User Tools

Site Tools


sapphism_no_gensou:4451

Place translations on the >s

[Helena] あ、杏里!?

[Narration] その姿を見とめた瞬間に、ヘレナは身構え、自分の置かれた状況を少しでも正確に把握するために周囲を見渡した。

[Helena] そんな! 十分に人の多い時間に入ってきたはずなのに!

[Narration] たまたまの人の流れなのか、その時、サウナにはヘレナと杏里の二人だけになっていた。

[Narration] ヘレナはなにか、抗いがたい運命のような強制力を持った絶望を感じる。

[Anri] ヘレナ……、なにもそこまで落ち込んだ顔をしなくても……。

[Anri] 何にもしないよ。そういう気分じゃない時もあるんだ。

[Helena] 杏里……。

[Narration] ヘレナはそう答えた杏里をまじまじと見つめながら、尋ねた。

[Helena] おなかでも痛いの? 病気?

[Anri] ちがーう!

[Narration] 腰をかけたベンチから杏里はすり落ちる。

[Anri] 気分、気分だってば! ……精神的なことなの!

[Anri] ひどいや、ヘレナ。病気でもない限り、ボクが落ち込むことがないとでも言うの?

[Helena] あ、ごめんなさい……。

[Helena] 私……、杏里が病気で寝込んでて、看病にいった時にも、ひどいことされてしまったわね。

[Anri] …………。

[Narration] 沈み込んだ杏里は完全に床に寝転がる。

[Anri] 真剣に悩んでるのに〜。

[Narration] うめく杏里の髪に、ヘレナが優しく指を梳きいれる。

[Helena] ごめんなさい、杏里。でも、あまりにも杏里らしくなかったから……。

[Anri] ……真剣なんだってば……。

[Helena] 私の知ってる杏里も、いつも真剣よ。ちょっとふざけて見えるけど、これが自分の真剣だって誇ってたわ。

[Anri] ヘレナ……。

[Narration] 杏里はしばらく、髪をヘレナが梳く指にまかせておく。やがて、顔をあげて、ヘレナに向かって笑う。

[Anri] ありがとう、ヘレナ。ちょっとづつだけど元気が出てきたよ。

[Helena] そう? ならよかったわ。

[Anri] じゃ、元気になったということで。

[Helena] え? え? え?

[Narration] 杏里は立ちあがるとヘレナの手を引いて、入り口からはすぐに見とおせない物陰へと彼女を導いていった。

[Helena] わざわざ、服を着せてからしなくたって!

sapphism_no_gensou/4451.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)