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sapphism_no_gensou:4691

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[Anne Shirley] 太陽の陽射しがわたしの全身を暖かく包み込んでくれます。

[Anne Shirley] ……こんな日は何故か、ずっと昔に過ぎ去ってしまった、古い古い記憶が泡のように浮かび上がってきます。

[Anne Shirley] ぽこり、ぽこりと……。

[Anne Shirley] ………………。

[Anne Shirley] 子供の頃、わたしは神童と呼ばれていました。

[Anne Shirley] お父さんは、よくわたしを膝の上に抱っこしてくれました。

[Narration] 「アン、お前はいずれパパの跡を継ぐ かもしれないな」

[Narration] 「……ディーゴ? あいつは駄目だ、 欲の皮が突っ張りすぎてる。カボス? 2桁の掛け算ができないじゃないか」

[Narration] 「おまえだけだよ、アン。たくさん 勉強して、賢い、偉い子になっておくれ」

[Narration] 「そうすればパパの仕事もこの国も、 み〜んなおまえの物になるさ」

[Anne Shirley] パパの話はいつも同じでした。

[Anne Shirley] 朝ごはんの前にする話も、朝ごはんの後にする話も、昼ごはんの前にする話も……

[Anne Shirley] でも、パパはいつもいつも嬉しそうに話すので、わたしは我慢して聞いていました。

[Anne Shirley] でも、本当は……。

[Anne Shirley] 本当は外で遊びたかった。

[Anne Shirley] お陽さまの下を駆け回りたかった。

[Anne Shirley] だから、屋敷の壁に穴があいているのを発見したとき、誰にも教えなかったのです。

[Anne Shirley] お手伝いのミンナにも、家庭教師のガーストンにも、

[Anne Shirley] ……パパにも……

[Anne Shirley] わたしはそれから、壁の穴を抜けて、時々外へ遊びに行くようになりました。

[Anne Shirley] 外の世界にはお花畑が広がっています。広い広いお花畑です。

[Anne Shirley] 空はどこまでも広くて青くて、地平線の彼方まで白い花の咲く園が、そして乱れ飛ぶ青い蝶……!

[Anne Shirley] わたしは、勉強の時間に抜け出しては、外へ遊びに行くようになりました。

[Anne Shirley] ……でも。

[Anne Shirley] その頃から、あまり記憶がハッキリしないのです。

[Anne Shirley] 昏い炎のボゲードンと会ったのも、その頃だったような、ずっと一緒だったような、どうでもいいような……。

[Anne Shirley] クスリは苦いし眠くなるし、でも飲まないとやってられません。

[Anne Shirley] パパはとうとうママになるし。

[Anne Shirley] だから太陽はキライむかしを思い出すから。

[Anne Shirley] ……って聞いてる杏里?

[Narration] 先ほどアンシャーリーに呑まされたクスリのせいでスヤスヤと寝入る杏里に、彼女はチョップを食らわせた。

[Anne Shirley] ていっ、キック、じゃなくてチョップ。

[Anne Shirley] ん〜、なんか昔のことを思い出していたような、そうでもないような、どうでもいいような……。

[Anne Shirley] ……いっかあ。

[Narration] アンシャーリーはスキップしながら去っていった。

[Narration] 後には熟睡する杏里だけが残される。

[Narration] まるで何もなかったかのように……。

sapphism_no_gensou/4691.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)