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sapphism_no_gensou:3231

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[Anri] 本日の先生は、クローエ・ウィザースプーンさんです!

[Chloe] 杏里・アンリエット! ここでは静かにして!

[Narration] 大図書室に入るなり、紹介コールを飛ばした杏里に、クローエがカウンターの向こうから厳しい声を飛ばす。

[Aisha] あ、ごめんなさい……。

[Chloe] あなたが謝ることじゃないわ。うるさいのは杏里よ。

[Nicolle] そうそう。今のは杏里とクローエのあいだの挨拶みたいなもんさ、気にしなさんな。

[Anri] あれ? なんでニコルがいるのさ。

[Nicolle] 杏里がなにやらまた面白いこと始めたって聞いてね。ぜひとも見物させてもらおうと思ってさ。ま、邪魔はしないからさ。

[Anri] まあ、いいけど。やあ、コローネ、キミの美しい毛並みは今日も輝かんばかりだね。

[Collone] オン!

[Chloe] ここは、ペットの連れ込みは禁止よ。

[Nicolle] し・ず・か・に、させておくさ。それで問題ないだろ。

[Chloe] ……ないわね。

[Aisha] あの、今日は何をするんですか?

[Anri] えーとね。

[Narration] 杏里は大図書室の中を見回す。午前中の大図書室、しかも授業時間帯では、利用する人影もまばらだ。

[Anri] ……読書?

[Chloe] 別にかまわないけど、その子、杏里の何十倍もここで本を借りていってるわよ。

[Anri] え、そうだったんだ!?アイーシャって何十冊も本を読んでるの?

[Narration] 杏里はアイーシャを振り返る。

[Aisha] はい、本を読むのは好きだから……。

[Nicolle] 杏里、あんた、今まで一冊しか本を借りたことなかったのか。

[Anri] だって、ボクのカードってクローエに蹴り割られてから、再発行してもらえないんだもの。

[Chloe] 騒々しい人間を閉め出すにはそれがいちばんよ!

[Nicolle] ……始まったか。ま、すぐケリがつくだろうけどね。その間、ぼーっとしてるのもマヌケだよな。一勝負いくかい?

[Aisha] え? 勝負って……?

[Nicolle] なんだっていいよ。ブラックジャックやポーカー、カードじゃなくたっていいぜ。ダイスにするかい?

[Anri] 思い出した。クローエってば、ボクの代本板まで割っちゃったんだよね。

[Chloe] 神の鉄槌よ!

[Aisha] あの、もしかして、賭博……。

[Nicolle] そんな怯えた顔しなさんな。いくらあたしでも、ビギナーから早々無体にむしったりしないよ。ま、これも人生に必要な勉強……。

[Anri] ……ひょっとして、ボクが借りた本をちょっと汚して返したことも関係あるのかな?汚したのは実際ヘレナなんだけどさ。

[Chloe] 知ったことじゃないわよ、本の汚れなんて!

[Nicolle] 二人ともうるさーい。

[Narration] ニコルの一声で、クローエは唇を噛んで押し黙る。杏里も口を閉ざして肩をすくめる。

[Nicolle] やれやれ、好きで騒いでる人間に、よくも毎度毎度、怒鳴りに散らせるものだね。世俗の雑音と割り切って聞き流しちゃいなよ。

[Chloe] その雑音が許せないのよ!

[Nicolle] 杏里もまぁ、懲りないもんだね。何度、蹴り倒されてるのさ。

[Aisha] え、蹴り……?

[Nicolle] ああ。

[Narration] アイーシャの反応を見て、ニコルは意地悪そうに笑う。そして、あごでクローエを一度、指し示す。

[Nicolle] そこのクローエ姐さんはテコンドーの達人なのさ。

[Aisha] テコンドー……。

[Nicolle] そう。そして、この大図書室の静寂を破る者には、容赦なくその足技を披露してくれるというわけ。

[Nicolle] あそこにいる杏里が、もっぱらその機会を独占してるんだけどね。

[Anri] あまりの素晴らしさに、よく記憶から抜け落ちるんだけどね。

[Chloe] ふん。

[Narration] クローエはつまらなそうに顔を背ける。

[Aisha] ふふ……、ふふふ……。

[Narration] 口元に手を当てて、アイーシャは笑う。

[Aisha] 杏里のお友達って、面白い人が多いんですね。

[Chloe] 面白くないわよ。

[Nicolle] あはは、いいこというね、アイーシャ!

