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seisai_no_resonance:sce01_00_05_0
末来さんに教えてもらった道路をまっすぐ北へ、北へ。
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そうして歩いて行くのはいいんだけれど……
学園があるわりには、学生らしき人の姿が見えない。
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通学には少し時間が早いのかな?
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せめて何時か分かればいいんだけど、携帯電話は海の底だろうし、腕時計は持ち合わせていない。
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「それにしても……学園って遠いんだなあ」
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港付近から、もう随分と歩いてきている。
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ひょっとして、通学用のバスとかがあったのかも?
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でも、バスがあったとしても……財布も海底だろうし、
こうして歩いている結果は変わらないかあ。
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それに、知らない土地はまず自分の足で歩いてみて、
どこに何があるかとか、距離感とかを知るのにもいい。
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気持ちを前向きに、とにかく歩こう。
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時折吹き付ける潮風に目を細めながら、北へ、ひたすら北へ。
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「ん……あれって、もしかして……」
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少しだけ足に疲労を感じてきた時、ようやく学園らしき建物が
見え始めた。
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目指す建物って見えてからが遠いんだけど、と内心で苦笑しつつもはやる気持ちからか、私は早足で歩き始める。
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「わぁ……」
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離島にある学園だから――と、偏見があったかもしれない。
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目前にまでやってきた学園は、洋風の豪奢な建築物で
思わず足を止めてしまうほどの佇まいだった。
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学園のパンフレットでいくつか写真を見たけれど、
やっぱり実物は違う。
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お嬢様学園――その雰囲気が滲み出るほど美しい外観だった。
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「そちらの方、少しよろしいですか?」
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校舎を眺めていると、年配の守衛さんに声をかけられる。
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「この学園は許可のある者しか立ち入りはなりません。
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「えっ……?(BROKEN:8_20)
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そういえば、今の私は私服姿……転入予定といっても、
守衛さんから見れば不審な人に見えるかもしれない。
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「えっと、私、この学園に転入予定の高遠鼎と申します」
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「おや……転入生の方でしたか。事務員に確認を取りますので
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「はい、ありがとうございます」
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と、名前だけで伝わってくれるといいんだけど……。
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今の私には身元を証明出来るものが何一つとしてない。
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守衛さんが携帯電話で事務の人と言葉を交わした後――。
どこか怪訝そうな顔で私に視線を移す。
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「もう一度、お名前を伺ってもよろしいですか?」
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「あ、はい、高遠鼎です。漢字で書くと、高いに遠いで高遠。
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「高遠さん、ですね?(BROKEN:8_20)
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まだ話の途中だったんだけど、名字だけで伝わるのかな?
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守衛さんが携帯電話を切ると、私に対して再び怪訝な顔を見せる。
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「申し訳ないですが、そのような話は伺っていないとのことです。(BROKEN:8_20)
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「えっ……?(BROKEN:8_20)
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「崎(BROKEN:8_20)
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守衛さんも怪訝な顔付きから、どこか困ったような表情に。
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転入許可証さえ無事だったら、すんなりと行ったはずなんだけど、でも……名前を伝えても通じないのはどういうことだろう?
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「おはようございます――何か問題ごとですか?」
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見覚えのある制服を着た女の子が校門の中から歩み出てきた。
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そして、どこか冷たい目で私と守衛さんを見比べている。
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さらりとした長い黒髪に白い帽子、それから少し気が強そうな瞳が印象的な女の子だった。
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「これは風間家の……転入予定という方がいらしたのですが、
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守衛さんが何故か女学生に指示を仰いでいるように見えた。
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立ち位置から考えても……普通は逆に思えるんだけど、
何か特別な女の子なんだろうか?
