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sapphism_no_gensou:4481

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[Sylvie] 思うに、イライザさま……え〜、その、さんが、妙に余裕のあるのは、あの杏里という女のせいだと思うのよ。

[Crimea] 私もぉ、そう思いますぅ!

[Narration] 廊下のはしで、こそこそと会話しているのはシルビィとクリミア。

[Narration] かつてイライザの取り巻きであった少女たちである。

[Sylvie] 杏里という女、なんでも例の事件の犯人だというじゃない?

[Sylvie] しかも、表向きは謹慎ということになってるけど、好きなようにうろちょろしてるそうだわ。

[Crimea] きっとぉ、親がすごく偉い人なんですよぉ!それで特別扱いなんだわぁ!

[Narration] 親の威光が力を持つことは、この閉鎖的な学園内でも珍しくない。

[Narration] ふたりは杏里もそういうものだと考えていた。

[Narration] まさか、彼女本人に力を貸す人間がたくさんいるなど、想像もしていない。

[Sylvie] 昔はイライザさま──さんに、苛められていたくせに!

[Crimea] そうですわぁ!あんな言葉遣いも下品な女、どうしてイライザさ……さんはぁ、気になさるのかしらぁ?

[Eliza] どなたが下品なのでしょうか?

[Narration] いつもの営業スマイルのまま現れたイライザに、ふたりは抱き合ったまま跳び上がった。

[Sylvie] イ、イライザ様、いつからそこに!?

[Eliza] たったいまですけれど。──シルビィ様、わたしと杏里様の噂をしておいでですね?

[Narration] ずばりと訊かれてシルビィは硬直した。クリミアもあたふたと無闇にあわてる。

[Eliza] ……このようなことを、あまり申したくありませんが……。

[Narration] イライザは、ちょっと眉をひそめた。

[Eliza] いま、杏里様は忙しい身です。できれば、邪魔をしないであげてくださいな。

[Sylvie] それって……。

[Crimea] イライザ様ぁ、やっぱりぃ、あの女となにかあったんですねぇ?

[Narration] ふたりとも、いつの間にかイライザに「様」がついていたが、それさえ気がついていないようだった。

[Narration] 不審の眼差しが、じっとイライザに注がれる。

[Sylvie] ひょっとしてイライザ様……あの杏里と、一夜をともに……。

[Eliza] (あらやだ……そんな事を気にしてたの? なんと答えたものかしら……)

[Eliza] (……無用な誤解は、逆に避けた方が いいかもしれないわね……)

[Narration] 頭の中でさっと思案して、イライザはできるだけ平静につとめたまま、それを肯定することにした。

[Eliza] ええ、そうよ。でも──。

[Sylvie] やっぱり!

[Narration] イライザに最後まで言わせず、シルビィが悲鳴のような叫びをあげた。

[Narration] クリミアも、青い顔をして首を振っている。

[Eliza] あの、ちょっと……。

[Narration] 結局、それ以上の弁明も聞かず、ふたりは走り去ってしまった。

[Narration] ぽかん……としたイライザだけが残される。

[Eliza] ……やっぱり、一度あのふたりとは話をしておいた方がいいかしら……。

[Anri] イライザとボクがどうしたって?

[Narration] いきなり顔を出した杏里に、ふたりは跳び上がって驚いた。

[Sylvie] あ、あ、あ、杏里!?驚かさないでちょうだい!

[Crimea] そ、そうですわぁ! だいたい、あなた謹慎中でしょう!?

[Narration] 杏里は気にした様子もなく笑いかけてきた。

[Anri] やだなぁシルビィ、クラスメートじゃないか。えっと……。

[Narration] と、クリミアを見て、笑顔のまま、またシルビィの方を向く。

[Anri] こっちは、誰だっけ?

[Crimea] ──ま、まあ!私もクラスメートでしょう!

[Anri] あ……そうだっけ?

[Narration] クリミアは、実はイライザやシルビィよりも、そして杏里よりも、誕生日が早かった。

[Narration] つまり杏里から見れば年上であり──たとえクラスメートでも、眼中にない相手だったのである。

[Anri] ところで、ボクの話をしていたようだけど……?

[Sylvie] な、なんでもありませんわよっ?

[Crimea] そ、そうそう!

[Anri] ……?

[Sylvie] ……ただ、その……イライザさ……さんと、ずいぶん仲がよろしいようだと思っただけですわ。

[Anri] ボクとイライザは、固い愛の絆で結ばれているからね!

[Crimea] な、なんですってぇ!?

[Narration] シルビィらの頬が、怒りと妄想に紅潮した。

[Sylvie] ま、まさかそれは、ははは、破廉恥な行いのことを、言ってるのじゃ、ありますまいね!?

[Anri] 破廉恥……ふむ、時に愛の営みは美しいだけでなく、危うく、淫らに、退廃的ですらあろうさ──。

[Crimea] じゃ、じゃあやっぱり……。

[Narration] ふたりは杏里の、女性としてはすらりと高い全身を、細くたおやかな指を、引きしまった唇を見た。

[Narration] 杏里がふっ、と笑う。こうした時の彼女は──本人はまったく無意識なのだが──えらく中性的で、その気のない女性でも引き込まれそうな色気があった。

[Sylvie] わ、私、用事を思い出しましたっ!

[Crimea] えっ!? あ、いえぇ、私もぉ!

[Narration] 杏里の妖しい笑みに捕らわれそうになったふたりは、あわてて逃げて行った。

[Narration] きょとん、と事情を理解できない杏里だけが取り残される。

[Eliza] ──杏里様、あのふたりが何かしましたか?

[Anri] あぁ、イライザ。何でもない、ボクとイライザの仲がいいんで、嫉妬しているみたいだ。

[Eliza] まぁ!

[Narration] イライザはふたりの逃げていった方を見て嘆息した。

[Eliza] 杏里様……もしあのふたりがなにかお邪魔をするようでしたら、わたしにおっしゃってくださいな。

[Eliza] おそらく、わたしがきちんと話せば……何も言わなくなりますわ。

[Anri] うん……いや、その必要はないと思うよ。

[Narration] 相変わらず、確たる根拠もなく杏里は言い切った。

[Eliza] なら、いいのですけれど……。

[Narration] いつものように情報収集の結果を聞いて、杏里は去っていった。

[Narration] それを見送ってから、イライザは考え込む。

[Eliza] やっぱり……あのふたりにも、言っておいた方がいいかしら?

sapphism_no_gensou/4481.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)