[Nicolle] まったく、お友達って紹介されてるのか、あたし達は! まあいいさ、借金のカタなんて紹介されたらみっともないもんな。

[Aisha] あ、あの私……、笑ったりして……。

[Nicolle] おっと、そこで沈みなさんな、アイーシャ。あんたももう少したてば、めでたく『お友達』になれるぜ。

[Aisha] え、あの……。

[Nicolle] まあ、そのうちわかるさ。第一、アイーシャ、あたしや杏里に敬語なんて使う必要ないよ。面倒なだけさ。

[Aisha] あの、でも……、杏里は年上だし……。

[Anri] 当たり前だよ。キミの年上じゃなきゃ、ボクは絶望で死んでしまう!

[Nicolle] いや、そうじゃなくて。

[Anri] 年下のボクの友達で、敬語使ってくれる子なんていないよ。イライザは、まあ、職業上って感じだけどさ。

[Aisha] でも……。

[Anri] 親しい友達に話しかけるように、ボクに言葉をおくれ。そうすれば、ボクとキミはもっとずっと近くにいることができるよ。

[Aisha] 杏里……。

[Anri] ね、さあ。

[Aisha] 急には……、無理……です。

[Narration] その返事には戸惑いの他に、微笑が混じっていた。少しづつときほぐれていく言葉、心。

[Aisha] でも、ちょっと……頑張って……みるわ。

[Anri] うん!

[Nicolle] 見事な手管だこと。

[Chloe] ……背筋を伸ばしてみることね。

[Narration] 杏里との言い争いの時に床に投げた本を拾い上げながらクローエは言う。

[Chloe] でないと、ちゃんとした蹴りは放てないわ。テコンドーがやりたいなら、教えてあげるわ。ただし、ここでなく道場で。

[Nicolle] おやおや、殺されるぜ、アイーシャ。

[Narration] そう言ったニコルをクローエは睨みすえる。首をすくめてみせるニコル。

[Chloe] 道場も、ちょっと寂しくなってたところだしね。

[Nicolle] ……ソヨンか。

[Narration] 杏里、ニコル、クローエの三人が押し黙る。

[Aisha] ………………。

[Nicolle] ああ、知ってるだろ。ファン・ソヨン。ちょっとね、ここのところの事件にひっかかっちまって。

[Nicolle] 元気のいいのがいてね。ファン・ソヨンって言うんだけど。ちょっとね、ここのところの事件にひっかかっちまって。

[Aisha] そう……。

[Nicolle] で、そこにいるのが、その容疑者。

[Anri] こらー!

[Narration] 指で示されてのニコルの言葉に、杏里は間髪入れず反駁する。

[Anri] あんなかわいい子を暴力で襲ったなんてとんでもない! そんな容疑をかけられるなんて、まったくもって冗談じゃない!

[Anri] 見てろ、真犯人! 一刻も早く見つけて出してやるぞ。この償いをさせてやる!

[Nicolle] だったらこんなとこで油売ってないで、手がかり探しに行くんだね。

[Anri] そこはそれ!

[Nicolle] どれだ!

[Aisha] あ、あの……。

[Chloe] うるさい!

[Narration] カウンターを本で叩きつけて、クローエが叫ぶ。

[Chloe] ここでうるさくしないでくださいって言ってるでしょ! 今日はもう閉館よ、さっさと出ていってくれませんか!

[Nicolle] おいおい、まだ午前中……。

[Chloe] 何か! これ以降はわたしの貸し切りなんです!

[Nicolle] ……逆らわない方がよさそうだね。

[Anri] そうだね、退散しよう。行こう、アイーシャ。

[Aisha] はい……。

sapphism_no_gensou/3231.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)