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sapphism_no_gensou:3111

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[Anri] おや? あれは……。

[Aisha] ………………。

[Narration] 杏里の視線の先に、褐色の肌をした少女が大廊下を歩いていた。

[Narration] 正午をわずかにまわった時間。大廊下は昼休みを好みの場所で過ごそうと移動する学生達が行き交う。

[Narration] 学園の大動脈ともいえるこの大廊下からカリヨン広場、空中庭園、大教室や購買部通り、学生寮の個室まで移動できる。

[Narration] 学生達は数人づつ連れだって、明るいおしゃべりを響かせる。その中を、ややうつむいて一人、その少女は歩いていた。

[Anri] アイーシャ・スカーレット・ヤン……。

[Narration] 聞こえようのない声でつぶやく。

[Narration] 名前は知っていた。知ったのはほんの数日と前のことでもないが。二つにわけて結った長い髪を揺らしながら歩く姿を、杏里はぼんやりと見送った。

[Anri] はぁ……。

[Narration] 深い深いため息をつく。

[Anri] エキゾチックなあの肌の色合い……。梳いた指に心地よかろうあの黒い長い髪……。どこか控えめなたたずまい……。

[Anri] ああ、何もかも、ボクの好みなんだけどな、こうして見ると……。

[Anri] でも、サードクラスなんだよなぁ。いずれボクもあの制服を着るようになるんだろうけど、今、こうして見るだけなら、忌まわしい以外のなにものでもない。

[Anri] ああ、もし彼女の着る服がファーストクラスのものであったなら……。いや、単純に着ているってだけではダメなんだけど……。

[Anri] あーあ、なんで彼女を選んじゃったんだろう、ボクは。どうにかしてたのかなぁ。

[Anri] 今から、変更したいって言っても、かなえさん、聞いてくれないだろうな……。はぁ、ちょっと気分転換に、誰かのところに遊びにでも行こうかな……。

[Narration] 立っていた柱の陰から、もう一度、大廊下を見渡す。すでに、アイーシャの姿は見えなくなっている。

[Narration] 杏里はまたため息をつくと、そこから立ち去った。

sapphism_no_gensou/3111.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)