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sapphism_no_gensou:7103

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[Tenkyouin] あたしの仕掛けを甘く見てもらっちゃ困る。

[Tenkyouin] 無理に解析しようものなら、エアポートのメモリに仕掛けたトラップが発動する。

[Tenkyouin] つまり、ペットごと、BON! というわけだ。

[Tenkyouin] 仕掛けたあたしだって、このトラップをはずそうと思ったら、3日徹夜は覚悟して、成功確率は保証無しの50%ってとこだね。

[Tenkyouin] ふははははっ! この天京院鼎の仕事に手抜かりはなーい!

[Chloe] ………………。

[Eliza] どうやら、コーヒーが切れかけたいた時だったらしくて、多少言動は奇異でしたが、おっしゃることは本当のようですね。

[Chloe] 頭痛いわ……。

[Narration] 錯覚ではない本物の頭痛を感じて、クローエは額に手をついた。

[Chloe] ヘレナの方は、もう携帯が通じないし……。

[Narration] 何度か連絡を試み、空振りに終わった自分の携帯電話を、やや恨めしげに見る。

[Chloe] それで、これ、どうするの?

[Eliza] どうしましょう? とりあえず、お預かりしておいて、ヘレナ様がお戻りになられたらお返しするしかないんですが……。

[Chloe] ヘレナが戻ってくるまでのことよ。あの娘が帰ってきた時に、この中が空っぽになっていたら……。

[Eliza] すごい騒ぎになりそうですね。

[Chloe] 騒がしい上に、寝覚めが悪すぎるわ。どうしたら……。

[Narration] クローエが思案にふけろうとしたその時。ポケットエアポートのLEDが光り、電子音が鳴り響く。

[Chloe] 何事よ!

[Eliza] 食事の時間ではないかと。失礼します。

[Narration] イライザがテーブルの上からゲーム機をすくい上げ、慣れた手つきで操作する。やがて、電子音は途絶えた。

[Eliza] 一定時間ごとに、食事を与えないといけないんですよね。

[Chloe] 信号の塊の分際で……。どうにかならないの? このゲームを遊ぶ人誰もが、24時間、ゲーム機とにらめっこできるわけじゃないんでしょう?

[Eliza] ええ、ゲームの進行を止めたり、間隔をあけたり、そういった設定もできると聞いております。

[Chloe] できるならやってよ。そうよ、うるさいなら、止めておけばいいんだわ。

[Eliza] それが……。

[Narration] わずかに言いよどんだイライザの態度に、クローエは悪い予感というものをはっきりと知覚する。

[Eliza] そういう設定の変更には、本人と認証するためのパスワードが必要で……。

[Chloe] ああ、もう!

[Narration] クローエはやや乱暴に、ウェーブのついた髪をかきあげる。

[Chloe] それじゃあなに? 今日一日中、このゲーム機の前で、いつ鳴り響くかわからない電子音に備えていなければならないっていうの!?

[Eliza] あの、クローエ様、よろしければ私が預かっておきますので……。

[Chloe] あなたにだって仕事があるでしょうに、そんな無責任はごめんだわ。

[Chloe] どうしたら……。

[Narration] クローエが親指の爪を噛まんばかりに出口の見えない思考に沈み込み、イライザが、自分のスケジュール帳を元にゲーム機一つにかけられる手間を配分している、そこに。

[Anri] やあ!

[Narration] 悩みも迷いも煩いも感じられない、いらだたしいほどすがすがしい声がかけられた。

[Anri] ボクの愛しい子猫ちゃん達の中でも、とびきり大人びて午後のアンニュイな木陰が似合う二人がそろって、なんのおしゃべりをしているんだい?

[Eliza] あ……。

[Chloe] なるほど……。

[Narration] あらわれたその人物に、クローエとイライザは同時に、懸案ごとを放棄した視線を向けた。

[Anri] え? な、なに、二人とも。どうしたんだい?

[Chloe] いるじゃない、ここに。迷うのが馬鹿馬鹿しいほど、こんな問題には打ってつけの人が。

[Anri] ああっ! 『あんり』じゃないか!

[Chloe] そうよ。わかってるから、大声を出さないで。

[Anri] あれ? でも、ヘレナは確か、今日はロシアに戻っているんだよね?

[Chloe] 忘れていったのよ、早い話が。

[Anri] へぇ、ヘレナらしくもない。

[Chloe] 誰かさんが、いつまでもぐずっていたせいでしょ? おかげであの子が慌てて出発するはめになったんじゃないの?

[Anri] とは言ってもねぇ。あのヘレナの身体の柔らかさと言ったら! 特に胸なんて、いつまでもこのまま沈み込んでいたいと思わせるほどだもの。

[Anri] つい、本能が、いつまでもしがみついていろとボクを突き動かすんだよ。わかるだろう?

[Chloe] わかりたくもない!

[Eliza] クローエ様、話が少し、どうでもいい方向に行っています。

[Chloe] と、ともかく、あの子が忘れていったこれの面倒を見る人間が必要なのよ。

[Chloe] 責任の一端でも感じているなら、杏里、引き受けてくれるわよね?

[Anri] もちろんだよ! 任せておくれよ!

[Narration] 満面の笑顔に根拠のなさそうな自信を浮かべて答える杏里。それを見て、クローエとイライザは同時に、見えないようにため息をついた。

[Anri] ワーォ、懐かしいなぁ、久しぶりだよ、『あんり』に会うのは! 前の出会いが偶然なら、今日の出会いは運命だね!

[Anri] この前は一晩中、二人だけの時を過ごしたんだよね! 幾千、幾万もの言葉をかわしたものさ!

[Chloe] その一晩中のおかげで、ヘレナがどれだけ泣いたと思っているのよ。

[Eliza] ちなみに、その日、ニキ様が杏里様にデートをすっぽかされて、その後2週間、お部屋に閉じこもられました。

[Chloe] 最低ね……。

[Anri] あ、いや、その……。

sapphism_no_gensou/7103.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)