User Tools

Site Tools


sapphism_no_gensou:6480

Place translations on the >s

[Narration] H・B・ポーラスターの頭上に広がる青空は、まだ明け方であるにもかかわらず、すでにかすむような水色であった。

[Narration] 船は久しぶりに陸へ近づいていた。といっても、全長1キロという巨艦であるから普通に港へ接舷することはできない。

[Narration] ずいぶん離れたところから、高速艇やヘリを使って行き来するのだ。ミリエラらが乗り込んだときも、そうだった。

[Narration] そういえば──と、彼女は思い出す。

[Narration] 学園長が冗談交じりに語ってくれた話の中で、この船には帰る港がないのだと言っていたっけ。

[Narration] あまりに巨大なこの船は、船体の最終的な組立すら海上で行わなければならず、進水式も実は海の上だった。

[Narration] 生まれたのが海の上、そして停泊できる港もない。

[Narration] 母港を持つことのできない、さすらう船。

[Narration] それが、H・B・ポーラスターだと。

[Narration] 海風に冷たいものが混じり、ミリエラはぶるっ、と震えた。

[Narration] 昨晩、彼女らを送り出すために行われたパーティーは、そもそものなれそめも忘れられ、学生、船員を交えたらんちき騒ぎになった。

[Narration] ビジタークラスの存在は、まあダシに使われたようなものだろう。

[Narration] 会場こそ早いうちに閉められたが、気のあった者たちは部屋や、あるいはもっといかがわしい場所へ河岸をかえ、夜を徹して騒いでいた。

[Narration] ミリエラも、別れに涙するクレアやコーに引っ張り回され、結局、眠っていなかった。

[Narration] そのふたりは夜の明ける少し前に沈没し、いまはソヨンの部屋で安らかな寝息をたてている。

[Mirriela] (……でも、ソヨンちゃんの方がずっと先に沈没しちゃってたけどね)

[Narration] ミリエラひとりだけが、何となく朝日の昇るのを見たくなって、そのまま起きていたのだ。

[Mirriela] (海の上で朝日を見るなんて、もう一生ないかもしれないもんな……)

[Narration] 同じもののはずなのに、確かにどこか違って見えた。

[Narration] もう、これを見ることがないかもしれない……そう思うと、別の感傷がミリエラの胸をきゅっと切なくした。

[Mirriela] 杏里先輩……。

[Narration] よく面倒を見てくれた教員や船員よりも、友達のようにふるまってくれたソヨンよりも、その人との別れが、しこりのように心に引っかかる。

[Narration] それほど仲良くなったわけではない。何かを約束したわけでもない。──なにより、杏里のことなど人から聞いた話以外には、たいして知りはしないのだ。

[Narration] ……でも、きっと。

[Narration] だからこそ、気になるのだろう。

[Narration] 何もなかった──それが寂しくて、だからこんなに心が騒ぐのだ。

[Mirriela] (すごいもの見ちゃったからな……)

[Narration] 彼女はしばらく前に、杏里とヘレナの情事を目撃していた。

[Narration] 女同士の淫らな関係……快楽のみを求めるSEX……そして、杏里とヘレナの、切なそうな、幸福そうな表情……。

[Narration] きたない、イヤらしい──とは思わなかった。

[Narration] かと言って、きれいだなどとロマンチックなことを思ったわけでもない。

[Narration] ──ただ、すごかった。ショックだった。

[Narration] 自分の中で、何かが目覚めて、叫びだしたような、そんな錯覚さえ感じる衝撃。

[Narration] いや、確かにあの日、ミリエラの中で何かが目覚めたのだ。

[Narration] 好奇心でしかなかった性への憧れは、あれを目撃したとき、別の何かに変わった。

[Narration] その自覚もある。クレアやコーと、それを確かめ合ったことさえある。

[Mirriela] でも、何もなかったもんな……。

[Narration] ミリエラの中にこれほどハッキリした変化があるのに、世界は何も変わらなかった。

[Narration] 彼女にとって、その変化は明らかに杏里とつながるものだったのだが、だから何かが起きたということもない。

[Narration] そして、あと数時間で自分はこの船を降り──きっと、杏里に会うことは二度とないだろう。

[Narration] きっと自分は、そのことが悲しいのだ。

[Mirriela] 杏里先輩……。

[Narration] ──どさっ、とミリエラは草むらに倒れ込んだ。

[Narration] 草むらと呼んでは失礼かもしれない。空中庭園の一角に敷きつめられた野草の絨毯である。

[Narration] ところどころに、クローバーの花が咲いていた。

[Mirriela] ああ……杏里先輩……。

[Narration] ミリエラの指はズボンのジッパーを引き下げ、その中へ忍び込んでいた。

[Mirriela] (なんだろう……すごく、したい)

