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seisai_no_resonance:sce02_00_05_0
三人で廊下を出来るだけ走らないようにしつつ、
食堂があるという場所へ向かう。
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「初日からルームメイトを遅刻させたら、大恥だわ」
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「うぅ、あたしも色々言われちゃいそう……」
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「恵は真に受けすぎで――ってそんな話をしてる場合じゃなくて」
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タタタッとステップするようにして階段を下っていく。
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「食堂はこの奥だから急いで」
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「う、うんっ」
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先行する由布に続いて廊下を早足で進む。
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そして食堂というプレートが付けられた大きいドアを両手で開く。
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ここもまた高級ホテルさながらの食堂だった。
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寮というだけあってか、並んでいるテーブルも多い。
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放課後だからか、他の学生が談笑する姿もチラホラと見かける。
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お嬢様学園だけあって、私服は私服でも……みんな気を遣ってるんだなあ、といった第一印象。
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その中でも取り分け目立つ人達が、端のテーブル席についていた。
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「すみません、お待たせしてしまいました」
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「私達が少し早く来ていただけですから、気にしないで」
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と、私服姿の神住さんが由布に微笑む。
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「転入生について、情報を交換する必要がありましたから」
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すまし顔でお茶を飲むのは三輪さんが一言。
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って和服だ……すごい綺麗……!
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口調こそ刺々しいけど、若干その姿に見とれてしまう。
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「あー、噂の転入生ってキミだったんだ!(BROKEN:8_20)
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「あっ……」
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こちらは随分とラフな格好――学園のジャージか何かだろうか。
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服装が違うので一瞬誰だったか思い出せなかったけれど、
頭にいる猫の姿を見てハッと気付く。
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学芸会か何かで来ていた女の子とじゃれてた人だ。
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御花会にいるということは……この人も巫女候補?
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「ヤヤは二年に在籍してる<RB='ねずややこ'>禰津八弥子<RB>。八弥子でも、ヤヤでも、
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「高遠鼎です。よろしくお願いします……八弥子先輩?」
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「んー、先輩は無し。八弥子でいいよ?(BROKEN:8_20)
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かなりフランクに、呼び捨てか否かを迫られてしまう。
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「じゃあ、八弥子さんでお願いします」
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「うん、よろしくね!(BROKEN:8_20)
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か、カナカナっ!?
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カナちゃんの愛称にも戸惑ったけど、それ以上に……斬新。
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それから最後に――。
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「すっかり溶け込んでいるみたいだね、鼎らしいよ」
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私服姿は本当に若い頃のお母さんに瓜二つの末来さん。
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その姿を見る度にどこか安堵してしまうけれど……
学園に入った以上は先輩なんだし、しっかりしないと。
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「末来さんではなくて、もう末来先輩ですよね」
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「先輩、か――不思議な気持ち。悪くないかも。
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「それなら……分かりました。じゃあ、末来さんで」
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今まで通り、末来さんという呼び方で問題は無さそう。
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「由布、いつまでも立っていないで着席なさい」
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遠山先輩が由布に隣の席をすすめる。
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「ありがとうございます――ほら、鼎と恵も」
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と、急かされて、私と恵は空いている椅子を見つけて着席する。
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「一通り、これで揃いましたかしら?」
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「――奈岐と真琴がいないね」
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「向山先輩はいつもの通り、おサボリだと思いますけど、
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「そう。それなら神住、進めてくれてもいいよ」
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遠山先輩が一度頷いた後、一同の顔を見渡す。
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「今日から高遠鼎さんが学園長の指示で新しく御花会に加わること(BROKEN:8_20)
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「先刻もお話ししましたように御花会とは、巫女を選抜して頂く
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(BROKEN:8_20)
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「詳しい内容は実際に活動する時にお話しするとして……
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一呼吸置いた後、遠山先輩の視線が私に向かう。
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昼間に感じていたものより、若干温度差があるような……?
