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sapphism_no_gensou:6450

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[Sylvie] イライザ様───っ!

[Crimea] イ、ラ、イ、ザ、様ぁ───っ!

[Narration] 今日も今日とて額に汗して働くイライザのもとに、シルビィとクリミアが飛び跳ねるようにやって来た。

[Narration] あわてるあまりに行きすぎて、戻って転んで、更にぜいぜい荒く息して喋れない。

[Narration] イライザはあきれた顔でふたりを見た。

[Eliza] どうしたのふたりとも、そんなにあわてて……?

[Sylvie] ぜぃっ、ぜぃっ、ぜぃっ、みっ、みっ、みつっ、……!

[Eliza] ……落ち着きなさいって。

[Crimea] そっ、そんなぁ場合じゃぁっ、ないんですぅっ!

[Eliza] だからどうしたのよ?

[Sylvie] 見つかったんですよっ!

[Eliza] だから、何が?

[Crimea] イ、イライザ様のぉ、ご両親がぁっ!

[Eliza] ……は?

[Narration] 杏里は廊下を走っていた。

[Narration] 途中、注意にあらわれたヘレナを空室に連れ込んで15分ほど浪費したが、とにかく全速力で走った。

[Narration] セカンドクラスの学生が生活する個室の一番奥。

[Narration] これまで空き部屋だった場所に、真新しい表札が下げられていた。

[Narration] ──イライザ・ランカスター。

[Anri] イライザ!

[Eliza] ──はい?

[Narration] まったくいつものままの格好で出迎えに出たイライザの前で、杏里はずざ───っ、と滑って見せた。

[Eliza] まぁ、杏里様、そんなお約束なことをなさらなくても……。

[Anri] あ、あれ? イライザ?

[Narration] 我に返ってまじまじと見る。

[Eliza] どうなさいました?

[Anri] ……いや、その、聞いた話だと、行方不明だったご両親が見つかったって。

[Eliza] はい、見つかりました。

[Anri] それで、ご両親が新しい事業に成功して借金も無くなったと……。

[Eliza] はい、無くなりました。

[Anri] それで、えぇと……イライザもメイドから学生に戻ったと聞いたんだけど?

[Eliza] はい、戻りました。

[Anri] なんでそのカッコ?

[Eliza] 今日、お給料の締め日なんです。

[Narration] かつてのお嬢様は、ひどく庶民的な言葉を吐いた。

[Eliza] ですから、今日までメイドでいさせていただこうと……。

[Anri] ……あ、そうなんだ……。

[Narration] 杏里は残念そうに肩を落とした。

[Anri] せっかく学生に戻ったキミの制服姿を一番に誉めようと走って来たのに。

[Eliza] そうなんですか、申し訳ありません……。

[Narration] 丁寧に頭を下げるイライザを見て、思わず苦笑する。

[Anri] ……でも良かったね、イライザ。

[Eliza] はい、ありがとうございます。

[Anri] ところで、お父さんって、何の事業を始めたの?

[Eliza] 鉱山関係のようです。

[Eliza] なんでも、青く輝く石を扱っているとか……。

[Anri] ……サファイアかな?

[Eliza] あの、杏里様……。

[Narration] イライザは、媚びるような眼で杏里を見た。

[Anri] どうしたの、イライザ?

[Eliza] ……ひとつ、お願いしてよろしいでしょうか?

[Anri] もちろん、ボクにできることならね!

[Narration] イライザは恥ずかしそうに杏里に身を寄せた。

[Eliza] 私に……最後のメイドのお仕事をさせていただけませんか?

[Anri] ……どういうこと?

[Eliza] きっと、これを着るのも最後になるでしょうし……。

[Eliza] 私の、メイドの卒業式を、杏里様にしていただきたいのです。

[Anri] ……卒業式?

[Eliza] ──はい。

[Narration] すっ、とイライザは杏里の胸元に身をすりよせた。

[Eliza] 思い出を……くださいませ……。

sapphism_no_gensou/6450.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)