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seisai_no_resonance:sce01_00_02_0
重たい足を引きずりながら海岸に戻ると、あの女の人がいた。
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何故か火を<RB='おこ'>熾<RB>して海岸で焚き火をしてる。
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「おかえり、鼎」
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ニコッと微笑んでくれるけど……笑顔が返せない。
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「どうしたの、鼎?」
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「それが……港に取りに行った鞄なんですけど……
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つまり今の私は無一文かつ連絡手段はおろか、
身元を証明出来るものも無い。
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「松籟会って人達が関わってるみたいなんですけど、
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まるで口止めされているかのように、松籟会のことになると、
お茶を濁されてしまった。
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「松籟会はこの島を取り仕切っている人達のこと。
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「鼎の鞄を破棄したのも、あの人達の仕業」
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あっさりと――その女の人が言ってしまう。
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「島の人達は松籟会を畏怖している。だから何も言えない」
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「そんなこと……私に教えても平気なんですか?」
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この人も島の人に見える。だとしたら、私を助けたことも、
松籟会について話したことも問題になる。
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「松籟会のこと、島にいればすぐに知る。だから平気」
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「すぐに知るって……でも、私を助けてくれたことも」
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「平気。あの人達とボクとは違うから」
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ぼく……?
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そう言った女の人を見て、少し呆気に取られる。
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自分のことをボクと呼ぶ女の人を見たのは、これで二人目。
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この女の人と、この人によく似た私のお母さん……。
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「あのっ、名前を聞いてもいいですか?」
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もしかして――そんな期待が胸を急かす。
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僅か数秒のことに過ぎないのに、その人の口を開く間が
とても長く感じられる。
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「片倉末来。崎(BROKEN:8_20)
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「…………」
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やっぱり違った。
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七年前にいなくなったお母さんがそのまま出てきたような……
そんな姿でも、やっぱりこの人は違う人なんだ。
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期待してしまった分だけ、落胆して肩を落としてしまう。
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「鼎……?」
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「あ、名乗り遅れましたっ!(BROKEN:8_20)
(BROKEN:8_20)
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ニコリと片倉さんが微笑んで頷いた。
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どうして私のことを知っているのか、それを含めて、
片倉さんとはもう少し話をした方が良さそうだ。
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片倉さんに誘われ、近くにあった流木に腰をかける。
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「さっき向こうから汲んできた川の水。
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「あ、ありがとうございます……」
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バケツの水とタオルを受け取って、
タオルを水に浸して、ぎゅっと絞る。
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濡れた清潔なタオルで顔を(BROKEN:8_20)
少し疲れが取れた気がした。
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「あの、片倉さん、いくつか聞いてもいいですか?」
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「末来でいい。堅苦しいのは嬉しくない」
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苦笑めいた笑みの後、訂正されてしまう。
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でも、いきなり年上の方を呼び捨てというのは気が引ける。
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「じゃあ、末来さん……でもいいですか?」
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「鼎がそう呼びたいなら」
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承諾してくれたという風に解釈して、私は話を切り出す。
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「どうして、私のことを知っていたんですか?」
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「鼎は有名人だよ、とても。松籟会とその動きに注視している人達(BROKEN:8_20)
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「有名人って……私、この島で何かした覚えなんてありません」
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禍々しいものとか言われ、いきなり海に落とされる理由なんて
思い浮かばない。
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「それはキミのお母さんが有名人だったから」
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「お母さん……?(BROKEN:8_20)
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「……鼎が島に来た時は助けるように彼女と約束してね」
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「えっ……」
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「彼女は稀代の巫女だった。誰も彼女には敵わなかった。
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ぽつりぽつりと語る末来さんの横顔がどこか寂しげに見えた。
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「もしかして、お母さんと……友達だったんですか?」
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「そうとも言えるし、違うとも言える――
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「…………」
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あまり抑揚をつけずに末来さんは語り終えて、
私の次の問いかけを待っている。
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「末来さん、私のお母さんは……生きているんですか?」
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「…………」
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「私はそれを確かめたくて……ううん、どうしても、
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末来さんは目を伏せた後、私に視線を向ける。
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その瞳は確かに私を映しているのに、どこか違うところを見ているような気がした。
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「鼎は本当にお母さんに会いたい?」
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「…………」
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逆に質問されるとは思っていなかったので、一瞬唖然とする。
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「そのために――私、そのためにこの島に来たんです」
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それでもはっきり告げると、何故か末来さんは目を伏せてしまう。
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私の言葉を重く受け止めてくれたようにも見え、
またどこか自分の迷いを隠すようにも見えた。
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「……鼎、キミのお母さんはこの島にいる」
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「えっ……」
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「もし本当に会いたいと思うなら、崎(BROKEN:8_20)
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「私が、巫女……に……?」
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「鼎にはその力もあるし、資質もある。あとは真実を見極めるだけ(BROKEN:8_20)
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崎(BROKEN:8_20)
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末来さんの言った事が本当で……お母さんがこの島にいるなら、
私の答えはもう決まっている気がした。
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でも、真実を見極めるってどういう意味なんだろう?
