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sapphism_no_gensou:4651

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[Narration] 確たる目的もなく大教室にふらふらと立ち寄ってしまった杏里を、誰かがクイッと引っ張った。

[Narration] 不安そうな顔をしたニキが、じっと杏里の顔を見上げている。

[Anri] なんだ……どうしたんだい、ニキ。

[Narration] 心の澱みのせいか、笑顔は自分でもわかるほどぎごちなかった。

[Narration] ニキはそんな杏里を見つめて、いきなり引っぱりだした。

[Anri] ……ニ、ニキ?

[Narration] ニキは杏里を部屋まで連れてくると、自分はふたたび出ていってしまった。

[Narration] ──特に緊急の用事があるわけではない。杏里はソファに身を沈め、しばらく待った。

[Narration] 戻ってきたニキはコローネを抱いていた。

[Anri] ……ニキ?

[Narration] ニキはいつものように言葉は口にせず、コローネの身体を杏里に押し付けてきた。

[Narration] そのまま、杏里とコローネを一緒に抱きしめる。

[Anri] ……ニキ、いったい……?

[Narration] 彼女の行動の真意がつかめず、杏里はふたたび尋ねた。

[Narration] ニキは黙って、じっとひとりと一匹を抱きしめ続ける。

[Narration] その体温を感じているうち、杏里はニキの言いたいことがわかったような気がした。

[Anri] 誰かの体温を感じていれば、寂しさや辛さがまぎれるんだね……?

[Narration] ニキはこくりと頷いた。

[Anri] そうか……辛いとき、ニキはそうして頑張るのか……。

[Anri] コローネと一緒に、そうやって……。

[Narration] 杏里もぎゅっ、とニキとコローネを抱きしめた。

[Narration] ──しばらくして、杏里はそっとニキらを離した。

[Anri] もう大丈夫だよ、ありがとう、ニキ。

[Narration] まだ心配そうにするニキに今度はなんとかうまく笑いかけて、杏里は廊下に出た。

[Narration] ニキの気持ちは嬉しかったが、それでも心の澱みが払われない自分に、杏里は自分で呆れて、肩をすくめた。

sapphism_no_gensou/4651.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)