[Narration] 早朝とはいっても、船の中だ。起きている人間もたくさんいるだろう。

[Narration] そう思っても、ミリエラには部屋へ戻ることさえわずらわしかった。いま、ここで、したいのだった。

[Mirriela] (いいや、別に……どうせサヨナラだし、誰かに見られたって……)

[Narration] 覚悟を決めてしまうと、今度は不思議と誰かに見られているような気がしてきた。

[Mirriela] (いいや、じゃあ……見せてやれば。少なくとも、オナニーは初公開だぞ)

[Narration] くすくすと笑って、大胆にパンツの上の指を踊らせる。

[Narration] ぴったり閉じたスリットに布地を押し込むようにして何度も往復すると、指先に湿り気が伝わってきた。

[Mirriela] はぁ……。

[Narration] 熱いため息をついて、まずはその、緩やかな快感を徐々に引き上げていく。

[Mirriela] (杏里先輩にされるのは……きっとこんな感じじゃないんだ……)

[Narration] ミリエラは杏里とヘレナが絡み合っていた場面を思い出した。

[Narration] 杏里の指に触れられると、ヘレナはなすすべもなくクタクタになって、すぐに甘い声で鳴き始めた。

[Narration] それに比べて、ミリエラはじっくりと濡らしてやらなければ、触っても痛みしか感じない。

[Narration] それどころか濡れてきたところで満足してしまい、そこでオナニーはおしまい……ということもある。

[Mirriela] (きっと、あたしの指なんかと比べられないぐらい、気持ちいいに違いない……)

[Narration] でなければ、ヘレナがあれほど早く痴態を見せるはずがない……というのが、ミリエラの思いだった。

[Narration] 実際にはそれは、ミリエラの性がまだ未成熟であり、杏里に開発されたヘレナの肉体とは違うということなのだが、彼女にはわからない。

[Narration] ただ、あの細く白い指がどんなすごい快楽を生み出すのかと想像してみるだけだ。

[Mirriela] ん……ん、ああっ……。

[Narration] それでも、ミリエラの身体はいつもより早く反応し始めた。

[Narration] 徹夜の疲れで感覚が高ぶっているのと、屋外という場所の緊張感。それらがミリエラの性感を煽りたてていた。

[Mirriela] はあっ、はあっ、はあっ……。ん、んんっ……!

[Mirriela] (あ……あたし、いつもはこんなに早く濡れたりしないのに……)

[Mirriela] (ああ……ビリビリくる……)

[Narration] ミリエラの指が往復している部分には、すでにシミが浮かび上がっていた。

[Narration] 下着の布地を通して、さらさらとした愛液が絡みついてくる。

[Mirriela] (もうダメ……もどかしい……!)

[Narration] ミリエラは焦ったようにズボンのホックをはずすと、乱暴に自分の下半身を覆っていたものを脱ぎ捨てた。

[Narration] いつもなら下着の上からでも十分な快楽が得られるのだが、いまはそれでは耐えられそうにない。

[Mirriela] んっ、あっ……、はぁっ……ああ……すごい……!

[Narration] スリットはべったりと濡れていた。流れた愛液がお尻のほうまで伝わっているのを感じる。

[Mirriela] うんっ……、んんっ……、やっ!

[Narration] 脳裏をかすめるのは、杏里の白い指先と征服者の微笑み、そしてヘレナの痴呆のような表情。

[Narration] そこへ、クレアやコーとの戯れがフラッシュバックする。

[Mirriela] (ああ、そうだ……あたし、クレアとコーのアソコを舐めてあげたんだ……)

[Narration] むろん、それはミリエラにも初体験であった。舐めるどころか、触るのも、間近で見るのも初めてだった。

[Mirriela] (クレア、すごかった……あんなに気持ちよさそうにして……)

[Narration] 見知った友達が、あの時だけはまるで別人のようだった。

[Mirriela] (やっぱり他人に触られるのが気持ちいいんだ……舐めてもらったら、きっと、もっと……)

[Narration] あの時、本当は自分も舐めて欲しかった。

[Narration] しかしあれはクレアを屈服させるための勝負だったし、何よりミリエラはそんなことを自分で言えない意地っ張りな少女だった。

[Mirriela] (他人に触られるのって、どんな風なんだろう……舐められるのって、どんな風なんだろう!)

