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sapphism_no_gensou:7016

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[Narration] 一方、その頃───ブリッジでは。

[Narration] 学園長けーこちゃんの手に校章の入った無線マイクがにぎりしめられている。

[Principal] 『あーあー そこの中途半端に金持ちっぽい 帆船に告ぐ』

[Principal] 『こちらはギリシア船籍の学園船 ハンギングバスケットポーラースター』

[Principal] 『この航路は一応うちらが 先約済みなんだがね』

[Principal] 『このまま行くと、衝突しちゃうよ? まあ、こっちは別に構わないんだけどさ』

[Principal] 『……は、何?』

[Principal] 『……黙れ? すっこんでろ?』

[Principal] 『……あー、あんたたちアレか?』

[Principal] 『もしかしてシージャックさん? あー、そーなの。ふーん』

[Narration] ───その通りだ! 船客らの命が惜しければ大人しくこちらの要求を───と、がなりたてている通信機を有無を言わさず切る。

[Principal] さて……(ぱんぱん)

[Principal] 向こうがどくつもりがないならこっちが避けないといけないわけだが……

[Narration] 学園長は、顎に手をあてて困ったようなフリをするが、その口元はニヤけきっている。

[Principal] いやー、こりゃ仕方ないなーちょっとナンだけどアレだよ、アレを使うしかないよなー、うん。いひひひひひひ。

[Narration] と笑いながらアナクロな伝声管のフタをはねあげる。

[Principal] 『機関部? あたしだ』

[Principal] 『ジャイロ・オフ。 スタビライザー収納 スラスタならびにショッテルハッチ全開。 アンチタンクに急速注水』

[Principal] 『いや、マジでマジで。 何言ってんだい、 あたしゃ神様だよ』

[Narration] わめき散らしている伝声管をパンと閉じてしまう。

[Principal] よーし、いくよー

[Eliza] あら……

[Helena] え……?なに……?

[Narration] カタ……カタカタ…………

[Chloe] …………

[Chloe] ……図書室で騒いじゃだめよ、杏里。

[Narration] カタカタカタ…………

[Chloe] ………杏里?……ちがうの……?

[Chloe] ああ……地震か………

[Chloe] なわけないでしょう。どういうことよ?

[Narration] カタカタ……ガタガタガタガタガタ!

[Narration] バサバサバサバサ───真顔で立ち上がったクローエに棚からこぼれた本が降りかかる。

[Chloe] これって───

[Chloe] まさかアレを───?本気なの学園長!?

[Chloe] そんな、洒落でつけた機構を───わあっ!

[Principal] ふっふっふっふ───

[Principal] 今こそ見せよう!ポーラースター7つの大技……

[Principal] 其の壱『一輪ドリフト』!

[Principal] 使用許可願います!

[Principal] うむ! 自分で承認!

[Principal] うりゃあああああッ!

[Narration] ガラガラララララララララ!

[Narration] アンシャーリーにくっついて甲板をとことこ歩いていた杏里もその異変に気がついた。

[Anri] なあ、アン?この船、傾いてるんちゃう?それになんか───

[Narration] そう言われるがいなやアンシャーリーはパッとしゃがみ熱い甲板に耳をつけた。

[Anri] アン?

[Narration] 杏里もアンシャーリーを見習って耳をつける。

[Anri] なんや聞こるよ?ゴゴゴゴ……って。

[Anne Shirley] 地球が悲鳴をあげてるぜ。バトルでフィーバー。

[Narration] ドーン!

[Anri] ひゃあッ!

[Narration] 衝撃と共に浮き上がった二人はごろごろと甲板を転がった。

[Narration] さらに突き上げるような衝撃が襲う。

[Narration] ドーン!

[Narration] ドドドドドン!

[Narration] ドド───ン!

[Anri] きゃあッアンシャーリー!

[Anne Shirley] あたしはアンシャーリーではない!お姉さんと呼べ!

[Anri] 助けてぇッ!お姉さーんッ!

[Anne Shirley] 可愛いわ杏里ちゃん!

[Narration] 転がり続ける杏里の体が手すりに激突する瞬間、アンがキッと虚空をにらむ。

[Narration] びしっとサスペンダーが張り、見えぬ何かに吊られるようにして杏里は宙に静止した。

[Anne Shirley] そのままだ! 離したら殺す!

