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sapphism_no_gensou:3531

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[Anri] あ、いたいた。

[Anri] イライザ!

[Eliza] あら、杏里様。おはようございます。

[Anri] あ、あれ?

[Narration] イライザは杏里にすれ違う時に一礼すると、そのまままっすぐに大廊下を進んでいった。

[Anri] あれ? ちょ、ちょっとイライザ! 聞きたいことがあるんだってば!

[Narration] 杏里は慌ててイライザを追いかける。イライザはランニングより少しゆっくりという、ほとんど競歩のような勢いのまま、大廊下を進んでいく。

[Anri] い、イライザってば!

[Narration] 杏里は走ってイライザに並びかけ、そのまま並んで大廊下を進んでいく。

[Eliza] はい、杏里様、何か御用ですか? 申し訳ありません、今、速達を配達中ですので、このままでお願いします。

[Anri] ちょ、ちょっと速達を送らせるわけいかない?

[Eliza] 申し訳ありません、そう言うわけにはいきませんので……。

[Anri] ……最高クラスの速達料金なんだろうね。

[Eliza] 恐れ入ります。それで、お聞きになりことはなんでしょう?

[Anri] こないだの、土曜日の夜のことについて。

[Narration] その日時を聞いて、イライザがわずかに眉をひそめる。

[Eliza] アイーシャ様には大変、お気の毒でした。

[Eliza] でも、お二人ともお元気になられたようで、ほっとしてますわ。

[Anri] なに、その言い方……。ちょっと待って、なんでそんなご承知みたいに……。

[Eliza] ヘレナ様は大変、わかりやすい方ですから……。

[Anri] ……ヘレナか。

[Eliza] 杏里様の行いをふしだらだと嘆いておられましたよ?

[Anri] ま、ちょっとその辺から離れようよ。イライザにそうやって責められると、ちょっと怖いよ。

[Eliza] そんなつもりはなかったのですが……。ご不快でしたか、申し訳ありません。

[Anri] えーと、勘弁してよ、なんとなく。

[Eliza] はい、そうしましょう。

[Eliza] その、杏里様も、あまり気落ちなさりませんよう……。

[Anri] え? あ、ああ。確かに、アイーシャはかわいそうだったけど、ボクも彼女も、もう大丈夫だよ。

[Eliza] ……?

[Anri] もちろん、犯人は許せないよ。アイーシャのためにも、ボクのためにもきっと捕まえてみせる。

[Anri] そうすれば、誰も船をおりずにすむからね。

[Eliza] ……なるほど。

[Anri] え? 何か言った?

[Eliza] いえ、お二人とも、お元気になられたようで、ほっとしてますわ。

[Anri] なに、その言い方……。ちょっと待って、なんで想像したのか知らないけど……。

[Eliza] 失礼しました。私の勝手な想像のようですね。他言しませんので、ご安心ください。

[Anri] イライザ、怖いよ。まるで責められているみたいだ。

[Eliza] そんなつもりはなかったのですが……。ご不快でしたか、申し訳ありません。

[Anri] えーと、勘弁してよ、なんとなく。

[Eliza] はい、そうしましょう。

[Narration] 杏里とイライザは話ながら、いつの間にか大廊下から通路へと入っていく。足を進める勢いはそのままに。

[Anri] それで、イライザはPSに協力して、警備に当たってたんだよね。

[Eliza] はい。PSから職員側に要請があり、職員用通路の各所を交代で警備に当たっていたんです。

[Anri] ふーん、ものものしかったんだなぁ、あの夜は。

[Narration] アイーシャは学生個室の前につくと、鞄の中からとりだした封筒を郵便入れの中に入れる。そして、逆に郵便入れの最初から中にあった封筒を確認して鞄の中にしまう。

[Eliza] 杏里様、申し訳ありません、また速達の用です。

[Anri] いいよ、話を聞きたいから付き合うよ。

[Eliza] 恐れ入ります。

[Narration] 二人はまたも歩き出す。

[Eliza] 職員へのものと同様の要請を教員側も受けてました。つまり、教員用通路にも、警備が出ていたんです。

[Anri] なるほど、それで、学生用通路の方には、PSがいたってわけか。

[Eliza] ええ。各通路の警備状況もだいたい聞いておりますが……。

[Anri] ぜひ、教えて!

