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sapphism_no_gensou:3211

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[Anri] よろしいですか、アイーシャさん!

[Aisha] え、あ、あの、杏里……。いったい何を……。

[Narration] 自室を尋ねてきた杏里を迎えたアイーシャは、杏里がかける縁のとがった眼鏡と、その口調にとまどいの表情を浮かべる。

[Anri] 何って、そんなこともわからないのですか、アイーシャさん。そんなことでは立派なレディにって……、似合わないかな、これ。

[Aisha] ええ……、ちょっと……。

[Narration] 眼鏡のつるをすこしばかり持ち上げて尋ねる杏里に、アイーシャは控えめな同意で応えた。

[Anri] えっと、この間の日曜日に約束したよね、キミはもっと素敵な女の子になれるって証明するって。

[Aisha] ええ……。

[Anri] どうもそこからムラムラと、古式ゆかしき、美少女を自分の理想のレディに磨き上げるという方向に目覚めそうになってしまって。

[Anri] とりあえず、形から入ってみたんだけど……。

[Aisha] はぁ……。

[Anri] あれ、あきれられちゃった?

[Helena] あきれられて当然です!

[Narration] ポリポリと頭をかく杏里を、ここまで無理矢理連れてこられたヘレナが怒鳴りつける。

[Helena] だいたい、なんで私があなたと一緒にヤンさんの部屋にこなくちゃいけないのよ! もう、私、授業があるのよ!

[Anri] ああ、待って、ヘレナ、行かないで!キミこそが今日のこの計画の要なんだから!

[Aisha] あの、本当に何をするんでしょう……?

[Helena] そうよ、杏里。説明してほしいわ。

[Anri] ふっふっふ、では説明しよう、諸君!

[Anri] アイーシャは、うまく他人に接することができないって言ってたよね。

[Aisha] はい……。

[Anri] それは、他人に接する自分を持つことができないんじゃないかなって考えたんだ。

[Anri] アイーシャはもちろん、素敵な子だよ。でもね、自信を持って自らが輝きだせば、キミの世界は、きっともっと素敵になると思うんだ!

[Aisha] あ……。

[Helena] ……確かに、ヤンさんのことについてはそうかもしれないけど……。

[Anri] 手っ取り早い自信の源は、己の能力への自負だよ。そこで、我らがセカンドクラスでも才媛と名高い、ヘレナにアイーシャの家庭教師をやってもらおうというわけさ!

[Helena] ……………………。

[Aisha] ……………………。

[Narration] 鼻高々にそう説明する杏里に、ヘレナの半ば呆れ半ば呆然とした視線と、アイーシャの困惑した視線が向けられる。

[Anri] あれ? どうしたの?

[Anri] あ、アイーシャ、ヘレナだったらきっと家庭教師として問題ないよ。だって、どの科目でも必ず、クラスで6位から10位の成績なんだから。

[Helena] 変なこと言わなくていいの!杏里、あなたね……。

[Aisha] あの、杏里……、私……。

[Anri] ん?

[Aisha] 忘れてるかもしれないけど、飛び級して……、今、サードクラスの授業、受けてるんです……。

[Helena] そういうことよ。

[Anri] ………………あれ?

[Helena] あれ、じゃありません!もう、杏里! あなたってばどうしてそう、考えなしな子なの!?

[Helena] よくわかったわ。誰よりもしっかりとした知識が必要なのはあなたよ、杏里! ただでさえ成績が悪いのに、ここ一週間、授業にも出てないんですからね!

[Anri] だって、ボクは謹慎中で……。

[Helena] そんな言い訳が通用しますか! 今日はこれから、先週の遅れを取り戻しますからね!ヤンさん、あなたも協力してくださいね!

[Aisha] え、あ、あの……。

[Anri] えー!? そんなぁ!

[Helena] 問答無用です! テキストを開きなさい!

[Narration] ヘレナの地獄の集中講義はその後、二時間にもわたって続いた。

[Narration] アイーシャは実に的確にヘレナを補佐し、杏里に根気よく学習の要点を伝えていった。おかげで、杏里にしては奇跡のような学習効率だった。

[Anri] ……ぢ、地獄だった……。

[Narration] ヘレナが帰った後、杏里は机の上に突っ伏してうめいた。

[Aisha] あ、あの……。

[Anri] 藪をつついてヘレナを出す……。やぶヘレ?

[Aisha] そ、その……。

[Anri] ごめんよ、アイーシャ。キミのための時間だったのに、とんだことになってしまって……。

[Aisha] そ、それは別にいいんです……、けど……。

[Anri] でもね!

[Narration] 杏里は机の上から上体を引き剥がす。

[Anri] 明日はまた、別のことを教えてあげるよ。なにしろ、いろいろいるからね! ボクの子猫ちゃん……、ゴ、ゴホン! 友人達ときたら!

[Anri] どうかな、アイーシャ。余計なお世話じゃなきゃいいんだけど……。

[Aisha] ……ううん、杏里の気持ちはとても嬉しいです。私、頑張ってみます。

[Narration] 杏里のための冷たいジュースを差し出しながら、アイーシャは答えた。

[Anri] うん! さあ、アイーシャ、明日から特訓だ!

[Aisha] え、ええ……。と、特訓……?

[Anri] うん。

[Aisha] あの、杏里……。日本の『源氏物語』って読んだことありますか……?

[Anri] ないよ!

[Aisha] それじゃ、『マイフェアレディ』は……?

[Anri] 何度も見たよ!

[Aisha] ……。

sapphism_no_gensou/3211.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)