User Tools

Site Tools


sapphism_no_gensou:3341

Place translations on the >s

[Clare] さて、皆さんに集まってもらったのは他でもありません。

[Narration] 教壇に立ったクレアが、席に着いた杏里達を見上げながら言った。

[Narration] 授業の入っていない大教室。全学生を集めて講義ができるここに、杏里は、ビジターズの報告を聞くために集まっていた。

[Anri] 他でもないのはわかってるけど、どうしてヘレナやイライザもいるわけ?

[Narration] 杏里が大教室の中を見回しながら尋ねる。教壇にビジターズ三人が立ち、杏里、ヘレナ、イライザが教室の最前列に座っている。

[Helena] 私は、あの子達に呼ばれたんだけど。重要な手がかりを聞かせてもらえるって。

[Eliza] 私もです。

[Anri] うーん、確かにボクがあの子達に情報を集めてくれって頼んだんだけど……。

[Helena] 杏里、あなた、あんな子供達に、危険なことをさせようっていうの!?

[Anri] 危険なことはするなって言ったんだけどな。

[Clare] ちゅうも〜く!

[Clare] それでは! わたし達、美少女探偵団が集めた情報を発表します! ミリエラ、コー、準備はいい?

[Mirriela] いいよ、ほら……、あ、コー、違う……!

[Coe] え、え、え?

[Clare] あー、あー、あー!

[Narration] ミリエラとコーが二人で、教壇の上に抱え上げようとした大人一抱えもある段ボール箱が、バランスを崩す。

[Clare] きゃー!!

[Narration] しっかりと押し上げ損なった段ボール箱は、縁をずり落ちる。そして、正面にいたクレアに向かってその口を開けながら、なだれ落ちていった。

[Mirriela] あーあ……。

[Coe] コ、コーは悪くないよぉ!

[Clare] もう、二人とも何やってるのよぉ!

[Narration] 段ボール箱からあふれ出したのは、紙吹雪と見まごうばかりの、大量の紙片だった。それに埋もれたクレアが、首を振ってから二人を非難する。

[Mirriela] ……どうする?ぐちゃぐちゃになっちゃったけど……。

[Coe] 情報、バラバラだよぉ?

[Clare] どうするって……。

[Visitors] ………………。

[Narration] ビジターズ三人は揃って不安げな視線で見上げる。それを受けた杏里達三人が、こちらも揃ってため息をつく。

[Anri] ……しょうがない、手伝うよ。

[Helena] ……ええ、そうするしかないようね。

[Narration] それから数時間後……。

[Anri] えーと、パトリシア先生のお昼御飯は教員食堂のAランチだった……。

[Eliza] 杏里様、Aランチを食べたのはリーホァ様のようです。パトリシア様はおそらく、季節のリゾットだったのでは……?

[Anri] あれ、そうか?

[Helena] どっちでもいいです! さっきから有益な情報がちっともないじゃない!

[Anri] あ、やっぱり?

[Narration] 教壇の上にぶちまけられた膨大で雑多なメモは、少女達の敢闘によって、すでに大半は整理されていた。

[Clare] あっれ〜? おかしいな〜?

[Narration] 目の前の机に整理整頓されたメモの数々を見ながら、クレアが首をひねる。

[Anri] ねえ、キミ達。こういうことって、いったいどこで聞いてきたの?

[Mirriela] んーと、お昼時の購買部通りや、大廊下とか人の多いところで……。

[Coe] お耳をダンボさんにして聞いてきたんだよぉ!

[Anri] ……それは……。

[Eliza] 正確な情報を集めるには、ちょっと心許ない方法ですわね……。

[Mirriela] ほら、だからもうちょっと考えようって言ったんだ。

[Clare] だ、だって他にいい方法思いつかなかったでしょ

[Coe] コーは賛成してないよぉ!

[Clare] 反対もしなかったじゃない!

[Anri] やれやれ……。

[Narration] 三人揃ってわいわいとかしましいビジターズを見ながら、杏里は深くため息をついた。

[Anri] ちょっとだけ、かなえさんの気持ちがわかったような気がするよ。

[Helena] ちょっとだけじゃないでしょ。天京院さんの苦労を推し量るべきよ、杏里は。

[Anri] そのつもりはあったんだけど……。やれやれ、我が身がつまされる思いだね。

[Narration] 杏里達が見つめる教壇ではまだ、ビジターズ達が捜査方法の是非について検討を重ねていた。

[Anri] あ、この辺のメモは、クローエの部屋で、ニキに教えてもらったとこだ。

[Anri] えーと、こっからここがつながって……。

[Narration] 杏里は紙片の束をひっくり返しながら、船の略図に通路を書き込んでいく。

[Helena] 待って、杏里。何か変よ。同じフロアで通路が交差しているわ。

[Anri] してたらダメ?

[Helena] この場合、おかしいと思うけど。

[Anri] あーもう、このメモがおかしいんだか、この船の構造がおかしいんだか!

[Helena] たぶん、どっちもよ。それから、あなたの読解力もあやしいものだけど。

[Helena] ……なに、この辺の謎の文章は。

[Eliza] さあ……、意味のある文章には思えませんが……。

[Anri] あ、それアンシャーリーからの情報をメモしたやつだよ。

[Helena] ……なんでこんなめちゃくちゃな文法になるわけ?

[Eliza] アンシャーリー様なら仕方ないかもしれませんが……。でも、このメモをとられたのはクレア様達なのでしょう?