[Eliza] かしこまりました。各通路で警備中の場所を通った人物には、全員、名前の確認と行き先が聞かれています。

[Eliza] ものものしくはありましたが、事件までのあいだ、ほとんどトラブルらしいトラブルはありませんでした。一つだけ除いて。

[Anri] それは……?

[Eliza] 謹慎中の学生が堂々と夜中にPSの警備にひっかかったそうです。

[Anri] あ、いや、もう言わなくていいから……。

[Anri] 結局、事件が起きるまで、特に不審な人物は警備にひっかからなかったってことかぁ。

[Eliza] 報告をまとめるとそういう結論になります。

[Anri] なるほど。じゃあ、犯人にはもっと特殊なルートがあったのかなぁ?

[Eliza] さすがに、そこまではわかりかねますが……。

[Anri] うん、でも、役に立つ情報だと思うよ。ありがとう、イライザ。

[Eliza] 恐縮です。

[Narration] イライザが頭を下げたところで、二人は速達の終着点についたようだった。

[Unknown] 杏里様。

[Narration] 漠然と大廊下を歩いていた杏里に声がかけられる。杏里はゆっくりと振り返る。後ろから早足で歩いていたメイド服に鞄をさげた少女が並んでくる。

[Anri] ……やあ、イライザ。仕事中かい?

[Eliza] はい。速達を承っております。杏里様は、手がかり探しですが?

[Anri] あ、いや……、ちょっと……。

[Eliza] ……杏里様? どうかなさいましたか? ご気分がすぐれないとか?

[Narration] 杏里の反応を不審に感じたのか、イライザが杏里に歩調をあわせて、尋ねる。

[Anri] ううん、大丈夫。なんでもないよ。

[Eliza] そうですか? ならよろしいのですが……。

[Eliza] そう言えば、アイーシャ様が襲われた夜のことですが……。

[Anri] ……!

[Narration] イライザの言葉に、杏里の体が一度だけ、小刻みに震えた。

[Eliza] その夜の警備の状況を聞いてきましたので、お話ししましょうか?

[Anri] え、いや、もう……。

[Eliza] え? よろしいんですか?

[Anri] あ、いや、……聞くよ。

[Eliza] かしこまりました。申し訳ありませんが、郵便業務中なので、歩きながらでよろしいですか?

[Anri] いいけど……、イライザ、速達じゃないの、それ。急がなくていいの?

[Eliza] ……大丈夫でしょう。このくらいで歩いて運んでも問題ないと思います。

[Eliza] あの夜、PSから職員側に要請があり、職員用通路の各所を交代で警備に当たっていたんです。

[Anri] ものものしかったね。

[Eliza] 職員へのものと同様の要請を教員側も受けてました。つまり、教員用通路にも、警備が出ていたんです。

[Anri] なるほど、それで、学生用通路の方には、PSがいたってわけか。

[Eliza] ええ。各通路の警備状況もだいたい聞いておりますが……。

[Anri] ……うん、教えて……。

[Eliza] ……かしこまりました。各通路で警備中の場所を通った人物には、全員、名前の確認と行き先が聞かれています。

[Eliza] ものものしくはありましたが、事件までのあいだ、ほとんどトラブルらしいトラブルはありませんでした。一つだけ除いて。

[Anri] それは……?

[Eliza] 謹慎中の学生が堂々と夜中にPSの警備にひっかかったそうです。

[Anri] あ、いや、もう言わなくていいから……。

[Anri] 結局、事件が起きるまで、特に不審な人物は警備にひっかからなかったってことか。

[Eliza] 報告をまとめるとそういう結論になります。

[Anri] ………………。

[Eliza] 杏里様?

[Anri] あ、うん、役に立つ情報だと思うよ。ありがとう、イライザ。

[Eliza] 恐縮です。杏里様?

[Narration] イライザが頭を下げてから、杏里の名前を呼んだ。

[Anri] ……なに?

[Eliza] 早く、元気をお出しいただけるよう願ってますわ。

[Anri] ……ありがとう。

[Narration] イライザはもう一度頭をさげると、鞄を脇の下に抱えて、全速力で大廊下を走りだした。

[Narration] そのイライザが大廊下から通路へと折れて消えるまで、杏里はその後ろ姿を見ていた。

[Anri] ……!

[Narration] 杏里は両手で自分の頬をはたくと、頭を一度振って、大廊下を歩きだした。

sapphism_no_gensou/3531.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)