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sapphism_no_gensou:4501

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[Eliza] ──さて、ここはもういいわね。

[Colleague] お疲れさまー。

[Eliza] それでは、サウナルームの仕事に行ってまいります。

[Narration] 同僚に礼をして、イライザは軽やかに歩き出した。

[Narration] この時間、シルビィとクリミアがサウナに居るはずだ。

[Narration] 個室をひとつ借り切っているから、ぜひ声をかけてください……と言われている。

[Narration] 彼女らと仲直りして以来、イライザも仕事が忙しくて、結局なかなか会う時間は作れないでいる。

[Narration] 仕事中はあまり親しげに話さないで……とイライザが頼んでいるので、ふたりとしては何とか機会を作ろう、ということだろう。

[Eliza] ……だからって、わざわざサウナでねぇ……。

[Narration] 苦笑しながら、イライザは更衣室に向かった。

[Narration] サウナルームは、共同の水風呂やシャワーを中心に、いくつかの個室が用意されている。

[Narration] 他人と一緒では落ち着かない──などのわがままに応え、1人用から十数人対応まで複数のルームが予約制で使用できる。

[Narration] イライザは湯浴み着をまとって仕事のふりをしながら、シルビィから聞いたナンバーの個室に近づいた。

[Eliza] おふたりとも、こんにちは。

[Narration] 気安く声をかけて扉を開いたイライザの眉根が寄った。

[Eliza] あら……?

[Sylvie] な、なんですか、イライザ様?

[Crimea] ど、どうかしましたかぁ?

[Narration] 個室に入って扉を閉めながら、首をかしげる。

[Narration] この熱気の中では、匂いなどよほど気をつけていなければ判然としない。

[Narration] だからそれは、臭気というより気配だった。

[Eliza] あなた達……なにも、こんなところで始めなくてもいいでしょう?

[Narration] ふたりが真っ赤に──といっても、すでにサウナの熱気で赤かったが──染まった。

[Narration] どうやら、他人の目がないのを良いことに睦みごとに耽っていたらしい。

[Eliza] もう……のぼせるわよ?

[Sylvie] いえ、そんな……ちょっと、だけです。

[Crimea] はい、そのぉ、ちょっとだけ……。

[Eliza] 別に悪いとは言わないけれど、気をつけなさいね。

[Narration] ふたりにこういう事を教えたのは自分だけに、イライザも偉そうなことは言えない。

[Narration] ……と言うより、自分と杏里がこれまでにやった危ないプレイに比べれば、全然かわいいものだった。

[Eliza] でも、あれからもふたりで、ずいぶん仲良くしていたのね?

[Sylvie] いえ、あの、そんな……。

[Narration] つい意地の悪い訊き方をすると、シルビィは俯いて困ってしまった。

[Eliza] ふふ、ごめんなさい。せっかく、こうしてお話しできる機会なのにね。

[Narration] イライザが笑ってとりなすと、クリミアが潤んだ瞳で見上げてきた。

[Crimea] あのぉ……いつも、イライザ様を思い出してぇ、慰めていたんですぅ。

[Eliza] ……え?

[Sylvie] イライザ様がこうしてくださったね、ああしてくださったね……と。

[Crimea] はいぃ……。

[Narration] ふたりの少女の憧れのような表情に、イライザは何だかいたたまれない気持ちになった。

[Sylvie] あのぅ、イライザ様……。今度、私たちのお部屋に、来ていただくことはできませんか?

[Crimea] 夜に……。

[Eliza] え……っと、それは……。

[Narration] それが彼女たちの「お誘い」なのは明白だったが、イライザは即答できなかった。

[Eliza] わたし達は、夜間に学生個室に出入りするのは禁じられているから……。

[Narration] それは本当だが、言い訳としては嘘である。

[Narration] 実際には、親しくなった学生の部屋に深夜遊びに行く職員はいるし、何よりイライザも杏里の部屋へは行っている。

[Sylvie] ダメですか……?

[Crimea] ですかぁ……?

[Eliza] ………………。

[Narration] イライザは心の中でため息をついていた。

[Eliza] (……これって、やっぱり浮気かしら? 杏里様もやっているからって、わたしが ……ねぇ)

[Eliza] (それに、どちらかというと、この子 たちの方を騙すことになる……)

[Narration] どちらが「遊び」かと問われれば、やはり杏里の方を本気と答えるだろう。

[Narration] しかし杏里との関係を守るためにも、彼女たちを手なずけておく必要があるのは確かだった。

[Eliza] ──わかったわ、今度、うまく抜け出せそうな日に連絡するから。

[Sylvie] はい!

[Crimea] お待ちしていますぅ!

[Narration] シルビィらの顔がぱぁっ、と明るくなり、同時に恥ずかしそうに笑った。

[Narration] イライザにしてみれば、昔ならともかくいまでは「何でわたしなんか……」という気持ちしかないのだが、ふたりにとってはいまだ崇拝する女王様らしい。

[Eliza] (杏里様には内緒に……できるかしら? あの人、ときどき妙に鋭いし……)

[Narration] ばれたらどうなるだろう、と考えて、イライザは暗鬱なような、ウキウキするような、妙な気分にとらわれたのだった。

sapphism_no_gensou/4501.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)