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「末来さん……?」
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ふと顔を上げると、末来さんが焚き火の火を大きくしている。
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気づかなかったけど、火の傍は串に刺した魚が
パチパチと音を立てて焼けていた。
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香ばしい匂いに、ついお腹が鳴りそうになる。
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「焼けた」
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笑顔で焼き魚を刺した串を差し出されて、
つい受け取ってしまった。
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「えっと……食べてもいいんですか?」
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「食べるといいよ。きっと……ううん、絶対に美味しい」
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こんがり焼けた魚と末来さんの顔を見比べて、一度頷いた。
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でも、その前に……。
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「末来さん、お母さんの話、もう少し聞かせてもらえませんか?(BROKEN:8_20)
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「鼎はお母さんのことが好き?」
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「はい、大好きです。ちょっと粗暴なところもありますけど、
(BROKEN:8_20)
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「そう、良かった」
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優しげに微笑んだ末来さんは、それから少しだけお母さんの話を
してくれた。
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今、食べている魚の取り方は、お母さんから教わったこととか、
お母さんとこうして一緒に話をしたこととか――。
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「末来さんはお母さんと……どうして知り合ったんですか?」
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「……ありていに言えば、運命かな」
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随分と大ざっぱなことを言われた気がする。
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「彼女が巫女になった後……ボクは彼女と出会って、
(BROKEN:8_20)
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「巫女……」
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再び出てきた巫女という言葉に反応してしまう。
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この島で行われるお祭りに参加する巫女――
伝承の火の玉が暴れ出さないように儀式に参加する。
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末来さんはお祭りの関係者なのだろうか?
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でも島を仕切っている松籟会の人とは関係なさそうだし……。
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「あの、変なこと聞いてもいいですか?」
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「うん、鼎になら」
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さっきから特別扱いを受けているけど、それは置いておいて。
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「末来さんって、いったいどういう人ですか?」
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「崎(BROKEN:8_20)
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定型句が返ってきた気がする。
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「えっと、お母さんが巫女の時に出会ったんですよね……?」
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「そう、彼女が巫女の時にボク達は出会った」
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と、あっさり頷かれてしまうが……
お母さんが巫女になった時って何年前だろう?
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末来さんが子供の時にお母さんと会っていたのかな?
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それでもまだ若すぎるような……うーん?
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「鼎、難しい顔をしている」
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クスッと末来さんが笑った声を聞いて我に返る。
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「あ、えっと……末来さん、おいくつなのかなって……」
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「女性に年齢は聞いてはいけない。でも、すぐに分かることだよ」
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内緒と唇に人差し指を当てた後、末来さんが立ち上がった。
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「すぐに……分かること?」
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「鼎、おいで。少し場所を変えよう」
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そして、手を差し出してくれる末来さんの顔を見つめる。
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目の前でお母さんそっくりの顔立ちが微笑む。
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「…………」
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「鼎?」
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その姿がまたお母さんと重なってしまい、慌てて頭を振るう。
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「な、なんでもないですっ!(BROKEN:8_20)
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「一緒に来れば分かるよ」
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私が末来さんの手を取ると、彼女はもう一度微笑んでそう言った。
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seisai_no_resonance/sce01_00_02_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)