User Tools

Site Tools


sapphism_no_gensou:7022

Place translations on the >s

[Narration] 夜が明けて朝日のさしこむ頃になるとポーラースターは騒然となった。

[Narration] 船を運行する以外のあらゆる場所で電力が供給されなくなったのだ。

[Narration] すぐに非常用電源へと切り替えられたがこの貴重な電力が供給されるのは限られた施設だけ。

[Narration] しかもポーラースターは赤道直下を航行している。

[Narration] つまりこれがどういうことかというと……

[Nicolle] あち───ッ!うだる────ッ!焼け死ぬ─────ッ!

[Collone] ウォ〜ゥ……

[Nicolle] とても制服なんか着てられん!どうなってんだ、いったい!

[Eliza] 今はまだ32度ですから、ましな方ですわ。

[Eliza] 本日の最高気温は45度を上回ると予測されています。

[Eliza] 昼過ぎになると地獄でしょうね。特に湿気がこもる室内は。

[Nicolle] うっぎゃ───ッッッ!

[Nicolle] そんな……嘘だろ───ッ?どうすんだよ!

[Nicolle] ……にしたってさあ、またそんな暑苦しいカッコしてよく涼しい顔でいられるよ。

[Eliza] 鍛えてますから。

[Eliza] また夜になれば気温も───

[Anne Shirley] うーみーかーぜーのー

[Anne Shirley] 術ーっ!

[Eliza] きゃあっ!バンクロフト様! なにをなさいます!?

[Narration] イライザのスカートが高々とはねあがる。

[Nicolle] あっ!

[Nicolle] 今、なんか見えた!

[Nicolle] ガードルにぶらさげてたの、氷枕だろ! そうだろ!

[Eliza] なんのことでしょう?目の錯覚ですわ。

[Nicolle] ずるい!船倉からくすねてきやがったな!

[Anne Shirley] ひんやり……

[Narration] アンシャーリーがぴっとりとイライザにはりつく。

[Nicolle] あたしもひんやりプリーズ!

[Eliza] ああ、いけません!おやめになって!

[Narration] スカートにもぐりこもうとする二人を、必死にイライザが押しとどめていると、ふらふらとソヨンが歩いてくる。

[Eliza] あ、そ、ソヨン様!これは、その……

[Soyeon] おはよーございます……イライザさん……ニコル、アン……

[Soyeon] きょうちょっと……熱があるみたいで……授業をお休みするって先生に……

[Narration] 依然ふらふらしているソヨンの額にぽんと手が載せられる。

[Soyeon] クローエ先輩!?お、おはようございます!

[Soyeon] どうしたんですか?サウナで火事でも!?

[Chloe] 舌出して。

[Soyeon] え? は、はい。エ───

[Chloe] ……平熱よ?

[Chloe] 熱があるのはあなたじゃなくて、この船のほう。

[Soyeon] ほへ? なーんだ。

[Chloe] わたしの方はあいにく、ジムのシャワー室にいたんだけれど。熱湯が出てきて死ぬかと思ったわ。

[Chloe] どうなってるの? イライザ。あちこちで大変なことになってるわよ。

[Chloe] こんな全面的な空調の故障なんて初めてだわ……

[Chloe] こうなったら、わざわざ赤道直下を選ぶこともないでしょうに。どうして転進しないの?

[Eliza] それが……

[Narration] カラカランと注意をひく音が廊下に響きわたった。

[Narration] 手にベルを持ったヘレナが汗だくになって、せかせかと歩いている。

[Helena] 現在、校内放送は使用できません!校内放送は使用できません!

[Helena] 学生のみなさん、すぐに講堂に集合して!

[Helena] 学園長からお話しがあります!

