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sapphism_no_gensou:7002

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[Nicolle] 狙ってポン!第2回・杏里で垂直ダーツ大会〜っ♪

[Soyeon] わっ、わ───っ

[Narration] ソヨンはニコルにこづかれて、手に持つ鈴をシャラシャラ♪と振り鳴らした。

[Soyeon] い、いいのかなぁ?

[Anri] ねえ、ふたりともー。図書館では静かにしようよー。

[Nicolle] おお……そのセリフ、誰かさんに聞かせてあげたい。

[Soyeon] でも本当にもう少し静かにしよう?ニコル。

[Nicolle] いーのいーの。

[Nicolle] クローエだって「愛しいアンリエットのためなら許可するわ」って、頬を染めて言ってたもの。

[Soyeon] さすがです!

[Soyeon] ありがとうございますっ!クローエ先輩!

[Chloe] 許可してないッ!

[Soyeon] あの、でも……いつのまに第2回に?

[Nicolle] うん。前は「お菓子の落とし喰い大会」だったけど。ありゃ面白かった。

[Anri] ボク、そんなことしないよォー。

[Nicolle] したっての。2階からコーラ飲んだのは、あんたがはじめてだって。

[Nicolle] はいはい、それよりご覧くださーい。

[Nicolle] 子猫ちゃんからご提供いただいた、重量感あふれる品物の数々!

[Nicolle] 加速する愛の衝撃は、杏里・アンリエットの失われた記憶を、みごと取り戻せるのでしょうか?さあ投票を締め切ります。ファイナルアンサー?

[Soyeon] また賭けてる。

[Anri] あのう、本当にボクはここに座っているだけでいいの?

[Soyeon] はい。ヘタに動くと生命の危機というか……

[Anri] てゆーか、椅子にがんじがらめで動けないけどね。あはははは。

[Anri] あ、猫さんパンツ。

[Soyeon] あっ、上向いたらダメですっ!

[Nicolle] さあまずは第一弾!

[Soyeon] ハイ、いきます!

[Soyeon] ───えいっ。

[Narration] 手すりから身を乗り出したソヨンが、品物からおそるおそる手を離す。

[Narration] 白い球体が杏里の頭に当たって、コツーンとはねかえる。

[Nicolle] なにさ、あれ。

[Soyeon] ピンポン玉です!どうですか、杏里さん!

[Anri] えー? もう始めていいよ?

[Nicolle] 気づいてないじゃないか。

[Soyeon] じゃ、じゃあ次ですよ!えいっ! やわらかムートンまくらです!

[Narration] クッションが命中し、ボヨーンとはねかえった。

[Soyeon] どんどんいきます!

[Soyeon] やっ! やっ、やっ!

[Narration] ソヨンは次々と品物を落とした。ポプリ、

羽ぼうき、

ハンカチ、

軟式テニスボール、

毛糸玉、

紙風船……

[Soyeon] ど、どうですか?何か思いだしてきましたか?

[Anri] おつむがぽふぽふして気持ちいいよー。

[Soyeon] ぜ、全然効いてない……っ?

[Narration] 泣きそうな顔でソヨンがニコルを見る。その頭をパーンとスリッパで殴るニコル。

[Soyeon] い、痛いでふ!

[Nicolle] そりゃそーだろっ!せめてこのくらいでやんなきゃ!

[Soyeon] ふぁ、ふぁあい。

[Nicolle] だいたい記憶を失うほどの衝撃だぞ?それも、あの石頭の杏里がだよ?

[Soyeon] でも痛いですよぅ!?

[Nicolle] ……っ。ああもーっ。そんな顔しなさんなって!

[Nicolle] ノープロブレム!杏里の頭は、海賊と衝角戦できるくらい頑丈なんだから!

[Soyeon] ら、衝角戦(ラム戦)……

[Narration] ソヨンの脳裏には、ポーラースター号の船首にとりついた杏里が「ごぉーっ」と唸りながら、海賊に向かう姿が浮かんだ。

[Principal] 衝角戦用ー意!

[Anri] アイアイサー!

[Principal] 返事はヨーソローだ!

[Anri] ヨーソロー!

[Anri] ごぉーっ

[Soyeon] ………………

[Nicolle] そうだな〜まずはこのあたりから挑戦するか。

[Soyeon] ええ、そんな……

[Nicolle] ダイジョブダイジョブー。いっくよー、杏里。

[Anri] 何だかわからないけど、どうぞー。

[Narration] ひゅーっごわーん

[Anri] あだーっ!

