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seisai_no_resonance:sce04_04_16_0
漂う夕飯の匂いにつられるようにして食堂へ入る。
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いつもより少し早い時間だけど、もう食事を始めている学生の姿も何人か見受けられた。
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「……うぅ……高遠、いつまで手を引っ張るのだ……」
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「あ、すみません……つい握り心地が良くて」
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ちょうど良い小ささが妙に馴染んでしまっていた。
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「長居するつもりは無い。さっさと食事をとるぞ」
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手を離した途端、先輩は早足で配膳口へ向かっていく。
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「お腹空いてたんですか?」
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先輩が早足でも大股で歩けば、すぐに追いついてしまう。
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「そういうわけではない……顔を合わせると面倒になるだけだ」
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「面倒って……御花会のみんなとですか?」
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「高遠、お前も今日は途中で抜け出した身だ。何を言われるか、
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痛いところをつかれて思わず苦笑する。
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「あはは……それもそうでした」
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今日、小言を言われるか、明日に小言を言われるか、
そんな些細な違いな気もした。
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でも、ご飯はせめて美味しく食べたいよね。
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いそいそとトレイを手に取ると、先輩の隣に並んで、
今日の夕飯を受け取っていく。
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「いただきますっ」
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「……いただきます」
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今日は和食――ご飯に焼き魚、味噌汁、お新香と至ってシンプル。
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この後、運動するならお腹も空くことだろうし、
ご飯を少し盛ってもらっている。
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「高遠は……よく食べるから大きくなれたのか?」
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意外にも引きずっていたのか、
食事中、先輩がそんなことを口にした。
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「うーん……そうだと思います!」
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「……嘘だな、ただの大食いだ」
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あえて言ってみたつもりなんだけど、すぐに見抜かれてしまう。
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「でも、ちゃんと食べれば大きくなれると思いますよ?」
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「…………」
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「それは……今からでも間に合うか?」
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「ちゃんと食べれば」
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にこりと笑ってみせると、難しい顔をした先輩が、
あまり手を付けていなかったご飯に箸を伸ばしていく。
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一口、二口――咀嚼、そして箸を置く。
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「ええぇっ!?(BROKEN:8_20)
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「き、急に声をあげるなっ……ちょ、ちょっと休憩だ」
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「ちゃんと食べないとダメですよー?」
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そう言いながら、自分も食を進めていくが……
私の茶碗が空になっても、先輩のご飯はまだ半分以上残っていた。
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「……高遠が満足なら私はもういいぞ」
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「先輩、好き嫌いは?」
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「辛いもの、あと猫舌だ」
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「じゃあ平気ですね」
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「何が……って、高遠!」
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私が何を企んでいるのか分かった先輩が席を立とうとするが、
それより先にお箸でご飯をすくってみせる。
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「はい、先輩、口を開けて下さい。私が詰め込みます。我が家の
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「詰め込めばいいというものではないだろう……!」
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「はい、あーん」
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「うっ……」
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先輩が視線を彷徨わせた後、私が差し出すお箸に戻ってくる。
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そして、ぱくっと口に含み、そのままもぐもぐと咀嚼した。
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「残さずに食べましょう。はい、あーん」
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「うぅ……これは何なのだ……」
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口ではそう言いつつも、先輩は一人で食べる時よりも、
しっかりご飯を食べてくれる。
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そんなやりとりを繰り返していた時――。
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「あれ……ナギっち?(BROKEN:8_20)
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八弥子さんの声が聞こえたかと思うと、すぐさまテーブルまで
駆けてきた。
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「ナギっち、ちゃんとご飯食べてる!(BROKEN:8_20)
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そして八弥子さんに頭をぐしぐしと撫でられる。
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「うぐぐ……禰津、頭を撫でるなっ」
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向山先輩が嫌々と頭を振るっている間に、
見慣れた一団が食堂に入ってくる。
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「あんた帰ってこないと思ったら……って向山先輩?」
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「先輩が食堂にいるの初めて見た……」
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由布や恵がいるということは……。
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「はぁ、御花会を抜け出したと思えば……呑気に食事ですか」
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「……高遠さん、向山先輩、少しよろしいですか?」
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三輪さんの呆れ返った声の後、
遠山先輩が早足でテーブルまでやってくる。
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「高遠さん、御花会はまだ活動中でしたのよ。
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「それは……その……」
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「今日は理事長だけでなく、松籟会の方々もお見えになっていた
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ごもっともです……と項垂れていく。
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松籟会の人達に探りを入れたくて……なんて本音は言えないから、
黙っていることしか出来ない。
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「向山先輩も御花会に所属しているという自覚を持って下さい。
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「向山先輩と打ち解けている様子ですし、そのまま仲良く
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「それを判断するのは松籟会の方々です。しかし、このように規律
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中村さんが遠山先輩の家は松籟会の筆頭と呼んでいた。
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関係は分からないけれど、遠山先輩の言葉に耳を貸すようなことになれば……。
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「この学園では巫女候補に選ばれたくとも、選ばれなかった学生の
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「……下らない」
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「何ですって……?」
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「下らないと言った。その思考も理屈も下らない」
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「向山先輩、その言葉、聞き捨てなりませんよ」
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遠山先輩の静かな怒りが伝わってくるのに対して、
向山先輩は目を伏せたまま、ため息を漏らしていた。
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「遠山、その怒りもパフォーマンスか?(BROKEN:8_20)
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「なっ……!」
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「よく見ろ。利き手に拳を作っているし、顔も赤い。つまり、
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「静かに相手をたしなめたつもりが、怒り心頭に発している。
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遠山先輩に喋る暇も与えず、向山先輩が早口に告げていた。
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「鬼子……」
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小声で、だけど……これまで聞いたことがないほど、
冷たく怒りを籠めた声。
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「――行くぞ、高遠」
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向山先輩が席を立つと、長い髪を揺らしながら歩き出す。
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「せ、先輩……!(BROKEN:8_20)
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「気にするな。禰津、後は任せた。水でもかけてやれ」
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「あはは、ナギっちはホント辛口だなぁ~」
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八弥子さんは苦笑しながらも、私に視線で合図を送る。
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行っていいよ、と――言葉無くとも伝わってきた。
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「すみませんっ……」
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頭を下げて、すぐに向山先輩の後を追いかける。
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マントを引きずって歩く先輩はもう食堂を出るところだった。
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seisai_no_resonance/sce04_04_16_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)