[Anne Shirley] そして谷底へ。あ〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜

[Narration] アンシャーリーはそのままごろごろと手すりをのりこえて落ちた。

[Anri] お姉さーんッ!

[Narration] 激しい震動がおさまり再び甲板に立てるようになると杏里は手すりに駆けよった。

[Anri] ……!

[Narration] 杏里は息を呑んだ。海面は高波が砕けて、泡立ち、真っ白になっている。

[Narration] そのただ中に、見覚えのある純白の帆船が転覆していた。教室から見たあの帆船だった。

[Narration] アンの制服姿はどこにもない。

[Narration] ポーラースターも、進行方向から船尾を大きくずらし、斜めになった形でいまだゆっくりと動いていた。

[Narration] わずかな傾斜は徐々に水平を取り戻しつつある。

[Anri] ア……

[Anri] アンシャーリ─────────!

[Narration] 遙か海面に向かって、杏里は叫んだ。

[Anri] うう……アンが、アンがっ!

[Anri] ……え?

[Narration] ぶつぶつ……仕方ねえな……と、低いつぶやきが耳のそばをゆきすぎる。

[Narration] しかし見回してもそこには誰の姿もない……

[Narration] 程なくして、少女の姿が海面にぷかりと大の字になって浮かび上がった。

[Anri] アン!

[Narration] 海面にたゆたう赤毛はまちがいなくアンーシャーリーだ。

[Anne Shirley] ………………ふふ……

[Anne Shirley] ふふふ……杏里ちゃんたら……お姉さんと……呼び…………がく。

[Narration] 帆船のまわりにも助けを求める乗客たちが現れだした。

[Narration] ポーラースターの船腹が開き、多数の救命艇がダイバーと共に、海に投下される。

[Narration] アンシャーリーはすぐに救命艇に救助された。

[Narration] 船員があわただしく走り回るなか、甲板は野次馬の生徒たちでいっぱいになった。

[Narration] そんな中、救命艇から手を振る小さな人影がある。

[Unknown] オーイ!

[Unknown] ウワーイ、キャッホー!ポーラースターだー!

[Unknown] ふぅー、助かったあ……!

[Anri] ……あれれ?クレア!? コー!?

[Aisha] ミリエラもいる……あそこよ……

[Narration] ハッと振り返った杏里にアイーシャは、横転した船の一角を指さしてみせた。

[Narration] 確かにミリエラだった。マストにしがみついて、こちらを呆然と見上げている。

[Anri] ほんまや!オーイ! オーイ!

[Anri] クレアー! ミリエラー!コー!

[Narration] 甲板から夢中で手を振っている少女をクレアたちは不思議そうに見上げた。

[Clare] 誰……あれ?ビジターはみんな船を降りたよね?

[Coe] コーは知らないよ?

[Mirriela] あ……あれって……杏里先輩ぃ……いい?

[Clare] やったなー、それっ!

[Anri] アハハハ!負けへんよ! 待ち───っ!

[Mirriela] あ、あああ、杏里ちゃん……走ると危ないから……

[Coe] バシャバシャいやぁ!

[Narration] 人工の滝の作る音にも負けじと少女たちの歓声がプールに響く。

[Narration] 夏の日差しを受けて、水着姿がまぶしく輝いていた。

[Aisha] それで……人的被害は無かったんですか?

[Eliza] ええ。全員軽傷です。

[Eliza] ……シージャック犯がボコボコにぶん殴られたぶんをのぞけば、ですけれど。

[Eliza] 転落したバンクロフト様も御無事でしたしね。

[Aisha] 学園長は本当に荒っぽいんですね。

[Eliza] ポーラースターの航路を横切って……大破・炎上・沈没しなかっただけでも奇跡と思われます。

[Aisha] あちらの男性方は……?

[Eliza] ええ、そこは大問題になりました。指導部は猛反対しましたが、結局、学園長の判断でポーラースターに一時乗船していただくことに。

[Aisha] それじゃ……!

[Aisha] ついにこの船に、男性が足を踏み入れて……?

[Narration] イライザはまぶたを伏せて首を振った。

[Eliza] ところが、先にあちらの方から申し出がありまして……

[Eliza] ポーラースターに乗り合わせるくらいなら捕縛した犯人たちと一緒に救命ボートに残るほうが遙かにマシだと……

[Eliza] 男性客たちも強引に同意させられて、今ごろは救助艇が到着しているころでしょう。

[Aisha] ……私たち、シージャック犯より怖れられてるんですか?