[Nicolle] 命中!いい音したね。

[Anri] なんだい、これ?ステンレスのボウル?

[Nicolle] ご名答〜。提供はイライザ・ランカスター嬢でした。

[Anri] ひどいよー、ジラルドさん!

[Nicolle] ジ、ジラルドさんッ!?(裏声)

[Nicolle] うぞぞぞぞぞぞぞぞ〜ッ

[Nicolle] ぞくぞくするッ。

[Nicolle] うっひぃッ! もっと強いので攻めなきゃ。ソヨン! どんどん持ってきてよ!

[Soyeon] しくしく……自分の切り出したことと申せども……本当にごめんなさい杏里さん。

[Nicolle] お次はアルマ提供“9番アイアン”。ウワーオ、これは強烈。

[Nicolle] ほりっ。

[Narration] ッカァ───ン!

[Nicolle] ん? いい音?

[Nicolle] ───あ、こらっ! 杏里!ボウルかぶるなよ!

[Narration] 杏里はまだびりびりと震えているボウルを床に落とした。

[Anri] こ、鼓膜が……っ、

[Nicolle] もっと重いのちょーだいっ

[Soyeon] ん〜〜ッッッッは、はいっ!

[Nicolle] うは、重ーっ!く、クローエ提供“サンドバッ───

[Anri] ぐえーっ!

[Soyeon] これは軽いです。はいっ!

[Nicolle] アンシャーリー提供“スライム”!

[Anri] うわあ、ベトベトするよ〜〜っ

[Soyeon] はいっ

[Soyeon] ───ってそれダメーっ!

[Nicolle] アンシャーリー提供“ヤーン”?ほりゃっ。

[Narration] フギャーッ

[Anri] うわっ、猫が猫が!いだだだだだ!

[Nicolle] ニキ提供“コローネ”

[Nicolle] え? コロ?

[Collone] ワゥ?

[Narration] ワゥ──────ッ!

[Anri] 犬が犬が!

[Soyeon] ハァ……ハァ……

[Nicolle] どうだーい、杏里?

[Anri] ふ……ふぁうぁぁ……あたまクラクラらよ……

[Anri] でも……ぼんやりとだけど……去りし日の思い出が、まるで走馬燈のように……

[Nicolle] ホント?どんなんどんなん!?

[Anri] ウン……たしかボクは、この船に入学して……それで……うわわっ、スライムが服に入ってきたよ!

[Soyeon] それで?誰に逢われたんですか?

[Anri] え、えっと最初に逢ったのは……たしか長い銀色の髪をした……目のさめるような可憐な少女がボクの隣りに……

[Nicolle] そんなコいたっけ?

[Soyeon] ええ? ヘレナ先輩でしょう!

[Nicolle] あ……ああ!

[Helena] ……っくしゅん!

[Helena] うう……寒気がするわ……

[Nicolle] ということは、記憶が戻ってきた!?

[Anri] …………だめだ。それ以上、思い出せない……彼女の名前……名前は……

[Nicolle] よーしもう一息だぜ! ソヨン!

[Soyeon] う、うんっ!じゃあ船倉から運んできたとっておきのを!

[Nicolle] …………………………うわ。

[Narration] 通用口から、巨大な円筒形の物体が姿を現す。

[Nicolle] ビ、ビジターズ3人まとめて漬け込めそうな大がめが、まるでロードローラーのように、ンゴロンゴロと───

[Soyeon] んん……んしょ……ん……しょっ……我が家に伝わる十年ものの“ハンアリ”ですっ……

[Nicolle] ちょ、ちょっとソヨン?それは、何トンあるわけ?中身つまってんの?

[Soyeon] んーしょっ、んんんしょっ!

[Nicolle] ちょっと? そこで止め……おい……ストップ、ストーップ、オーイッ!

[Soyeon] え?

[Narration] メキメキメキメキ……ッ

[Soyeon] ……あれ? 勝手に……?

[Narration] “大ガメ”は手すりを押し破りそのまま階下へ……

[Narration] バキバキバキバキッ!

[Narration] ドガッシャーン!

[Narration] フギャアッ、フギャーッ!

[Narration] ワォッ、ワゥワゥワゥワゥッ!

[Soyeon] キャーッ! 杏里さーんッ!

[Soyeon] ニ、ニコル、ニコルッ!杏里さんが杏里さんがっ!

[Nicolle] どうどうどう。つーか何がしたかったのキミは。

[Soyeon] うう杏里さんがぁぁ!

