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sapphism_no_gensou:3321

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[Clare] 「犯人を絶対見つけるぞー!」

[Visitors] 『おー!』

[Narration] 幼い声ながら、勇ましいシュプレヒコールがカリヨン広場に響き渡る。

[Anri] おや、あれは……。

[Coe] 犯人をぜぇったいにゆるすなー!

[Visitors] 『おー!!』

[Mirriela] 犯人は見つけたら鮫のエサだー!

[Clare] おー!

[Coe] えー、コー、そんなのやだよぉ、こわいもん。

[Clare] なに言ってるのよ、コー。こういうのは最初の決心が大切なんだから! それくらいの覚悟でやらなきゃダメよ!

[Mirriela] そうそう。捕まえて簀巻きにして、船の端っこから海に蹴落としちゃえば誰にもばれないよ。

[Coe] ……夜にやらなきゃばれちゃうもん。

[Mirriela] じゃ、そうすればいいさ。

[Anri] こらこら、なにやら物騒な話をしているね。

[Visitors] あー!

[Visitors] 杏里先輩!

[Anri] やあ、子猫ちゃん未満の赤ちゃん猫達。なにやら盛り上がっているようだけど……、どうしたんだい?

[Clare] ……!

[Anri] ん?

[Narration] 杏里は、鋭くにらみあげるクレアの視線に気がつく。

[Anri] どうしたの?

[Mirriela] 杏里先輩、あたしら、知ってるんだ。ソヨンちゃんのこと。

[Anri] あ……。

[Narration] 杏里は思わず言葉に詰まる。面倒見のよいソヨンが、ビジターズ達に慕われていたことは杏里もよく知っていた。

[Narration] そのビジターズの中でも特に目立つこの三人が、ことさらにソヨンのことを気に入っていたことも。

[Anri] まったく……、この船の箝口令っていったいどんな意味があるっていうんだ。なんでキミ達にまでそんなに情報が伝わっているんだか……。

[Coe] ヘレナさんが教えてくれたんです。

[Anri] え、ヘレナが?

[Clare] はっきりとじゃないけど。

[Mirriela] ちょっとカマかけたらあっさりとひっかかったよ。

[Anri] あらら……、ヘレナってば……。

[Clare] 杏里先輩、ほんとに犯人じゃないんですか!?

[Anri] なんだって!? とんでもない!

[Mirriela] クレア、聞き方、唐突。

[Coe] うまく誘導しないと、ボロ出してくれないよぉ。

[Clare] だってぇ!

[Clare] 杏里先輩、ソヨンちゃんのこと可愛いから好きだって言ってたもの! 趣味だってレズだって認めてたし、みんな犯人だって思ってるじゃない!

[Anri] そりゃそうだ! ボクは可愛い女の子が大好きだし、可愛いソヨンは大好きだ! でもだからって、無理矢理に襲ったりは絶対にしない!そう言ったろ?

[Clare] う゛〜……

[Mirriela] だから言ったじゃん。杏里先輩じゃないだろって。

[Anri] 嬉しいよ、ミリエラ。キミはボクのことを信じてくれるんだね。

[Mirriela] ……100パーセントじゃないけどさ。

[Anri] ああ、信じてもらえない我が身を呪うね!かくなる上は是が非でも、真犯人を見つけなくては!

[Anri] このボクに濡れ衣を被せ、無惨にソヨンという花を散らした犯人をね。ボクだってそいつが許せないんだから!

[Clare] ………………。

[Mirriela] ………………。

[Coe] ………………。

[Anri] ちょっとその目はなんだい、三人とも!

[Narration] 集められた三対の冷ややかな視線に耐えかねた杏里が声をあげる。

[Clare] やっぱ、信用できない。

[Mirriela] たとえ無実でも、真犯人を見つけられるかは、ね。

[Coe] やっぱ、コー達が頑張んないとだめだよ。

[Anri] 待て、ちょっと待った、キミ達。……もしかして、犯人を見つけるつもりかい?

[Clare] 見つけるだけじゃないわ。捕まえる!

[Mirriela] そして簀巻きにして海に放り込む。

[Coe] 死体は鮫が処理してくれるのぉ。

[Anri] こら、こらこら! 危ないことをするんじゃありません!

[Mirriela] だって、PSなんかにまかせておけないだろ。結局、今まで犯人を野放しにしてきたんだぜ。

[Anri] だから、このボクが捜査に乗り出したんじゃないか!

[Clare] でも、結局ソヨンちゃんを守れなかったじゃない!

[Anri] う、それはそうだけど……。

[Coe] だからぁ、コー達がソヨンちゃんの仇をとるんだから。

[Anri] だから、それが危ないんだってば!三人とも、わかってる!? 相手は凶悪レイプ犯なんだよ!?

[Clare] 危険とかっていってらんないよ!

[Mirriela] ま、作戦立てて三人がかりならなんとかなるだろ。

[Coe] コーも応援してるよぉ!

[Anri] 待て、全然根拠になってない! わかった!キミ達の熱意はよくわかった!

[Anri] だからこうしようじゃないか。キミ達には、ボクの捜査を手伝ってもらう!

[Clare] えー!? なんで杏里先輩の手伝いしなきゃらならいのー!?

[Narration] 間髪入れず、まずクレアが抗議の声をあげる。

[Anri] 当たり前だろう!? バスケット持ってハイキングに行くんじゃないんだってば!キミ達にもしものことがあったらどうするんだい!?

