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seisai_no_resonance:sce04_04_12_0
あれ、思ったよりも普通……というか、
自室と変わり映えのしない部屋に通される。
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もっと猫柄の何かとかぬいぐるみがあると思ったのに。
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「カナカナ、どしたのー?」
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八弥子さんがベッドの上であぐらをかいてガジを抱きかかえる。
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「ちょっと意外だなって。八弥子さんの部屋、もっと猫グッズとか(BROKEN:8_20)
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「あー、カナカナは寮に入ったばかりだから知らないのかー」
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「ここって私物は殆ど持ち込み厳禁なんだよねー」
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そう言って「つまんないねー」と八弥子さんがガジに話しかける。
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「そういえば、寮の書類に書かれていたような……」
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寮に来た直後は慌ただしくて、流し読みしかしてなかった。
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「でも、猫は飼ってもいいんですね」
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「んー?(BROKEN:8_20)
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さらっと不正を口にしてくれた。
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「でも、ガジは平気なの!(BROKEN:8_20)
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「うーん……?」
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八弥子さんに突き出されたガジがニャーと鳴いている。
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「……可愛いから?」
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「正解っ!」
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「えぇっ!?」
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「というのは冗談。ガジはヤヤの飼い猫だけど、
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ニャーと肯定の鳴き声がガジから聞こえた。
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それって飼っているのと同じような気もするけど、
先生に怒られていないなら、それでもいいかと思う。
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「カナカナ、そっちのベッド空いているから座ってもいいよー」
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「一人部屋なんですか?」
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「うん。ルームメイトだった子はね、
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八弥子さんはあっけらかんと言ったけれど……。
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「だ、脱落って……」
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巫女候補を離れて、学生に戻ったんだろうか……?
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しかし、改めてそんな話を聞くと、とても他人事には思えない。
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この部屋から去った巫女候補の子はどんな子だったんだろう?
そんなことを思いながら、ベッドの上に腰をかけた。
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「そういえば、今日も向山先輩に会えましたよ」
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「へぇ~、やっぱり模擬戦見に来てたんだ」
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あまり驚く様子もなく、八弥子さんが微笑む。
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「あれ、向山先輩が見に来るって知ってたんですか?」
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「だって、カナカナのこと気にしてるみたいだし、
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八弥子さんはずばりと向山先輩の行動を読んでいた。
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私の驚きを見て、正解だと確信したのか、
にんまりと満面の笑みを浮かべる。
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「むぅ……来るのが分かってたら、教えて欲しかったです」
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「ヤヤが教えたら、ナギっちに後で怒られちゃうし」
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「向山先輩って、ホントに御花会の活動が嫌いなんですね」
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「ナギっちはナギっちの考えがあるみたいだしねー」
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どこか呆れたような息を吐き出してから、
八弥子さんがそんなことを言う。
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「そういえば、模擬戦で消耗したくないって言ってました。
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「それはヤヤでも分かんないなー。ナギっち、すっごく頭いいから
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「頭がいい……えっと、鬼子でしたっけ?」
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確か、色素が薄く産まれた織戸伏の子で、
類い稀なる才能を持つという話。
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「そそ。頭がいいだけじゃなくて、才能にも恵まれてるって話」
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「昔はだけどね、鬼子ってだけで、
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「それって、なんだか飛び級みたいですね」
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今は模擬戦やら松籟会の査定やら、色々と聞かされているのに、
全部飛び越してしまうなんて信じられないぐらい。
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「数十年も前の話らしいけどね、鬼子自体が珍しいし。
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「二人……」
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ふと、もう一人の鬼子――理事長の姿が頭に浮かぶ。
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最初に会った以来、顔を合わせていないけれど……
向山先輩とは違って、人を食ったようなイメージがある。
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「そうだ!(BROKEN:8_20)
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「か、賭けるですか?(BROKEN:8_20)
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閃いたとばかりに八弥子さんが身を乗り出してきた。
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「ナギっちの魂ってどんな力なのか!?
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「先に当てた方が、って……
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「うん。というか、知ってる人いないと思うよ?」
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「えっ……?」
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何かとんでもないことを聞いてしまったような気がした。
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びっくりした私を見た八弥子さんは満足げに話を続ける。
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「ナギっち、誰かの前で力を使ったこと無いんじゃないかな?
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「…………」
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く、口が開いたまま……塞がらない。
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向山先輩って、ホント一回も模擬戦に出たことが無いんだ……。
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「それで、今年のペアに選ばれたカナカナはどう思う?」
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八弥子さんが興味津々といった様子で瞳を輝かせる。
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「んー……」
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向山先輩の力……かぁ。
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参考までに、それぞれが見せた力を頭の中で思い返していく。
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私の炎、八弥子さんの風、中村さんの蒼い炎、恵の雷……。
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でも、由布や遠山先輩、三輪さんは見た目で分からないし、
向山先輩は鬼子だから特別ってこともありそう。
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「うーん、本人の希望とか考えると、魔(BROKEN:8_20)
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色々と悩んだ末、長い呪文を唱えれば、炎でも風でも
何でも使えそうなイメージが湧いてきた。
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それに本人がそういうの好きそうだし。
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「あはは、もしそうだったらナギっちは喜びそうだね」
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楽しげに笑った後、八弥子さんが今度は自分の番とばかりに、
人差し指を立てていた。
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「ヤヤはもっと不器用なものだと思うなー」
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「不器用な、ですか?」
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「ナギっち、どんなところにも溶け込めるぐらい頭いいのに、
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「…………?」
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八弥子さんの言葉を上手く捉えられず、私は顔を傾ける。
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「流れる水はね、何にでもなれるかもしれないけれど、
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「それって……氷のような?」
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「そうじゃないかなって、ヤヤはナギっちを見てて思うよ」
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八弥子さんが向山先輩に持ったイメージは水――
でも、冷たく人を拒んだ結果、それは氷になった。
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魔(BROKEN:8_20)
八弥子さんの答えは的を射ている気がする。
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「その人が持ってる魂の形って、性格に出てくるものだしね」
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そう言って微笑む八弥子さんは……うん、確かに風だと思う。
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私は炎……炎みたいなのかな?
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「ふふーっ、カナカナもすぐに分かったよ!」
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「すごく熱くなるときは熱くなる。でも、落ち込むときは、
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「あはは、そんなに……分かりやすいですか?」
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言われて見れば、そんな気もしてきた。
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それに、たぶん今の私は図星を刺されて苦笑してしまっている。
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「みんな、そうだよ?(BROKEN:8_20)
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「…………」
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何となしに八弥子さんは言うけれど、それはもう人を見る才能、
そんなレベルの話に思えてきた。
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現に、今日の模擬戦まで誰がどんな力を使うかなんて、
まったく予想すら出来なかったし。
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「ニャッ!」
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話の途中、ガジが思い立ったかのように、
八弥子さんの膝から飛び降りる。
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「あ、ご飯の時間だってさ」
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「あはは、ガジは時間に正確なんですね」
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「ガジってば、食いしん坊さんだからねー。
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もう入口のドアまで駆けていったガジが急かすように、
ニャーニャーと鳴いている。
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「カナカナ、ナギっちのこと、もし答えが分かったら教えてね」
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「賭けだとしたら、もう負けた気分ですよ。
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「ふふーっ、もしヤヤが正解したらね――」
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「正解したら……?」
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ごくりと固唾を飲む。
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そして、得意げに微笑んだ八弥子さんは――。
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「えっ、ええぇーっ!?」
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すごく、すごく難しいことを……
考えるだけでも大変なことを要求してくれました。
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seisai_no_resonance/sce04_04_12_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)