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seisai_no_resonance:sce03_00_08_0
私から放たれた火球が直撃して、穢れが地に膝をつく。
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「はぁっ、はぁっ……!」
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息が上がり、全身から汗が噴き出す。
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時間にしてどれだけの戦闘時間だったか分からないけれど、
やっぱり体力が追いついていない。
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「くっ……まだ!」
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剣を構え直したところで気がつく。
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穢れ――人型をした生物を、私は本当に殺すことが出来るのか?
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下半身の布や、仮面のような装飾。
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化け物らしい姿ではあるが、やはり人為的な何かを感じてしまう。
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「鼎、戸惑ってはいけない――穢れは苦しんでいるんだ。
(BROKEN:8_20)
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「末来さん……」
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穢れに視線を向ける。
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ゆっくりと起き上がり体勢を取り戻しつつある化け物の姿――。
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アレは化け物だ。巫女の力で祓うことで救われる存在なんだ。
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自分の中で幾度も言葉を繰り返し、剣を持つ手に力を籠める。
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「炎よっ……!」
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剣と私の装束が再び炎を纏い始めた。
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「祓え、祓うんだ……巫女として……祓えっ!」
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地を蹴り、そのまま剣の切っ先を穢れに向けたまま突進する。
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「たああああぁッ!!」
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真っ直ぐに、穢れの胴体に目掛けて剣を突き立てた。
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固い肉を裂くような感覚が両手に反響して、嫌悪感が沸き起こる。
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それでも手を止めずに穢れの大きな身体を貫いた。
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そして、溜め込んだ全ての熱を解放させる。
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「燃えろ――ッ!!」
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ゴッと衝撃が駆け抜け、穢れの身体が炎上していく。
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苦しみ、呻く声をあげていたそれは次第に動かなくなり、
ゆっくりと地に伏していった。
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そうして、大地を揺らすほどの巨体が動かなくなる。
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「……見て、これが祓うということ」
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「こ、これは……?」
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倒れた穢れの身体から光の球がいくつも溢れ出していた。
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その眩い光の球は無数に舞い上がり、
中空にゆっくりと溶けていく。
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「……穢れは本来は存在してはならないもの。
(BROKEN:8_20)
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中村さんの静かな声が、まるで祈祷を捧げているようだった。
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その間にも穢れだったものの身体は光となり、
祓うという言葉通り――その姿が消えてしまう。
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ようやく安心出来る……そう思った途端、身体の力が抜け、
私は制服姿に戻っていく。
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「これは……認めないわけには、いかないようですね」
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遠山先輩の向こうには、へたりとその場に座り込んでしまった恵とあからさまにホッとした顔をしている由布がいる。
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「カナカナ、すごい!(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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いきなり八弥子さんに抱きつかれて、思わずよろめいてしまう。
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「わ、わわっ……む、胸っ!」
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顔が近いのもびっくりだけど、それ以上に私を圧迫する胸が……!