[Mirriela] 危険なことだってのはわかってる。でも、あっさり犯人にやられちゃうほどマヌケじゃないさ。

[Clare] 返り討ちにしてやるわ!

[Coe] みんながんばれぇ!

[Anri] だーめ! もしキミ達に何かあったら……、ソヨンをこれ以上悲しい目にあわせる気かい?

[Visitors] ……!

[Narration] ソヨンの名前に、ビジターズの三人は黙り込む。

[Coe] ソヨンちゃん……。

[Mirriela] だって、このままですませていいわけないじゃん……。

[Clare] そうよ、許せないもの……。

[Narration] 三人はそれぞれ下唇をかむ。

[Anri] わかってる、キミ達の優しさも勇気もね。だけど、犯人との対決は、ボクとかなえさんにまかせてもらえないかな?

[Anri] もちろん、キミ達にもそのために協力してもらうから。だけど約束してほしい。

[Anri] 危ないことは絶対にしない。調べたことは必ずボクに報告してほしい。

[Clare] でも……。

[Narration] 杏里からの申し出に、クレアをはじめとして三人は不満げな顔をする。

[Anri] でも、じゃない。この約束はまもってもらうよ。もし破ったら……。

[Mirriela] 破ったら……?

[Anri] 品格指導のジョアンナ先生に連絡する。少し騒々しすぎるキミ達に、特別な授業を用意してほしいってね!

[Clare] えー!

[Mirriela] ずるい!

[Coe] ……大丈夫だよ、二人とも。ジョアンナ先生が杏里さんの言うこと聞くわけないよ。だって先生、いつも杏里さんの素行に文句言ってるもの。

[Clare] あ、そっか!

[Anri] ……じゃあ、ヘレナから連絡してもらおう。

[Mirriela] あ、それはまずそう!

[Coe] ……こっそり捜査すればわかんないよ。

[Anri] ……イライザに、キミ達のことをそれとなく見張ってもらうように頼むとしよう。

[Clare] 杏里先輩、ずるい! 自分にできないことはみんな人にやってもらって!

[Anri] これが大人っていうものなの。

[Mirriela] 都合いい言い方だな。で、あたし達はどう先輩に協力すればいいわけ?

[Anri] えーと、そうだなぁ……。

[Coe] あー、何にも考えてない!

[Anri] えっと、じゃあ、キミ達はどんなことしようと思ってたわけ?

[Clare] 犯人が通りそうなところに罠をかける!

[Anri] そんなことしちゃダメ! 第一、誰が犯人かもわからないってのに!

[Mirriela] それはこれから調べようと思ったんだよ。

[Anri] ……わかったよ、じゃあ、こういうのはどうだろう?

[Anri] ソヨンが襲われたのは、日曜の夜なんだ。その時にどこにいたかわからない人間はそれだけで容疑者だ。それを調べるというのは?

[Clare] アリバイ調査!

[Anri] そういうこと。やれやれ、我ながらいいアイデアだよ。

[Coe] なんか、めんどくさいことをコー達に押しつけようとしてないですかぁ?

[Anri] やっぱり、ジョアンナ先生の授業の方がいいかい?

[Mirriela] やだ! アリバイ調査でいい!

[Anri] じゃ、決まりだ。……ねぇ、三人とも。ボクだってもちろん、ソヨンを襲った犯人を許せないんだ。それだけは一緒だよ。

[Anri] ね、目的は一緒なんだ。だから、協力して犯人を捜そうよ。

[Clare] ……はい。

[Mirriela] わかったよ。

[Coe] ……はぁい。

[Anri] うん、三人ともいい子だ。それじゃ、よろしく頼んだよ。念を押しておくけど、危ないことはしちゃダメ。それから、調べたことはボクに教えてくれること。いいね?

[Visitors] はーい!

[Narration] ビジターズの三人は元気よく声をそろえて返事をする。

[Clare] じゃあ、金曜日に結果を聞きにきてくださいね!

[Anri] え? ボクが聞きにいくのかい?

[Coe] だって杏里さんどこにいるかわかんないんだもん。

[Anri] うーん、なるほど。それもそうだな。

[Mirriela] じゃ、そゆことで。

[Anri] うん、わかった。よろしく頼むよ、三人とも!

[Visitors] はーい!

[Narration] 三人は杏里にもう一度、声をそろえて答える。そして、早速、広場の出口へ向かって駆け出していく。しかし、途中で止まると、頭を付き合わせてひそひそと言葉を交わす。

[Clare] ……とは言っても、杏里さんが怪しいのはかわんないわよ?

[Mirriela] でも、余計なことをしたら、それこそジョアンナ先生の餌食だって。

[Coe] ……杏里さん以外のみんなにアリバイがあれば、杏里さんが犯人になるんじゃないかなぁ……。

[Anri] こらー! 何を内緒話してるのー?

[Visitors] わぁ!

[Narration] 杏里の呼びかけにあわてて輪を解く三人。

[Clare] とりあえず、まじめに捜査をしましょ。

[Mirriela] それがよさそうだね。

[Coe] 秘密の捜査はコソコソやらなきゃだめだよね。

[Clare] 杏里せんぱーい!

[Narration] クレアは杏里を振り返って、大声で呼びかけた。

[Clare] もし、杏里先輩が犯人だったら、本当に鮫のエサにしちゃいますからねー!

[Anri] まったくだ! もしその時は喜んでこの頭を鮫の口の中に差し出すさ!

sapphism_no_gensou/3321.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)