三度目――でも油断はしない。
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「行くよ……!」
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小さく息を吐くと、私は火の粉をたずさえ、穢れに向かう。
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seisai_no_resonance/sce04_04_20_2.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)