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「大したものですこと」
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あからさまに面白くないといった様子で三輪さんが視線をそらす。
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そうして、面白くないと思ってるのがもう一人。
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「――――」
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無言で私を睨む中村さん。
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背筋が凍り付きそうなほどの視線、彼女の思惑は分からないけど、気を抜いたらいけないことだけは分かる。
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「どうやら……みんな、鼎の力は認めてくれたようだね」
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各々の反応に満足した末来さんが私の元に歩み寄ってきた。
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「八弥子、交代」
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「ん?(BROKEN:8_20)
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私を抱きしめている八弥子さんを横に置いて、
末来さんから再び頭をよしよしと撫でられてしまう。
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「あ、あの……」
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「よく頑張ったね、鼎」
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「……あ」
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その言葉とその姿がお母さんに重なって、思わず息が漏れる。
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「これで話の続きが出来るね――神住、お願いできるかな?」
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「……片倉先輩は彼女の頭を撫でるのにお忙しいので?」
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「うん」
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あまりの即答ぶりにその場の空気がまたねじれたような気がする。
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やっぱり末来さんって……抜けてるところがあるなぁ。
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こうして頭を撫でられている自分も問題なんだけど。
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「では……先ほどの続き、巫女候補のことを話しますわ」
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「巫女候補は御花会に参加して、祭の儀式で死なないために、
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「力に磨きをかけるためには、実戦形式の模擬戦を行うことになり(BROKEN:8_20)
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松籟会……自然と視線が中村さんへ向かってしまう。
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「……松籟会については私から話そう。
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皮肉と共に歩み出た中村さんが私を睨んだまま言葉を続ける。
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「松籟会というのは、穢れ退治に関わった家で構成され、
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「祭というのは意外に複雑なもので、一部は形骸化してはいるが
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「松籟会はそれらを一手に引き受けている組織だ。なければ、
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「迷信だという輩もいるだろう。だが、もし何か起こってしまって(BROKEN:8_20)
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あの穢れを見た今、迷信と言ってしまうのは無理があるだろう。
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それを祓うための儀式、あって然るべきものなのかもしれない。
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対しての巫女の存在……。
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ふと、この場にいない向山先輩の横顔がちらついた。
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「あの……向山先輩は御花会に参加する気はないと聞きました」
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誰もが戸惑ったような、困ったような表情をする。
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「ナギっちは巫女として生きる道を否定してるからね」
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「巫女になれないと、存在価値もないって思う人もいれば、
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八弥子さんはあっさりと言ってしまったけど、
疑問がまだ残ってしまう。
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「参加したくないと言っているのを無理に参加させたところで
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気遣わしげに、末来さんが言葉を切った。
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「……ただ、正式に巫女を任命するのは松籟会。
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言いにくそうに、末来さんが言葉を濁した。
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その後を引き継ぐように、遠山先輩が続ける。
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「片倉先輩、訓練不足の巫女の行く末は決まっています。
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断定した口調に、遠山先輩の覚悟も混じっているように思えた。
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「奈岐には奈岐の考えがある。御花会は各個人に干渉はしない。
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「学園側で巫女を守れることにも限度があることを忘れないで」
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みんなにそう話した後、末来さんが再び私を見る。
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「そういえば、鼎は……理事長と会ったことあるよね?」
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「理事長……?(BROKEN:8_20)
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「おかしいね。学園長から鼎の転入は理事長の一存で決まったと
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私の転入は……理事長の一存で?
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首を傾げようとすると、私の肩に八弥子さんが顎を乗せた。
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「わっ……八弥子さん?」
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「理事長はナギっちと同じ、見た目ですぐ分かるよ」
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「それって……」
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「鬼子、あの人も相当な切れ者だよ」
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ふふっと笑いながら、八弥子さんが私の肩から離れていく。
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鬼子――色素の薄い肌と髪色を持って生まれた子。
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「あの、私、急いでるんですけど」
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「まあまあ、待って。キミのこと、聞いてるよ。だいたいね」
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「私のこと?」
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「ま、どうせこうなるって分かってたし……
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「が、学長、さん……ですか?」
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「そそ――詳しい事情、知りたいよね?」
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「階段を一つ下って、すぐ近くにある職員室の隣が学園長室だよ
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あの人が……理事長……?
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かなり若く見えたけど、見間違えじゃないと思う。
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鬼子の才能が為せる業……なのだろうか?
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「鼎も疲れただろうし、今日はこの辺りで解散にしようか」
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「誰が今年の巫女になるかは祭の前に決定する。まずは誰と誰が
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「みんな、覚悟しておくんだよ?(BROKEN:8_20)
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きっと近いの間に誰と誰がペアになるのかが発表されるんだろう。
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参加する以上、私も誰かと組むことになる。
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巫女として戦うことがどういうことか、それはまだ朧気にしか
分からないけれど……やると決めた以上は戦って見せよう。
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「お母さん……」
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お母さんがこの島にいるなら――。
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このまま巫女に選ばれるように、進み続ければ……
末来さんが教えてくれた真実に、お母さんのところに辿り着ける。
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今はそう信じながら、まだ熱が残る勾玉を強く抱きしめた。
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seisai_no_resonance/sce03_00_08_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)