[Narration] 講堂に集まった生徒たちに向かって、学園長は声をはりあげ、率直に告げた。

[Narration] 現在ポーラースターでは大規模なトラブルが発生し、各所で異常事態が多発している。

[Narration] しかも、あろうことに自動航行装置が解除不能となっており、操舵すら自由にならない。

[Narration] ただただ、太陽の照りつける赤道直下をひた走る、事実上の漂流状態であった。

[Principal] これがホントの漂流教室!なーんつってな! 笑え。

[Narration] 生徒が一様に沈黙しているなか、教職員がヒステリックな笑い声をたてる。

[Principal] 屋内での授業続行はもはや不可能。どうせそろそろ一区切りだったわけだし、ここで一足早い夏期休暇とする!

[Narration] 集まった少女たちから、喝采と喜びの声があがる。学園長はそれに手を振って応える。

[Principal] もちろん、すぐに帰省したい者たちもいるだろう!

[Principal] 無理だ! あきらめろ!

[Narration] 喝采は一転ブーイングになる。

[Principal] ……ああ五月蠅い五月蠅い!

[Principal] 連絡艇を出したくてもハッチが開かないんだから、しょーがないじゃん!

[Principal] どうしても帰りたい奴はビンづめにして放り出してやるから申し出ろ!

[Principal] それと、使用できる電力も限られている。万一の事態に備え、電化製品については一切使用を禁じる。

[Principal] 熱中症で倒れられてもかなわん。制服の着用義務も不問とする。すっ裸で歩いていてもかまわん。

[Principal] ああ、ただし教職員はだめだ。しめしがつかん。根性を見せろ!

[Narration] 壇の下に居並ぶ教職員はぐったりとうなだれた。

[Anri] な、なあ……かなえどこ行ったんやろ。部屋にもおらんかったんやけど……

[Narration] 学園長の話ののち、不安そうにたずねる杏里に、アルマは首をかしげた。

[Narration] 周囲の生徒たちも水着を着用したりタオル一枚になったりと限りなく軽装になっている。

[Narration] ポーラースターはサッフォーの望んだ美少女たちの楽園にまた一段と近づいた。

[Narration] これを影で喜んでいた存在があるとは少女たちは知るよしもなかった。

[Alma] 朝礼にいらっしゃらないのはいつもなのですけれど……部屋にもですか?

[Anri] うん……どうしたんやろ。

[Aisha] そういえば……フォックス先生も講堂に見えなかった。

[Alma] 一緒に捜してみましょう。杏里様。

[Anri] うん! おーきに!

[Aisha] ねえ杏里……暑くないの?

[Anri] え? アハハハハ!

[Narration] 杏里はにこやかに首をふった。

[Anri] いややわー、こんなん京都やったら暑いうちに入らへんよ!

[Anri] 夏暑く、冬寒い!それが京都や!

[Coe] えーい! シュート!

[Anri] わっ!

[Alma] きゃっ!びっくりした……

[Narration] 杏里たちに勢いよく水鉄砲が浴びせられる。

[Clare] ほらー、杏里ちゃんもがまんしないで脱げばー?

[Anri] …………

[Narration] 水に濡れた服を見つめて杏里は沈黙してしまった。

[Clare] ……あれ?

[Clare] 怒ったのかな……?

[Mirriela] だから、やめようって言ったんだっ

[Aisha] ……杏里?

[Narration] アイーシャは、微妙な表情を浮かべる杏里にそっとささやきかけた。

[Narration] 間もなく杏里はコーたちに笑いかける。

[Narration] しかも自分から噴水に飛び込んでビジターズに水を浴びせかけはじめる。

[Anri] アハハハハ!しかえしや!

[Clare] やったな!

[Coe] えいえい!

[Mirriela] ……もう!船から降りられなくなったってのに!

[Clare] そうよ!とっても素敵なバカンスよ!

[Narration] はしゃぎながら噴水をかけまわるビジターズと杏里。

[Narration] アルマは不思議そうな顔をしてアイーシャに訊ねた。

[Alma] アイーシャさん?杏里様になんと言われたのですか……?

[Aisha] ……ええ。

[Aisha] 「……大丈夫。ただの水だもの」って。

[Alma] ……? お水……ですか?

[Narration] 結局よくわからずにアルマは首をかしげたまま。

[Narration] はしゃぐ杏里たちを眺めアイーシャは微笑んだ。

sapphism_no_gensou/7022.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)