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「さて、私は遠山の(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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「この島でいう(BROKEN:8_20)
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三輪さんは何となく分かってはいたけど、由布も(BROKEN:8_20)
名門みたいな出身なんだ……。
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遠山先輩に紹介された由布を見てみると、不意に視線が合う。
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どこか困ったようなそんな表情の後、すぐに目を逸らされる。
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「…………?」
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「今ここには不在ですが、中村さんの家は松籟会に連なる家柄よ。
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「禰津さんの家は、巫女候補どまりではあるものの、
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もう紹介というより、家柄の紹介になっている。
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それだけ巫女にとって家や血というものが大切なのかもしれない
けれど……。
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「ここにはいらっしゃっていない向山先輩は……巫女としては、
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「鬼子……?」
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聞き慣れない言葉に思わず首を傾けてしまう。
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「親に似ず生まれた子の俗称ですわ。鬼という文字が使われる
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「鬼……」
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確かにその文字には良いイメージは無い。
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真っ先に思い出すのは昼間に会った化け物のことだろうか。
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「織戸伏の子供には色素の薄い子が生まれるのですが、それを鬼子(BROKEN:8_20)
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「どうやら向山先輩にはその気がないようですので」
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中村さんに向山さん……まだ会ったこともない人だ。
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それにしても、鬼子か。なんだか重々しい言葉に聞こえる。
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「片倉先輩は学園長の櫻井家の分家である片倉家であり、
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「あとは保科さんの家ですが……」
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「神住先輩、保科さんは歴史も浅い上に分家です。
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「…………」
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「縁子、その辺りになさい。ごめんなさいね、保科さん」
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「い、いえ……気にしていませんからっ……」
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やっぱり家柄の力関係が顕著に思える。
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島から出られない呪い、その閉鎖的な空間が生み出した図式
なんだろうけれど……見ていてあまり気持ちがいいものじゃない。
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友達になった恵が俯いていく様子を見て、
何か言わなければと思った時、
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「家柄なんか関係ないよ。ボクは思う、キミたちがここで伸び伸び(BROKEN:8_20)
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「……片倉先輩はお優しいことで」
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そのまま縁子さんの冷たい視線が私へ向かう。
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「……ところで、高遠さんの家を調べさせて頂いたのですが、
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「このような形で巫女候補への参加――外から来た者とはいえ、
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「そういう話は全く分からなくて……
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「しかし、高遠という名は巫女の歴史に残っていません。
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名前が残っていない……?
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「まさか、口から出任せを?」
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「そ、そんなことっ……」
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でも、続く言葉に困って、視線を彷徨わせる。
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「んー……ヤヤ、こういう空気好きじゃないな」
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「根津先輩、巫女として選ばれるには、その力を認められること
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「その力は――血カラ、その名の通り血から与えられるもの。
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むー、と八弥子さんが唇を尖らせた。
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「いつも思うけどね、そういう考えって嫌い。
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「そう言っても過言ではないでしょう?(BROKEN:8_20)
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「んー、それって縁子がそう思ってるだけじゃないかな?」
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「……どういうことですか?」
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今度は八弥子さんと三輪さんの間の空気が重くなっていく。
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どうして……こんな方向に転がっているんだろう。
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「その辺りにしてください。私の身の上話でよければ、
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「お母さんなら……七年前から行方不明です。この島に戻ると
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切りが無い――そう思い、私は二人の間に入るように声をあげる。
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「そんなお母さんを探すために、この島に来ました。お母さんが
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「――鼎、もういいよ。全部言う必要なんて無い」
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末来さんの声が私の言葉を止める。
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「末来さん……?」
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「悪意は悪口を作る。悪意は穢れ。そして、悪意に満ちた巫女は
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「……悪意というわけではありません。ただ知るべき情報として」
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「それを知っても何かが変わるわけじゃない。違う?」
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静まりかえるテーブル。
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三輪さんはそれ以上何か言うつもりは無いのか、
そのまま口を閉ざしてしまう。
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「……高遠さん、不愉快な思いをさせていたら、ごめんなさいね」
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「いえ……」
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その後、今日はもうお開きにしましょうという遠山先輩の声を聞いて、私は急ぎ足で席を立っていた。
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「ちょっと、どこに行くの?」
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「ご、ごめん、ちょっと外の風に当たってくる」
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どうしても、もやもやとした気持ちが収まらなくて、
私は食堂を飛び出していた。
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seisai_no_resonance/sce02_00_05_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)