[Narration] 吐息はあえぐように早くなっていた。自分の淫液がたてるいやらしい音が、ミリエラ自身の耳にも届いてくる。

[Mirriela] はっ……あっ、んっ……はあっ、はあっ、……杏里先輩、あたし……あたし……!

[Narration] その時、すぅっ……と、風が吹いた。

[Narration] 熱くなった身体を一瞬だけさますように、濡れた股間から冷たいものがかけ抜ける。

[Mirriela] ──ひゃっ!?

[Narration] 快感とも悪寒ともつかないものにぶるっ、と震え、ミリエラは動きを止めた。

[Narration] 我に返ったように、おずおずとスリットから手を離し、眼前に持っていく。

[Mirriela] う……わ、すごい……。

[Narration] それがすべて自分から流れたのだということが信じられないように、ミリエラは糸引いてキラキラと輝くそれが自分の指先に絡みついているのを呆然と見ていた。

[Mirriela] (オナニーでこんなに濡れたのはじめてだ……)

[Narration] なんだか怖いような、誇らしいような妙な気分だった。ひとつステップを昇った気がした。

[Narration] すなわち、杏里に一歩、近づいたのだ。

[Narration] 自分の恥ずかしい液体を目の前でもてあそびながら、ミリエラはもう片方の手をまたスリットへすべらせた。

[Mirriela] あっ……!

[Narration] ゆるんでわずかに口を開けた割れ目は、人さし指の侵入を簡単に許した。

[Narration] せいぜい第一関節までではあるが、それを自分の胎内に差し込んでいると、じわっとした不思議な感覚が広がっていく。

[Narration] にゅるにゅると出し入れすると、それは寒気のような快感になった。

[Mirriela] ん……はっ、あっ……、やっ……。

[Narration] 再開された愛撫に、身体は敏感に反応する。

[Mirriela] あっ……、あぅ……んっ、んんんっ……!

[Narration] 親指がふくらんだ芽を転がす。いつもなら痛みを感じるのだが、愛液のおかげか痺れるような気持ちよさだけがある。

[Mirriela] はあっ、杏里先輩……あたし、もう……イク……イっちゃうよ……!

[Narration] 指先の抽挿に、がくがくと腰が揺れだした。こらえきれない快感が、行き場を失って暴れているかのように。

[Mirriela] あっ、いいっ……気持ちいいっ……!

[Mirriela] 杏里先輩、杏里先輩っ、あたし……!

[Narration] 相手をイかせる時の、杏里の優しく、それでいて不敵な笑みが脳裏に浮かんだ。

[Mirriela] ああっ……イク! イクよっ!杏里先輩っ! 先輩───っ!!

[Narration] 絶叫とともにミリエラは達した。

[Narration] 同時に、いきおい余って指先がずぶりと第二関節まで埋まるが、痛むどころか逆に腰を前に突きだしていた。

[Narration] きゅうっ──と指をしめつける膣口の入り口には、長々と絶頂の余韻がただよった。

[Mirriela] はあ……はあ……はあ……はあ……。

[Narration] ミリエラがまともな思考を取り戻すのに、しばらく時間がかかった。

[Narration] 荒い息を整えながら、火照った体が冷めていくのを待つ。

[Mirriela] 杏里先輩……さよなら……。

[Narration] ミリエラは小さく呟いた。

[Narration] もうしばらくしたら、クレアやコーと一緒に、この言葉を言うことになるだろう。その前に、ミリエラは別れを告げた。

[Narration] 不思議と、もう寂しくはない。

[Narration] 杏里から与えられた「何か」は、確かに自分の中にあるのだと、確信したからかもしれない。

[Mirriela] ──あ、寒っ!

[Narration] また風が通り抜けて、ミリエラはびくっとした。

[Narration] そろそろこの辺りにも、朝の散歩に人が来るかもしれない。興奮がおさまると、公開オナニーショーの伝説など残す気には全くなれなかった。

[Mirriela] 部屋に戻ろう。クレアとコーを起こして、下船の準備をしよう。それから……。

[Narration] 船が、陸地に近づいたことを知らせる大きな汽笛を鳴らせた。

[Narration] 別れの時は、やって来た──。

[Narration] ………………。

[Narration] ミリエラが、ハンカチもティッシュも持ち合わせていないことに気づいて慌てるのは、わずか数秒後の出来事であるが。

[Narration] その結果どうなったかは──本人の名誉のため伏せることにする。

sapphism_no_gensou/6480.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)