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sapphism_no_gensou:7999

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 満天の星の下でおこなわれた、ソフィア女史の授業は、アイーシャにとって興味ぶかいものだった。

 ところが、折悪く海上に立ちこめてきた濃霧に、たちまち星々はおおわれ、授業も途中で切り上げられてしまう。

 部屋へと向かう通路までが、なんだかしっとりと肌寒く、照明もぼんやりとモヤがかっているようだ。

 長い絨毯の上を、ひっそりと足をすべらせながら、アイーシャはさきほどの時間に思いをめぐらせた。

 天文学を専門とするソフィア女史だが、その晩、プールサイドで語られたテーマは、天にまたたく星ではなく、海上に輝く星、我らがハンギング・バスケット・ポーラースターの由来についてのものだった。

 今こうして、彼女たちのまなびやとなり、同時に寄宿舎となっているこの巨船は、正式にはポーラースターⅣ世という名を与えられており、初代ポーラースターの誕生は、西暦一八世紀にまでさかのぼることを、アイーシャはこの夜、はじめて知った。

 海洋実習船として、多くの女性船員を世に送りだした、先代のⅢ世。

 第二次世界大戦下に、特に女性のための難民船として活躍したⅡ世。

 そして……伝説の海賊船、H・B・ポーラースターⅠ世。

「海賊船」という、その粗野ながらもロマンティックな響きに、女生徒たちは深い感銘をおぼえた。

 いやが上にも期待は高まり、注目のⅠ世の逸話にさしかかったところで、突然、霧によって授業は中断となった。

sapphism_no_gensou/7999.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)