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seisai_no_resonance:sce04_04_07_0
風切り音、残像を描く大鎌が目前の空間を一閃する。
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前髪が数本切られて、中空にはらりと散っていった。
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「はぁっ……はぁっ……」
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「威勢が良かったわりに、もう息が上がっているようですね?」
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大鎌を足下に立てた遠山先輩が余裕の笑みを浮かべる。
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「くっ……」
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どんな攻撃も遠山先輩には通じなかった。
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剣で正面から挑んでも、炎を使った攻撃でも――
まるで遊ばれているかのようにあしらわれてしまう。
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おそらく大きな原因は二つ。
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経験の差がそのまま実力にあらわれていることと、
幸魂の存在が巫女の力を増幅させている。
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一対となり初めて扱うことが出来る力……
これが本当の巫女の力だって、身をもって味わった。
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「さて――由布、見ていなさい。これが巫女ということ」
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大鎌を両手で持った遠山先輩の身体が軽やかに宙へ舞う。
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鎌を中心に放たれる巫女の力が大気すら振るわせる。
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弧を描いていく刃の狙いは――私だ。
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「くっ……!」
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震える手で剣を握り、接近する遠山先輩を待ち構えた。
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鋭い風圧を従え、巫女装束の先輩が迫り、陽光に鎌が照り輝く。
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大鎌の射程距離まであと数十センチ――私はろくな回避行動も
取れないまま、先輩の接近を許してしまい――。
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「えっ?」
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唐突に手元から剣の感覚が消える。
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鎌に巻き取られ、握りしめていた剣が跳ね飛ばされていく。
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武器を失った――そう知覚した時には、もう決着が付いていた。
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「高遠さん、これが一対の力。勉強になったかしら?」
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「あ…………」
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得物である大鎌が私の首元に添えられている。
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鋭い刃物が間近にあり、いつでも命を奪われるという感覚は、
生まれて初めての体験かもしれない。
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いや、穢れと格闘した時を含めれば……二回目か。
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警告を繰り返すように肌が恐怖を感じてチクチクと痛む……
身の毛がよだつって本当にあるんだという酷い実感。
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額から零れる冷たい汗は頬を伝い、顎から地面に落ちていく。
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「私が穢れでしたら……そのまま首をはねていたことでしょうね。
(BROKEN:8_20)
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「…………」
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私が答えられない――少しでも動けば、鎌の刃に首を取られそうな状況であることを知っての問いかけ。
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「実戦での無茶は死に繋がります。肝に銘じておいて下さい」
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先輩の手から鎌が消え、巫女装束も制服へ戻っていく。
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そして、その場に膝から崩れ落ちた私を一瞥して、
先輩は自身の背後へ振り返った。
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「由布、勉強になりましたかしら?(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「神住姉様……」
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制服姿に戻った由布が唖然とした様子で遠山先輩を見つめている。
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「それにしても初戦にも関わらず、素晴らしい支援でしたわ。
(BROKEN:8_20)
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「私、出来ることをやっただけで……でも、姉様にそう言って
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緊張で強張っていた由布の表情がほころんでいく。
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そんな二人のやりとりを眺めた後、私はため息と共に、
草原の上で大の字になった。
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「かんぱーい……」
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ぐうの音も出ないほどに完敗。
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巫女の力は勾玉に戻り、私の手の中で仄かに熱を放っていた。
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「怪我は無いようだね」
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審判を務めていた末来さんが私に歩み寄り、いつもの(BROKEN:8_20)
頭を撫でてくれる。
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普段なら嬉しい気持ちになるのに、今は少し複雑。
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「……今日の私、末来さんに褒められるようなことしてません」
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「そうでもないよ。神住相手によく頑張った。
(BROKEN:8_20)
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「…………」
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自分の力を過信しすぎたこと、一対の力を見くびったこと。
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反省すべき点が多すぎて、とても末来さんの言葉を素直に受け止めることが出来なかった。
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「鼎、次の試合が始めるから移動できる?」
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末来さんが手を差し伸べてくれる。
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「あ、はい……すみません」
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末来さんの手を借りて立ち上がると、
次の模擬戦の準備が始まっているところだった。
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中村さんと八弥子さん、それから恵と三輪さん――。
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相変わらず中村さんは口を閉ざしたまま、
他者と距離を置いているように見える。
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一方の八弥子さんは中村さんの横で、どこか気楽な様子。
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対するところの恵と三輪さんだけど……。
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「ええと……あたし、補助した方がいいよね……?」
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「…………」
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返事は無いけれど、三輪さんは苛立って爪を噛んでいる。
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恵のことで苛立っているのか、それとも別の要因があるのか。
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それは三輪さんの視線の先を見れば、分かることだった。
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「もう少し力の使い方を理解出来れば、幸魂の状態でも、
(BROKEN:8_20)
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「ほ、本当ですか?(BROKEN:8_20)
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親しげに言葉を交わす由布と遠山先輩――。
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三輪さんじゃなくても、独りぼっちの私には……
ほんの少し羨ましく思えた。
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向山先輩ってば……今どこで何をしてるんだろ?
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ため息を吐いてから、まだ明るい昼の空を見上げた。
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seisai_no_resonance/sce04_04_07_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)