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seisai_no_resonance:sce01_00_01_0
もうすっかり夜だった。
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少ない街灯に照らし出される港に人気は無い。
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私を乗せていた連絡船はとうの昔に着いていただろう。
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「えっと……この辺が船着き場だって教えてもらったんだけど」
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打ち寄せる波の音を聞きながら辺りを見渡す。
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やっぱり人気が無くて、ちょっとだけ心細い気がした。
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「港?(BROKEN:8_20)
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「案内してあげたいけど、やることがあるから。
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この場所を教えてくれたあの人……
不思議な雰囲気のある人だったなぁ。
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きっと船の上で見た人と同じだろうけれど、
どうして私を助けてくれたんだろう?
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それに私のことを知っている様子だったし……
でも、私はあの人のことを一つも知らない。
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「あと……突き落とされた理由もよく分かんない、かぁ」
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島に入れるわけにはいかない、禍々しいもの……とか何とか。
色々と言われた気がする。
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理由を話してくれないと何も分からないんだけど、
とてもそんな雰囲気じゃなかった。
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どこか切羽詰まったような感じ。
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あの後、無事に私が島へ来たことを知ったら、どうなるか、
想像するに容易い。
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「……お母さん、前途多難だよ」
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もしかしたら、お母さんも島へ戻る時に
何かあったのかもしれない。
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でも、お母さんなら……刀が出てこようが、
海に突き落とされようが、全然平気な気がする。
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私の中でお母さんのイメージはそんな人――
それにたぶん間違っていない。
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白刃取りとか本当にやりそうだから怖い。
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「あ、それよりも急がないと」
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港に来た理由は考え込むためじゃなくて、
もっと大切なことがあるんだった。
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駆け足で連絡船の事務所へ向かう。
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「夜分遅くにすみませんー」
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まだ明かりがついている事務所のドアをノックすると、
中から話し声が聞こえてくる。
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「それにしても、<RB='しょうらいかい'>松籟会<RB>の娘さんも恐ろしいことをするもんじゃ
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「お婆ちゃん、松籟会のことを軽々しく言うもんじゃないよ。
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男性の声が聞こえた後、事務所のドアが開かれた。
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「おや、君は……!」
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「お嬢ちゃん!?(BROKEN:8_20)
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船員さんと、甲板にいたお婆ちゃんが顔を見せる。
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「あはは、どうも……こんばんは」
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驚きつつ生きていたなんて言われるぐらいだから、
私が海に落とされた後、少し騒ぎになったのかもしれない。
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「無事で良かったのぅ……神様にお祈りしてみるもんじゃ。
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「はいはい、お婆ちゃん、それ以上は言わない約束」
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しょうらいかい……?(BROKEN:8_20)
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娘さんっていうのは、私を突き落としたあの子のことかな?
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「あの、その『しょうらいかい』っていうのは……?」
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「あ、ああー……い、いや、何のことかな?
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船員さんが慌てて取り繕った笑顔を浮かべる。
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「あ、はい、一緒に船に乗っていた女の人に助けてもらって」
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「そうか、それは良かった。それで何か用かな?」
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違和感を感じるぐらいに、船員さんが早口になっていた。
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その様子が気になるけど……今はもっと重要なことがある。
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「私の鞄、落とし物で届いていたりしませんか?」
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甲板で女の子に襲われた時、その場に残してきた鞄だ。
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転入届けはもちろんのこと、財布に着替えに携帯電話――
この島で生活するのに必要なものが全部詰め込まれている。
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「大きめのスポーツバッグで目立つと思うんですけど……」
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無くてはならない鞄を、港にまで取りに来たのがここにいる理由。
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でも――。
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「スポーツバッグ……?」
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船員さんの顔が傾いた時、とても――とっても嫌な予感がした。
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「と、届いて……ますよね?(BROKEN:8_20)
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「それにしても、松籟会の娘さんも恐ろしいことを――」
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お婆ちゃん、それ三回目。
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「ええと、私の……荷物は…………?」
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答えはもう見えている気がした。
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あぁ、目の前が真っ暗だ――。
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seisai_no_resonance/sce01_00_01_0.txt · Last modified: 2014/04/23 18:46 (external edit)