[Narration] イライザは肩をすくめた。

[Eliza] そのようです。学園長もおおいに憤慨されてました。

[Aisha] ふふっ。

[Aisha] でもビジターさんたちの一家も乗っていらしたなんて、ほんとに偶然ですよね。

[Eliza] それがどうやら偶然ではないようですよ。

[Eliza] 三人とも、バカンス先で落ち合えるように示し合わせて───

[Eliza] しかも、すこしでもポーラースターに近い航路を走る客船を選んだそうですから。

[Aisha] この船が忘れられなかった……

[Eliza] ええ。それと、トラブルメーカーの誰かさんのことが───

[Eliza] あいにくその方は、不在でしたけれどよい遊び仲間は、見つけられたようです。

[Narration] アイーシャはくすくすと微笑み、騒がしいプールへと視線を向けた。

[Clare] 目標変更!アルマ先輩を攻撃せよ!

[Anri] ラジャー!そぉれっ!

[Alma] きゃっ!いやッ、おやめください!

[Alma] 水着が濡れてしまいますわ!?

[Clare] あたりまえよ!

[Anri] なにいうてはるのアルマ!眺めてばっかりやったらおもんないやろ!

[Anri] わあっぷ!

[Clare] あれ? 杏里ちゃん?うひゃっ!

[Narration] 水中からジト目のコーが顔を出す。

[Coe] けほッ、けほけほッ!

[Coe] ううう……やめてっておねがいしたのにぃ!しかえしだよぉ!

[Alma] まあ、杏里様ったらうふふ、うふふふ……あら? 

きゃ……きゃああっ!

[Anri] あ、間違ごうた!かんにんえ!

[Mirriela] あ……杏里ちゃん……!

[Mirriela] 肩ヒモが……あっ……あっ……

[Narration] 見ると杏里の水着がずれて、乳房が半分ほどのぞいている。

[Anri] お?

[Anri] ああん、かまへんよ!女同士やん!

[Mirriela] で、でもさ……ほら……今やってあげるから……

[Clare] なに二人でラーブラブしてるのよう!ミリエラもえいっ!

[Mirriela] ……っ

[Mirriela] ぎゃああああああっ!

[Narration] 背後にまわったクレアに、ミリエラはワンピースを肩から引きずり降ろされた。

[Narration] すっぱだかになったミリエラは真っ赤になって水中にしゃがみこんだ。

[Mirriela] なっ……なにすんだバカァ!あ、杏里先輩の前で……っ!

[Clare] 杏里先輩じゃないもん杏里ちゃんだもーん!

[Mirriela] ゆ……許さない……

[Mirriela] 殺す!

[Clare] きゃあ───ッミリエラが怒ったぁ!

[Anri] 怒ったぁ!

[Coe] こ、コーはやぁよ! やぁだからね!やぁなのに、きゃあー! 

いやぁー!

[Alma] けほっ、けほっ……

[Alma] はぁ……水遊びってこれほど危険なものだったのですね……

[Alma] お父様の言い伝えは正しかったのですわ……え? なんですの?みなさん裸になられて……

[Alma] まあ、おやめになってください!きゃあっ! 

ひゃあっ!がぼがぼがぼ……

[Narration] それまでクラゲのように水面を漂っていた赤毛頭がぷかりと浮かびあがる。

[Anne Shirley] ……溺れん坊将軍。

[Anne Shirley] ……溺れるものは久しからず。

[Anne Shirley] はじめまして、ボク土左衛門です。

[Eliza] ……みなさん楽しそう。

[Aisha] あの……イライザさん……

[Aisha] つかみ合いの喧嘩になってるみたいです……どうしよう……

[Eliza] あら……?

[Eliza] あ、本当。大変ですね。まあ、アルマ様まで?

[Eliza] ああっ……痛そう……ミリエラ様のナマアシソバットがもろに後頭部に……

[Eliza] まあまあ、コー様ったら、水泳帽は反則ですわ……

[Eliza] さて……せっかくのバカンスが血塗られないうちに止めてきましょうか。

[Eliza] ……って、あら?アイーシャ様?アイーシャ様ー?

[Eliza] ───逃げた!?

sapphism_no_gensou/7016.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)