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seisai_no_resonance:sce02_00_08_0
自分の靴音を響かせて、人気の無いロビーに戻ってくる。
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もう夕食時は終わったのだろうか?
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食堂を覗いてみようとも思ったけど、一度部屋に戻っておこう。
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手前の階段を少し重い足取りで昇り、二階へ向かう。
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もしかしたら寝てるかもしれないと、控えめにドアを開ける。
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すると――。
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「遅いっ!!」
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部屋に帰るや否や、仁王立ちした由布に怒鳴られてしまう。
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「由布ちゃんはすぐ怒るぅ、そうじゃないでしょー?」
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のんびりした恵の口調に何故か由布は頬を染めて、
ふいっと横を向いてしまった。
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「……な、何かあった?」
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「昼間助けてもらったのに、御花会の時、何も言えなかったこと(BROKEN:8_20)
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「こらっ、恵……いちいち言わなくていいから」
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由布を見ると、さらに真っ赤になっていて、
思わず吹き出しそうになる。
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「あんたもなんて顔してるのよ……まったく……」
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「それより、制服と教科書とか届いてたわよ。代わりに受け取って(BROKEN:8_20)
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「あ、すっかり忘れてた……」
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「だと思ってた。あと何も食べてないって言ってたから、
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「はい、カナちゃん。もしよかったら、食べない?」
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目の前に山盛りのサンドイッチが差し出された。
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お腹と背中が本当にひっつきそうな状態だから、
思わずよだれが出てしまいそうになる。
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「わっ、ありがと……何も食べてなくて本当にお腹ぺこぺこで」
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そんな話をしていると、申し訳なさそうに恵が微笑む。
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「カナちゃん、あたしも何も言えなくて……ごめんね」
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そのまま頭を下げられて面食らってしまう。
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「あたし……神住先輩とか三輪さんの家柄が全てって考え方、
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「あたし自身が分家の出身で見下されてるからってのもあるのは
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「でも、それを入ってきたばかりのカナちゃんに言うのは……
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恵がそこまで思っていてくれたなんて、感謝の気持ちをどう言葉にあらわしたらいいのか分からなくなる。
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「恵も、由布も優しいね。良かったよ、二人と仲良くなれて」
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「私は別にそういう――」
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「由布ちゃんは、すぐにそういう態度を取るぅ」
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恵がクスッと微笑みながら、由布の頬を突いていた。
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「それじゃあ、いただきます!(BROKEN:8_20)
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サンドイッチを一つ摘んで口の中に放り込む。
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これは……新鮮なレタスとトマトの甘さが堪らない!
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空腹は最大のなんとやらだけど、それを通り越して、
美味しいものに巡り会えた気持ちになれる。
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「よほどお腹空いてたのね……」
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気付くと、二つ三つとサンドイッチを食べ始めていた。
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「ふふっ、頑張って作ったかいがあったよ。
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「んっ――んんっ!(BROKEN:8_20)
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慌てて咀嚼して呑み込んで、最大限に感想を伝える。
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「良かったぁ~」
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「食べたら、明日の用意しなさいよ。学園にいる以上、
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「ふふーっ、こう見えても前の学園じゃ、そこそこの成績だった
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何個目になるか分からないサンドイッチを食べつつ、
そんな自慢をしてみた。
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「へぇ、でもそんなあんたに相応しい言葉を教えてあげる」
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「油断大敵、足をすくわれるわよ?」
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「用心しておきます、と」
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由布に笑いかけながら、もうサンドイッチをさらに一口。
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いくつあっても足らないって思えるぐらいお腹すいてたんだなぁ。
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今日一日を思い返してみても……とにかく色々ありすぎた。
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「カナちゃん、お茶も飲む?(BROKEN:8_20)
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恵が気を利かせてくれて、コップに水筒からお茶を注いでくれる。
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「ありがとう……はぁ、至れり尽くせりだよ」
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冷たいお茶をもらった後、再び手がサンドイッチに伸びていく。
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「よく食べるわね……」
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「一日分のカロリーをここで補充っ……みたいな?」
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「そんなこと言って、変なとこにお肉ついても知らないわよ」
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「あはは、それはそれで困るけど」
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分かっていても、まだまだ手は止まりそうにない。
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それから三人でしばらくの談笑を楽しみ、
寮は間も無く消灯の時間を迎えることになる。
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部屋に帰る恵に手を振った後、届いている荷物の確認をする。
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鞄に教科書にノート、制服その他もろもろ……。
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「どう?(BROKEN:8_20)
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「うん、ばっちりかな」
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「でも、欲を言うなら……海の底に沈んだ携帯電話と財布も
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貴重品を失ったことを思い出すと、若干遠い目をしてしまう。
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「電話に財布って……ああ、島に来る途中、
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由布が机のキャビネットを漁り、小銭入れらしきものを取り出す。
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「はい。前使ってた小銭入れだけど、無いよりマシでしょ」
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「わ、ありがと――って中身!(BROKEN:8_20)
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開けてみると、小銭だけでなく紙幣が数枚ほど見える。
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「海の底ってことはそういうことでしょ?(BROKEN:8_20)
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「……由布って、やっぱり優しい」
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「そ、そんなこと……っ」
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顔を赤くするのが、とても分かりやすくてクスッと吹き出す。
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「明日の用意出来たら、もう寝る時間だから……早くしてよね」
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「はーい」
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と、由布に返事をしてから荷物チェックを再開した。
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seisai_no_resonance/sce02_00_08_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)