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sapphism_no_gensou:4681

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[Narration] 空中庭園のその一角は、アンシャーリーのテリトリーだった。

[Narration] だから何が起こっても驚かないことに杏里は決めていたのだけれど、

[Anri] こいつは驚きだ……。

[Narration] 地面に無造作に投げ捨てられていた小さな布切れを拾い上げ、杏里は呟いた。

[Narration] シルクでできた薄い布地は、明らかに女性用下着、ありていに言えばパンツで、しかもまだ暖かかった。

[Narration] おそらく持ち主はまだ遠くにはいっていまい。

[Narration] それにしても、一体誰のパンツだろう。杏里は香りを嗅いでみた。

[Anri] む、この微妙な酸味……十時間ものだな。

[Anri] 少なくとも、昨日の晩から穿いていたのに間違いはない。

[Anri] そしておそらくコーカソイド。それもボクより年下だ。しかもどこかで嗅いだことのある……。

[Anri] ──って、これはアンシャーリーの匂いじゃないかっ!

[Anri] ああ、ボクはどうかしているよ。いくら近ごろ忙しいからって、子猫ちゃんの香りに気がつかないなんて。

[Anri] でも、ボクのアンシャーリーはどうしてこんな所にパンツを……?

[Anne Shirley] あら、杏里。昏き炎のボゲードンも一緒なの。

[Narration] パンツを手にした杏里は、声のするほうに顔を向けた。

[Anri] ア、アンシャーリー、どうしたんだいその格好は?

[Anne Shirley] 来るの。

[Anri] 何が?

[Anne Shirley] 12年に1度のビックウェーブが。地面は流れの底に沈んで……。

[Anri] それが今の格好と何か関係が?

[Anne Shirley] びちゃびちゃに浸かるのに、服があると邪魔でしょ?

[Anri] …………

[Anne Shirley] じゃあ杏里、ボゲードンを預かってくれてありがとう。

[Narration] アンシャーリーは、杏里の手にしたパンツに手を伸ばした。

[Anri] ボゲードンって、このパンツのことだったのかい?

[Anne Shirley] いいえ、でもこれからビックウェーブが来るから。

[Narration] パンツを握り締めてふらふらと去っていくアンシャーリーを杏里は見送ることしかできなかった。

[Anri] …………そうなんだ。お大事に……。

sapphism_no_gensou/4681.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)