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sapphism_no_gensou:3481

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[Chloe] 杏里。

[Narration] いったん自分の部屋に戻ってきた杏里は、そのドアの前でクローエに声をかけられた。

[Anri] やあ、クローエ。

[Chloe] 待ったわよ。まったく、部屋にもいなければ、なかなか帰ってきもしない。ここが静かな場所じゃなかったら、わたし、耐えられなかったわ。

[Anri] ……謹慎中なのに、あまり部屋にいないってとこは悪かったよ。

[Anri] そうそう、こないだはありがとう。

[Chloe] ……なに?

[Anri] ……土曜日だよ。アイーシャを医務室に運んでくれただろ。その後、手当を受けている時も、ずっとついていてくれたって聞いたから。

[Chloe] ええ、そうだけど……。あの子、朝になったら、医務室から抜けだしてたわよ。

[Anri] あ、うん……、知ってる……。

[Chloe] は?

[Narration] 抜けだしたアイーシャの行方を突き止め、その後、一緒にすごしていただけに、杏里は少し居心地の悪い思いで頭をかいた。

[Narration] その杏里にクローエは不機嫌そうな視線を向けていたが、やがてより不機嫌そうに顔を背けた。

[Chloe] 手当に付き添ったくらい、別に感謝されることじゃないわ。

[Anri] でも、ありがとう。

[Chloe] でも、少しばかり妙なことにも気づいたわ。

[Anri] え?

[Narration] 聞き返す杏里の目の前に、クローエはポケットから取り出した、折り畳まれた紙片を突きつけた。

[Anri] なに、これ。

[Chloe] いいから見てみなさい。

[Anri] えっと……?

[Narration] 杏里は紙片を受け取り、それを開く。A4サイズの紙に、やや癖の強い筆記体が書き連ねられている。

[Narration] 左上には、やや他の文字と離れて、大きめの文字で、アイーシャ・S・ヤンとつづられていた。

[Anri] これは……?

[Chloe] カルテ、よ。アイーシャさんのね。彼女を診察した医者が書いたものよ。読んでごらんなさい。

[Anri] ……読めない。

[Chloe] まったく、ドイツ語も読めないの!? わかったわ、説明してあげる。

[Chloe] 暴行を受けた形跡は確かにあるわ。手足には打ち身が数ヶ所あった。

[Chloe] また、膣、及び、子宮に精液の残滓はなし。いい、ここからよ。

[Chloe] 会陰部に、三ヶ所の裂傷があったわ。ただし、ナイフなどの刃物によって傷つけられたものだということよ。

[Anri] ……え?

[Chloe] さらに……、膣に出血を伴う損傷は認められず。わかる?

[Anri] え、えっと……。

[Chloe] つまり、彼女はこないだの暴行以前に、すでに処女膜を喪失していたってことよ。

[Anri] な、なんだって!?

[Narration] 声をあげた杏里の顔に、クローエは視線を向ける。

[Chloe] ……だから、教えたくなかったのよ。なんていう間抜けな顔よ。

[Anri] あ……。

[Narration] クローエの言葉で、杏里は軽い自失から戻る。

[Anri] クローエ、あの、えっと、その……。

[Chloe] わかってるわよ、誰にも言わないわ、こんなこと。だけど、そんなことしてどうするって話もあるわよ。

[Anri] ……そうだね。でも……、アイーシャが傷つくよ。

[Chloe] どうかしらね。

[Anri] ……処女かどうかって、ボクには関係ないよ。今は、あんな目にあったアイーシャが、早く元気になってくれることの方が大事だし……。

[Chloe] ………………。

[Narration] クローエは黙ったまま、杏里の顔を見つめていた。やがて、ため息を一つついて目を伏せる。

[Chloe] あなたってやな人ね。

[Anri] なんだよ、急に。ひどいな。

[Chloe] ……ふん、蹴りを出すタイミングがなかったわ。

[Chloe] 杏里、あなたの言う通りよ。処女かどうかなんてそんなに重要じゃないわね。

[Chloe] じゃあね、杏里。当分、大図書室に来るのはやめるのね。蹴り出すわよ。

sapphism_no_gensou/3481.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)