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sapphism_no_gensou:6570

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[Narration] 古来より、学校と怪談は切っても切れない関係にあるものだ。

[Narration] この巨大学園船においても、それは例外ではなかった。

[Anri] ──というわけで、第一回ポーラースター七不思議探検隊をここに結成しまーす。わー、ぱちぱち。

[Narration] 深夜のカリヨン広場に集まった一同は、杏里にあわせておざなりな拍手をした。

[Narration] 今日は、この学園にまつわる七つの怪談を検証することが目的だ。

[Anri] さて、それでは探検隊名誉隊長であるけーこ学園長からひと言。

[Principal] どーもー。

[Principal] それじゃ早速だけど、この学園にまつわるこわーい話をひとつ。

[Narration] 学園長の声が一段低くなると、みんなは緊張して喉を鳴らせた。

[Principal] ……この学園の建ってるところって、昔はね……。

[Principal] ……お墓だったのよ。

[Narration] 夜の学園に、きゃ───っ、という悲鳴が響いた。

[Narration] 第一の不思議、学園は墓場の跡地に建っている。

[Chloe] ……この船は最初から学園船として設計されていたわ。

[Chloe] だから、設計中は必要で、でも完成したら必要なくなるものがあったのよ。

[Soyeon] なんですか、それ?

[Narration] クローエは悲しそうに首を振りながら答えた。

[Chloe] ……男子便所よ。

[Anri] そりゃあ、男子禁制を絶対とするここには必要ないよね。

[Chloe] けど、それは完成してからの話で、建造中や擬そう中は男子トイレもあったのよ。

[Helena] いまは……ないわよね?

[Alma] 昔は男子用だったおトイレが、どこかにあるのでしょうか……?

[Chloe] ……いいえ。男子トイレは最終的には不必要なものとして、船の完成と同時にすべて撤去、あるいは注水ブロックとして壁に塗りこめられたの。

[Chloe] ……この話の恐ろしいところは、ここからよ。

[Narration] 一同が真剣に聞き入る。

[Chloe] 船の進水式が終わったあと、作業員のひとりが行方不明になっていることが判明したの。

[Chloe] どこを捜してもいない……そのうち誰かが言い出したのよ。

[Chloe] 「そういえばアイツ、腹をこわして朝からずっと、トイレに通いっぱなしだったぜ」

[Nicolle] ちょっと、それってまさかさ……。

[Chloe] ええ……作業員はトイレを使用中に、一緒に壁に塗りこめられてしまったのよ。

[Chloe] ……いまでも年に一度、進水式の日が近づくと幻の男子便所があらわれて……。

[Chloe] 間違えてそのトイレを使用してしまった者は、そのままトイレの共に壁の中に……

[Narration] 夜の学園に、きゃ───っ、という悲鳴が響いた。

[Narration] 第二の不思議、幻の男子トイレ。

[Eliza] これは、メイド仲間から聞いた話なのですけれど……。

[Eliza] この船の最下層の船倉の更に下に、牢獄があるというのです……。

[Eliza] そこは学園の重大な秘密を知ってしまった者を閉じ込めるところで……。

[Eliza] 放り込まれた者は、2度と陽の光を見ることがないという……。

[Chloe] ……静かそうねぇ。

[Narration] クローエがうっとりと言ったが、イライザはあわてて首を振った。

[Eliza] ──とんでもない!

[Eliza] そこにかつて、日本のある大金持ちの娘が閉じ込められたらしいのですが。

[Eliza] 大暴れしたあげく、ついに牢獄は封印。その娘も一緒に閉じ込められました。

[Eliza] 以来、娘は船の最下層から、幸せな生活を送っているだろう姉をうらやみ、その名を呼びつづけているといいます……。

[Eliza] ほら、こんな風のない日は、耳を澄ますと……。

[Narration] 一同はシーンとなって耳を澄ませた。

[Narration] どこか遠くから「ぁぃーっ、ぁぃーっ」という叫びが聞こえてきた気がした。

[Narration] 夜の学園に、きゃ───っ、という悲鳴が響いた。

[Narration] 第三の不思議、最下層に閉じ込められた、日本の令嬢。

[Soyeon] あたしの話は、ビジターズクラスの子たちから聞いた話なんですけど……。

[Narration] ソヨンは声をひそめて話し出した。

[Soyeon] 購買部通りにある、真ん中堂って和菓子のお店。

[Soyeon] あそこには毎日、1個だけあんこの入ってないおまんじゅうが置いてあるらしいんです。

[Soyeon] それを引いてしまった人は、次の日にちゃんとあんこの入ったおまんじゅうを食べないと……。

[Anri] 食べないと?

[Soyeon] 女の子の日に、血が止まらなくなって死んじゃうって……!

[Narration] しーん、と何かしらけた空気が流れた。

[Soyeon] だ、ダメですか?

[Principal] あんまり怖くなかった。

[Tenkyouin] オチが弱いな。

[Anri] ……でも、怖がってるのもいるよ?

[Narration] 見ると廊下のすみで、アンシャーリーが丸まってガタガタ震えている。

[Anne Shirley] ううう、まんじゅうこわい……まんじゅうこわいよー……。

[Principal] 怪談を怖がってるんじゃないんじゃない?

