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sapphism_no_gensou:7011

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[Tenkyouin] ───あたしの名は、天京院鼎。

[Tenkyouin] 名前はなんて読むのかだって?なんだ、もう忘れたのか。

[Tenkyouin] あたしの名前は「かなえ」だ。てんきょういん・かなえ。

[Tenkyouin] さてご承知の通り、あたしは杏里に惚れている。

[Tenkyouin] そりゃもう、ベッタベッタに。メッタメッタのギットギットに。

[Tenkyouin] 杏里がオカズならコーヒー10杯はかたい。

[Tenkyouin] 杏里……

[Tenkyouin] (ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク)

[Tenkyouin] ぷはぁ! 夏はアイスでガブ飲み!

[Tenkyouin] ……そんなあたしは、年下にしか興味がないあいつを、どーにかして振り返らせようと、思いつくかぎりの手を尽くしてきた。

[Tenkyouin] しかし今日、ここに、この、決定的、革命的、終局発明をもって完全なる終止符をうちたい!

[Tenkyouin] ていうか打つ! バビッと!

[Tenkyouin] この際、以前も失敗したなんてツッコミは、恋する乙女の耳には届かない。

[Tenkyouin] 努力は成功の母、困難は成功の父である。

[Tenkyouin] ……ちゃんと家族計画すれ。

[Tenkyouin] とにかくこれだ───天京院式「DNAミキサー」!

[Narration] 部屋の中央には電話ボックスほどもあるただひたすら巨大なミキサーが、デンと構えている。

[Tenkyouin] 何を隠そうこのマシンはバルブ内に満たされた酸素飽和液中の無数の微少機械がDNAを解析しテロメア構造を逆転させつつ成長細胞へ電気刺激と再複製をうながし……

[Tenkyouin] つまり!早い話、若返りマッスィーン!あたしって天才! ステキッ!

[Tenkyouin] しかも記憶はきちんと残るというスグレモノ。

[Tenkyouin] これさえあれば、あたしも杏里の年下!ちょっと知的なクールビューティー!

[Tenkyouin] フフフ……いざ分け入らん、甘く優しき子猫ちゃんの森へ!

[Tenkyouin] とうっ!

[Narration] 天京院はバッと着衣をはだけると、巨大ミキサーに満たされた液体にとっぷりとつかった。

[Tenkyouin] ……ひゃっ……!ちべたい…………

[Tenkyouin] しまった……余熱しときゃよかったよ…………………っ……

[Tenkyouin] くぅっ……ややっ……お、おなか……っ…………き、きた……きたきたっ……

[Tenkyouin] あたしとしたことが……徹夜徹夜で忘れてた…………うう……おしっこ……

[Narration] 巨大ミキサーにつかり、両手でへりにつかまった天京院は、揃えたヒザをしきりにモジモジさせている。

[Tenkyouin] ど、どうするさ……このまま……しちゃっても……理論的にはなんら問題ない……が……

[Tenkyouin] ううぅぅ……

[Narration] いちめんの菜の花、いちめんの菜の花いちめんの菜の花…………

[Tenkyouin] 杏里〜〜〜〜

[Tenkyouin] 杏里〜〜〜〜〜〜

[Anri] む!

[Anri] ボクの名をささやく杏里適齢期な子猫ちゃん!きみはいったい!?

[Tenkyouin] クスッ

[Tenkyouin] ホラ、あたし、鼎よ。杏里のために生まれ変わったの!

[Anri] ええっ、かなえさんかい!?

いや、かなえちゃん!?

[Anri] ああなんてラヴリイなんだ!ボクの愛しい子猫ちゃん!

[Tenkyouin] 杏里!(ひしっ)

[Anri] かなえちゃん!(ひししっ)

[Anri] ……あれ?なんだか香ばしいような、すっぱいような、変な匂いが。

[Tenkyouin] ギークーゥーゥー

[Anri] まるでコーヒーを飲み過ぎた時のおしっこみたいだ!

[Tenkyouin] ガーン!

[Anri] そんな……コーヒーを飲み過ぎた時のおしっこみたいな匂いの子猫ちゃんは、ボクの趣味じゃないなぁ。

[Tenkyouin] ガガガ、ガ───

[Tenkyouin] ン…………

[Tenkyouin] ───なんて。杏里みたいにくだらん妄想にふけってる場合じゃない……ううっ!

[Tenkyouin] 技術的措置により一時停止だ!

[Tenkyouin] (も……もれるもれる)

[Narration] 天京院はタオルを巻きつけるとあわてて洗面所へ急行した。

[Anri] おっはよーかなえさん、ボクだよ!パンナコッタだよ!

[Anri] パンナコッタって誰?

[Anri] ああ、暑っ−い!甲板はまるでフライパンだよ!

[Anri] なんだって8月になるとポーラースターは赤道直下ばかりをひた走るのさ?

[Anri] 地球一周でもする気なのかな?ね、かなえさん。ん……?

[Anri] なんだか香ばしいような、すっぱいような……

[Anri] コーヒーを飲み過ぎた時のおしっこみたいな、ナイススメル!

[Anri] ……いや、こんな事言ってるとかなえさんに変態と思われちゃう。

[Anri] ───って、おお!

[Anri] これは……ミキサー型おふろ!?

[Anri] しばらく誰にも逢わず閉じこもっていたと思ったらこんなものを!

[Anri] すごいや、かなえさん!まさしく近代発明史に残る傑作だね!

[Anri] しかも水風呂だなんて! ワオ!気がきく! さっそくいただくよ!

[Tenkyouin] む〜、やれやれ……たかが利尿作用ごときに敗北するとは……あれ?

[Anri] (ぱくぱくぱくぱく)

[Narration] ミキサーのバルブの中から杏里がにこやかに手を振っている。

[Tenkyouin] あん……り……?あ、あああ、杏里!?

[Tenkyouin] こ……コラッ!!すぐにそこから出るんだ!

[Anri] (ぱくぱくぱくぱく)

[Tenkyouin] ちがう!このスイッチはお湯加減の調節じゃない!

[Anri] (ぱくぱくぱくぱく?)

[Tenkyouin] あたしも一緒に入れば?それじゃ意味がないんだって!ぜんぜん!

[Anri] (ぱくぱくぱくぱく!)

[Tenkyouin] このプロセスは始まったら途中では止められないんだぞ!開閉弁が閉じる前に───

[Tenkyouin] って、もう閉じてるしっっ!!

[Tenkyouin] ああ……なんて、なんてことだ!

[Tenkyouin] ……杏里! 杏里ィッ!

[Narration] 液体がさかんに泡立ちはじめる。

[Narration] バルブごしに天京院と掌を合わせていた杏里の驚き顔が、泡の中へと消えていく。

[Narration] 巨大ミキサーは唸りを立て、バチバチと放電を開始する。

[Narration] 猛烈に震動し閃光を放つミキサーの前にタオル姿のまま天京院はへたりこんだ。

[Eliza] 天京院様!船内各所で停電が!いったい何を……

[Eliza] きゃあっ!

[Narration] ノックも忘れて飛び込んできたイライザは、へたりこむシルエットの向こうで、轟音を立てる装置に恐怖した。

[Eliza] 杏里様っ……?

[Narration] イライザは、光のうずの中に、一瞬、ただよう杏里の姿を垣間見た。

サフィズムの舷窓 追加シナリオ

『ひと夏の蜃気楼』

sapphism_no_gensou/7011.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)