[Soyeon] スライムまみれの猫毛だらけ犬毛だらけ、おまけに十年もののキムチにまみれて緑と赤の泡を吹いてます!

[Nicolle] ……生きてるだけマシだって。

[Nicolle] おい、杏里! 杏里!

[Soyeon] 杏里さんっ!

[Narration] 気づくと杏里は、図書館のテラスに横たわり全身にホースで水を浴びせられていた。

[Nicolle] (鼻をつまんで)ふがふが、キムチくっさ……こりゃあ当分とれないねー。

[Soyeon] 杏里さん、ごめんなさい!あたしがバカでノロマでドジだったばっかりに。

[Nicolle] いや、そこまでは言わないけど。あたしもノリノリだったし。

[Collone] ウォゥ……

[Soyeon] コロちゃんも、本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさい!

[Narration] そのころ、天京院の個室に逃げ戻ったヤーンは、コーヒーといり混じった得も言われぬ異臭を漂わせて、天京院をげんなりさせていた。

[Narration] ───突然、杏里がむくりと起きあがった。

[Anri] どうなさったの? なにを哀しんでいらっしゃるの、わが真珠。

[Soyeon] ……あ、あんり……さん?記憶が戻られたんですか?

[Anri] おお、マルガリティフェラ。涙はいっそうあなたを美しくさせる。でもあまり、アフロディテを嫉妬させるものではないわ。さあ笑って?

[Soyeon] マルガリティ……?杏里さん、あたしファン・ソヨンですよ!

[Nicolle] なんか……いつもとビミョーに調子がちがくない?

[Anri] おおレベッカ、我が愛の罠よ。

[Nicolle] へ? だからあたしゃニコルだぁよ。

[Soyeon] 杏里さん、しっかりしてください!

[Anri] ヘレネーはどちら?パメラは? ミケは?

[Anri] そう、ホルテンシアと、ルポーティアも呼んでくださらない?

[Anri] さあソニクス、竪琴を弾いて?やわらかな音色とともに、皆で夕暮れを迎えましょう。

[Nicolle] うわぁ、気持ちわりぃ。

[Soyeon] いつも通りの杏里さんじゃありませんよ!?

[Nicolle] なんか、ショック強すぎて、よくない記憶まで引き出したんじゃないか。

[Anri] 誰が止められるというのでしょうか、この燃えさかる恋心を。運命は稲光のようにわたしを打ちすえ──────

[Narration] ちぃぇあああああああああああああ!!

[Narration] ソヨンはぽかんと口を開いて天空をみあげている。

[Nicolle] え、何? 上?

[Narration] ズゴガガガガガッ!!

[Narration] ベキベキベキベキッ!!!

[Soyeon] あああ杏里さんがっ首まで甲板にめり込んで!

[Nicolle] どこから飛び降りてきたこのネリチャギ魔人はっ。

[Chloe] もちろんお父様の設計した、わたし専用の飛び降り台から。それより……

[Chloe] 杏里っ! 図書館に充満するあの異臭はなにごとなの?

[Chloe] 本棚ひと列まるまる、本格キムチテイストになっているじゃない! どうするのよあれ!

[Chloe] 『華麗なるギャツビー』も、『真夏の夜の夢』も、『風と共に去りぬ』も、キムチ汁でマッカッカのカーよ!?

[Soyeon] ごめんなさいクローエ先輩!あたしのせいなんですっ。杏里さんは全然悪くないんですっ!

[Soyeon] でもキムチには罪は無いんです!それだけはどうかっキムチは、キムチは健康にいいんです!

[Nicolle] まあまあまあクローエ。ソヨンの言うとおりさね。

[Nicolle] 知識欲ばかりじゃバランスが悪いっしょ。あれなら食欲も刺激されて健康的なんじゃないの? あーほら、

[Nicolle] 『華麗なるキムチ』、『真夏の夜のキムチ』、『キムチと共に去りぬ』。

[Nicolle] とかネ?

[Chloe] そんなピーリカピリカラオモシロ文学があってたまりますか!

[Narration] ゴン、ゴン、と二人の少女の頭に容赦のない一撃が落ちた。

[Anri] あれ……ここは図書館のテラス?ボクはこんな所で何を……

[Anri] きみたち……誰?

[Nicolle] どうも……リセットされたくさい。

[Soyeon] じゃ、じゃあ……また最初から……

[Chloe] やめなさい。

[Unknown] 子猫ちゃん……やっぱり、この船の中に……

sapphism_no_gensou/7002.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)