[Anri] まあ、でも本気で怖がってるのがひとりいるから……。

[Principal] うーん……よし、認定。

[Anne Shirley] パパがママにパパがママに……。

[Narration] 第四の不思議、あんこの入っていないまんじゅう。

[Tenkyouin] ……これは世の中には科学でも解明できないことがあるという、顕著な例だ。

[Tenkyouin] この先──教室につながる大階段に、歴史的偉人の肖像がいくつも飾ってあるのは、みんな知っているな?

[Narration] 一同はこくこくと頷いた。

[Tenkyouin] あの肖像の中に、表情のかわるものが混じっているのを、みんな知っているか?

[Narration] 一同はふるふると首を振った。

[Tenkyouin] 恐ろしいことだ……階段を昇りながら見ると嘆きの顔なのに、階段をくだりながら見ると笑顔になるのだ。

[Anri] ほんとに?

[Tenkyouin] すぐわかるさ。見ていろ……。

[Tenkyouin] 見たか!?

[Narration] 夜の学園に、きゃ───っ、という悲鳴が響いた。

[Narration] 第五の不思議、表情のかわる肖像画。

[Anri] さて、諸君。

[Narration] 杏里は静かに、カリヨン広場にそびえる鐘楼を見上げた。

[Anri] この鐘楼の階段が何段あるか、みんな知っているかな?

[Chloe] 千段でしょう?

[Narration] その通り、と杏里が頷く。

[Anri] ところがこの階段、満月の夜になると、段数が減ると言われているのさ。

[Alma] そんなことがあるんですか?

[Anri] ──それをこれから確かめようというのさ。

[Anri] ちょうどいい、満月の夜だからね。

[Narration] 杏里が妖しい笑みを浮かべると、一同は背筋をゾクッとふるわせた。

[Aisha] でも、何段ぐらい減るんです?

[Anne Shirley] わたしがこの前、数えたときは5段だったよ。

[Anri] ……995段?

[Anne Shirley] ううん、上まで5段。

[Anri] アンシャーリー……いくらなんでも、それは減りすぎだよ。

[Anne Shirley] なら数えてみましょう?何段で上までつくか。

[Anri] うん。よし、いいかい?

[Anri] いーち、にーい、さーん、しーい……。

[Anri] ……ご。

[Anri] ……ついた。

[Narration] 夜の学園に、きゃ───っ、という悲鳴が響いた。

[Narration] 第六の不思議、満月の夜に段数の減る、鐘楼の階段。

[Anri] さて、これで6つ。あとひとつで、七不思議完成だね。

[Tenkyouin] ……ちょっと待て、杏里。七不思議の七つ目は、知ると死ぬ……というのがパターンだろう?

[Principal] あー、じゃあ、こういうのどう?

[Principal] この前、月のない晩にポーラースターを疾らせてた時なんだけど……。

[Principal] 青白い顔した女が、青山墓地まで乗せてくれって……。

[Tenkyouin] やはり6つでやめておいた方がいい。

[Anri] そうだね。

[Principal] ………………。

[Anri] じゃあみんな、今晩は探検につきあってくれてありがとう。

[Anri] 最後に、点呼を取って解散だ!はい、番号! いち!

[Narration] 「にー」「さん」「しー」……。「……じゅういち」

[Anri] ……あれ?

[Anri] ……足りないぞ?

[Tenkyouin] 誰か居なくなっていないか?

[Alma] まさか、お化けに食べられたのでは……。

[Anri] はぐれたのかな?

[Eliza] ──あっ、ちょっとお待ちください!

[Soyeon] かー。

[Eliza] ソヨン様が寝ています。

[Anri] やはりこんな時間に起きているのは無理だったか……。

[Chloe] そういえば、途中からおとなしかったわね。

[Tenkyouin] ソヨンを抜けば11人だ。もう一度、点呼を取ろう。

[Anri] よし、再度点呼。番号、いち!

[Narration] 「にー」「さん」「しー」「ワン!」

[Narration] 「ツー」「スリー」「フォー」……

[Tenkyouin] ちょっと待て、さっきより少ないぞ!?

[Anri] あ、途中にコローネが入ってる。

[Collone] ──ワン!

[Tenkyouin] まぎらわしい……もういい、解散しよう。

[Alma] ──あっ、待ってください!

[Alma] 知らない人が混じっています!

[Tenkyouin] なに、座敷童か!?

[Alma] ほら、こんな方、見たことありません!

[Narration] アルマに押されてまろび出た少女を見て、一同からため息がもれた。

[Tenkyouin] ……誰?

[Aisha] きれい……。

[Anne Shirley] びゅーちほー。

[Anri] なに言ってるのさ、みんな。ニコルじゃないか。

[Nicolle] ──そうだよ。

[Narration] 一同は、シン……と静まり返り……。

[Narration] 夜の学園に、きゃ───っ、という悲鳴が響いた。

[Narration] こうして、第七の不思議は、

女は化ける、ニコルは特によく化ける

……に決まったのであった。

[Nicolle] ──どういう意味だっ!?

sapphism_no_gensou/6570.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)