[Anri] うーん、でも無理はないと思うよ。彼女達もアンシャーリーとお茶を飲みながら話してたから。

[Eliza] ………………。

[Helena] ……かろうじて、先生方の動向を話してることはわかるんだけど……。

[Anri] ま、ゆっくり解読していこうよ。

[Mirriela] あー、わけわかんない、まったく!

[Coe] えっとぉ、これがヘレナさんから聞いたことでぇ、これがイライザさんからのだからぁ……。

[Clare] もう、ミリエラ! 七時と九時の情報を一緒にしちゃダメじゃない!

[Anri] あ、ごめん、そこの整理、ボクがやったんだ。間違ってた?

[Narration] 時折、イライザがいれてくれるお茶を飲みながら、一同は混沌とした紙片を、メモされた内容によって振り分けていく。

[Narration] 六割方すんだころ、メモの山の高さに見合うだけのアリバイ調査をビジターズ達が行ったことがわかる。

[Anri] なるほど……。PSが学生用の通路を見張っていただけで、けっこうわかるもんなんだな。

[Helena] 杏里、おしゃべりしてるといつまでもおわらないわよ! そこにある束をとってちょうだい。私がまとめるから。

[Anri] は〜い。

[Narration] 杏里とビジターズが分類したメモを、ヘレナとイライザがまとめて書き取っていく。ちょっとした勉強会のような雰囲気が続く。

[Anri] ……しばらく授業受けてなかったから、こういうのも新鮮に感じるなぁ……。

[Helena] そんなこと言うなら、いつでも私がお勉強を見てあげるわよ。

[Anri] うわ、やぶ蛇……。

[Narration] やがて、段ボール箱一杯の紙片の山は、十枚そこそこのレポート用紙にまとめられた。

[Clare] どう、杏里先輩、見事な情報でしょ?

[Narration] 疲労から息をつきながら、クレアはその束を自慢げに杏里に見せる。

[Anri] いや、見事なもんだよ。

[Narration] 同じように疲れた顔をして、杏里が答える。そして、杏里が手を伸ばしてレポートをうけとろうとした時、クレアはさっと手を引いた。

[Anri] ? クレア、どうしたんだい?

[Clare] 杏里先輩、気づかないんですか?

[Anri] え? 何が?

[Narration] 聞き返す杏里に、クレアは鋭い視線を向ける。

[Clare] 日曜日の夜、杏里先輩が自分の部屋にいたという証拠はないんです。しかも、杏里先輩は、職員通路の一部を知っていたって言ってます。

[Clare] 日曜日の夜、PSの警備にいっさいひっかかることもなく、しかも侵入経路を知っていた……。杏里先輩、これでもまだ、自分が犯人じゃないって言うんですか!

[Anri] ……!

[Narration] クレアの指摘に、杏里は息を飲む。

[Anri] そ、そんな……。ヘレナ、どうしよう?いったいボクはどうやって犯人じゃないと……。

[Helena] 杏里、落ち着いて。杏里しか犯人の条件に該当する人間がいないというならわかるけど……、あなた以外に灰色の人間はたくさんいるわ。

[Anri] え?

[Helena] 例えば……、PSの警備を一度も通らなかった人は他にもいるわ。天京院さん、クローエ、バルトレッティさんだってそうよ。

[Helena] たぶん、部屋から一歩も出なかったからだと思うけど……。

[Helena] その中から、通路のことを絶対に知らないと言い切れる人はいないわ。つまり、杏里と同じくらい疑わしいということ。……普段の素行をのぞけばね。

[Anri] あ、そ、そっか……。いやぁ、ほっとしたよ。

[Helena] そんな簡単に杏里を犯人にできれば、これほど楽なことはないわ。他にも、職員、教員、疑える人はまだまだ多いわ。

[Anri] えーと、というわけで、犯人はボクだけじゃないぞ!

[Eliza] ……杏里様、ちょっと言葉を間違えてますよ。

[Clare] あーあ、このくらいじゃボロを出さないかー。

[Mirriela] ボロっていうのかなぁ……。

[Coe] もっとうまくカマかけなきゃダメだよぉ。

[Anri] ……キミ達……。

[Anri] とにかく、キミ達が集めてくれた情報はちゃんとかなえさんに渡して推理してもらうよ。

[Narration] 杏里はそう言うと、クレアの手からレポート用紙をすくい取る。

[Anri] ありがとう。キミ達の協力にはすっごく感謝しているよ。お礼は……。

[Helena] そういう話はいいの!

[Clare] どう、杏里先輩、見事な情報でしょ?

[Narration] 疲労から息をつきながら、クレアはその束を自慢げに杏里に見せる。

[Anri] いや、見事なもんだよ。

[Narration] 答える杏里の顔にも疲労の色がある。

[Anri] これで、ボク達がここまで疲れ果ててなければもっとよかった。

[Helena] まったくね。もとのメモの山のままだったら、杏里には絶対理解できなかったでしょうね。

[Anri] うん、まったくだ。

[Coe] 杏里さん、変なことでいばってる〜。

[Anri] ともあれ、キミ達の情報は推理に役立ててもらうべく、かなえさんに渡しておくよ。

[Narration] 杏里はそう言って、クレアの手からレポート用紙を受け取った。

[Anri] こっちのまとめた方をね。

sapphism_no_gensou/3341.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)