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sapphism_no_gensou:4631

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[Anri] 喜んでくれ、ニキ!

[Narration] ニキの部屋にノックもなしに飛び込んできた杏里は、いつもより更に上機嫌に見えた。

[Niki] ……?

[Narration] 読みかけの雑誌を置いて、ニキは杏里のそばに近づいた。

[Narration] その細い身体を、杏里がぎゅうっ、と抱きしめる。

[Anri] 実はさっき、かなえさんのところで面白いものを見つけたんだ!

[Anri] これだよっ!

[Narration] ジャーン、と杏里が取り出したのは、往年の大リーグボール養成ギプスのようなバネがついたスピーカーだった。

[Narration] ニキはわけがわからず、杏里の顔を見上げる。

[Anri] これが何だかわからない?でも、何に使うものか知ったら、きっとニキも大喜びさ!

[Anri] いいかい、実はこれ、装着者の身振り手振りを瞬間的に言葉にしてくれる、身振り翻訳機なんだ!

[Narration] ニキは目を丸くしてスピーカーを見た。とてもそんなすごい機械には見えない。

[Anri] なんでもまな板の上で跳ねる鯉の辞世の句を聞こうとして作ったらしいんだよ。

[Niki] ………………!?

[Anri] そう、これを使えばニキの身振りも正確、かつスピーディーに言語変換されるんだ! すごいだろ!

[Narration] ニキの知りたかったのは鯉の辞世の句だったのだが、ジェスチャーでは通じなかった。

[Anri] さあ、さっそく装着だ!

[Narration] 杏里は有無を言わせず、ニキの身体に翻訳機を装備させた。

[Narration] あちこちがバネに引っ張られている感覚がある。

[Anri] よしいくぞ、スイッチオン!

[Narration] 杏里が背中のスイッチを押すと、ぎゅんぎゅんと股間のミキサーが回り始めた。

[Niki] ………………。

[Anri] どうしたのニキ、さあ、何かジェスチャーをしてみてよ!

[Narration] 言われたとおり、ニキは身振り手振りをはじめた。

[Narration] ぎゅおーん、ぎゅんぎゅんぎゅん!……と、そのたびにミキサーが高速回転する。

[Anri] ……?

[Anri] 聞こえない。

[Niki] ……?

[Narration] 何か声らしきものは出ているのだが、それはミキサーの音にかき消されて、まったく聞こえなかった。

[Niki] ………………。

[Anri] 失敗かあ……そういえば、かなえさんも失敗作だって言ってたもんなぁ。

[Narration] しみじみ杏里は頷くと、じゃあねと挨拶して帰っていった。

[Niki] ………………。

[Narration] ニキは杏里の背中を見て、がっくりとうなだれた。

sapphism_no_gensou/4631.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)