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「あなた、見ない顔ね。この島の生まれかしら?」
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気付くと、女の子が守衛さんから私に向かっていた。
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「お母さんがこの島の出身で……私は違うの、かな?」
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そういえば……どこで生んでくれたのか、
詳しく聞いたことが無かった。
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「違うのかな、って……この学園は織戸伏で生まれた子、
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「でも、私、転入届けは確かに受理されて……」
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「転入届け?(BROKEN:8_20)
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呆れたような、それから少しだけ苛立ったように女の子が言う。
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「えっと……それが……島に来る途中、海の底に沈んじゃって……(BROKEN:8_20)
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「…………」
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にわかに信じがたい話に彼女の目が半眼になっていく。
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「島に来る途中、海に沈んで無くす……?」
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「はぁ……常識だけじゃなくて、資質も含めて考えられないわね」
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「守衛さん、私見ですが、この子は南にある学園と
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「そのようですね。風間家の方が仰るなら、
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風間……さっきも聞こえた言葉だけど、
それがこの子の名字なのだろうか?
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それよりも、このままだと転入どころか、
この場から追い出されてしまいそうだ。
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「もう、由布ちゃーん、置いてかないでよー!」
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名前を呼ばれたらしく風間という子が振り返る。
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由布が名前だとしたら、この子の名前は<RB='かざまゆう'>風間由布<RB>……?(BROKEN:8_20)
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「ごめん、恵。ちょっと厄介事になってたみたいだから」
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後から来た眼鏡をかけた子は恵という名前らしい。
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風間由布という子とは正反対に、
見るからに柔和な雰囲気が滲み出ている。
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「ううん、私、ちょっと歩くの遅くて……それで、この人は?」
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「南にある学園と間違えた子みたいなの」
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うっ……場所を勘違いしてしまった子で話が進んでしまっている。
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「あのっ、私は本当にこの学園に転入する予定で」
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慌てて二人の会話に口を挟むが、どこか冷めた視線が返ってきた。
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「でも、それを証明出来るものはないんでしょ?
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「ちゃんと名前で調べてもらえれば……」
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そこまで言った時、ふと末来さんの顔が頭をよぎっていく。
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「そうだっ!(BROKEN:8_20)
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末来さんなら事情を知ってくれているはずだから、
きっと話も通じてくれる。
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そう思った時、風間由布という子の目つきが鋭くなった。
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「――あなた、人が穏便に済ませようとしてるのに、
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「ゆ、由布ちゃん、お、落ち着いてっ……」
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言葉尻が急に強くなったと思った時、彼女が私に詰め寄る。
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「尊敬する先輩を口実にいい加減なことを言わないで。
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「えっ……えっと……」
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既に怒ってる調子なんだけど……さ、さらに怒るんだろうか?
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「守衛さん、後は任せます――恵、行くわよ」
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黒髪を一度かきあげ、すたすたと早足で校門をくぐっていく。
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「ゆ、由布ちゃん、ちょっと待って!(BROKEN:8_20)
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恵という子がおろおろとしながらも、私に声をかけてくれる。
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「末来先輩は学園でもすごく特別だから、由布ちゃんも
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「恵、あんたが謝る必要なんてないから――行くわよ」
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「あっ、ゆ、由布ちゃん~っ」
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由布という子が早足で戻ってきて、眼鏡の子の手を引いて、
再び校門をくぐっていってしまった。
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その間、僅か数秒足らずで……私は呆気に取られていただけ。
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「って……そうだ、あの制服っ!!」
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私を船から突き落とした女の子も……
今の子達が着てた制服――同じ制服だ。
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崎(BROKEN:8_20)
末来さんが言ってたけど……どういうことなんだろう?
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「…………」
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守衛さんへ視線をやると――急に声をあげたからか、
やっぱり私を不審そうに見ていた。
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「せ、制服……か、可愛いですよね、あはは」
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「…………」
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く、苦しいっ。
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すぐさま、お騒がせしましたーっと頭を下げて、
今は校門前から立ち去ることにした。
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seisai_no_resonance/sce01_00_05_0.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)