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sapphism_no_gensou:5121

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[Narration] 学園船H・B・ポーラースター、テニスコート専用更衣室。

[Narration] 普通の学園ならば、もっとも警備に細心の注意が必要とされるこの手の施設も、女性しか乗船を認められていないこの船では、比較的、警戒心も薄れる。

[Narration] というわけで……。

[Narration] 連続レイプ事件の最重要容疑者と目される杏里・アンリエットも、友人達の協力もあって、この場所に出入りできるわけなのだが。

[Anri] いいなぁ〜。

[Anri] はぁ……。

[Anri] みんながうらやましいよ……。

[Anri] ああ、濡れ衣を着せられた我が身を恨めしい。

[Chloe] 杏里、あなたね……。

[Helena] いいかげんにしなさい!

[Narration] クラスメイト達が遠巻きにちらちらと視線を向ける中、渦中の人である杏里はクローエにしなだれかかりながら、嘆息を繰り返していた。

[Chloe] 杏里、邪魔よ。

[Chloe] それから、耳元でため息を繰り返さないで。うるさいわ。

[Anri] 耳でボクのため息を感じるのは嫌かい?クローエ。

[Chloe] 今のあなたじゃダメ。うるさいだけだわ。

[Narration] 煩わしげに、クローエは耳元に寄せてきた杏里の顔を、手で押し戻す。

[Helena] だいたい杏里!あなたがなぜ、ここにいるのよ!

[Anri] なぜって……。この時間、ボク達セカンドクラスは体育の授業のために着替えなきゃならないじゃないか。

[Helena] あなたは謹慎中でしょ! 部屋でおとなしくしていてこそすれ、こんなところで騒いでいいわけありません!

[Helena] まるで……、わ、私達の着替えをのぞきにきたみたいじゃない!

[Chloe] まるでもなにも、その通りよ、この人は。

[Anri] ……バレたか。

[Chloe] 底の浅い人。

[Helena] 杏里!

[Helena] くだらないことをしてないで、部屋に戻りなさい! それでなくても、今はあなたにとって大事な時間なのよ!

[Helena] こんなところで無駄に過ごしていないで、ちゃんと自分のために時間を使ってちょうだい!

[Chloe] そうしなさい、杏里。このままじゃ……。

[Narration] さりげなく髪や耳を這う杏里の指を、クローエの手がつかまえる。

[Chloe] ヘレナがうるさくてかなわないわ。

[Anri] ……そうだね。いたた、痛いよ、クローエ。

[Anri] ああ、縛られた時間の鎖が、ボクから大切なものを次から次へと奪っていくよ!

[Helena] ……杏里、今だけの辛抱なのよ?事件が解決できれば、きっと返ってくるわ。

[Helena] だから……。

[Anri] …………。

[Anri] テニスコートを駆け回るクローエの細くとも力強い脚線美! ストロークのたびに揺れるヘレナの二つの果実!

[Anri] 翻るスカートからのぞくシャルロットのアンダースコート! 汗でまとわりつくウェアが浮き上がらせる飛玲のボディライン! アップにまとめた髪であきらかになるエヌマのうなじ!

[Helena] ちょ、ちょっと杏里……。

[Anri] この時間をボクがどれほど楽しみにしていたか、天も照覧あれ!

[Narration] 杏里の朗々たる声が響き渡るあいだに、あきらかに周囲のクラスメイト達の視線が険を帯びてくる。

[Narration] そのなかば刺すような視線の中心で平然とシューズをはきおえたクローエが、背中の杏里をおしやって、ゆっくりと立ち上がる。

[Chloe] 杏里……。

[Anri] ああ、クローエ、わかってくれるかい? このボクの葛藤を! 悔しさを! やるせなさを!

[Narration] 両手を広げて嘆く杏里を、クローエは静かににらみ据える。

[Chloe] そろそろ、行くわよ?

[Anri] !

[Narration] 瞬間、目にもとまらぬスピードで杏里は飛びすさり、出口へ向かって遁走を始める。

[Anri] じゃ、ボクは捜査に戻るね!二人とも、またね〜!

[Narration] 遠ざかっていく声と姿。その杏里の名残が消え去る前に、ヘレナとクローエはそろって、ため息をついた。

sapphism_no_gensou/5121.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)