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sapphism_no_gensou:3022

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何にも教えてあげないわよ……!

それはまずいのでヘレナを放す

[Anri] わかった、降参! 悪かったよ、ヘレナ。

[Helena] あ……。

[Narration] 杏里の腕が、ヘレナの身体から離れる。

[Narration] 同時に口から出たため息の中に、安堵とともに、未発に終わった行為への未練が含まれていた気がして、ヘレナは強く頭を振った。

[Anri] ……もしかして、やめちゃまずかった?

[Narration] こういうことばかりには鋭いその言葉に、ヘレナは顔を上げ、わずかに潤みながらも鋭い視線を杏里に向ける。

[Helena] そんなわけないでしょう!

[Helena] は、恥を知りなさい! こんなところであんなことを……、はしたない!

[Anri] だから悪かったってば。

[Helena] その言葉のどこに反省があるというの!

[Anri] あんまりしてないけど、一応、してるよ、反省。だからさ、ヘレナが知ってることを……。

[Narration] そう言いかけて、さすがの杏里もヘレナの形相に気づく。

[Helena] ………………。

[Anri] あ、あのさ、ヘレナ……。わ、悪かったかな? さすがに、ほんとに……。

[Helena] ……部屋に……。

[Anri] へ?

[Helena] 部屋に戻りなさい、杏里!謹慎中のあなたがこんなところを出歩いていていいわけないでしょう!

[Anri] あ、だ、だからさ、ヘレナ。おとなしく謹慎なんてしてらんないんだってば……。

[Helena] 黙りなさい! 今すぐここから立ち去らないと、PSを呼ぶわよ!

[Anri] お、落ち着こうよ、ヘレナ。そんな顔しないで、いつも通りの素敵な笑顔を……。

[Helena] さあ早く!

[Anri] う……。

[Narration] 気圧されんばかりのヘレナの剣幕に、さすがの杏里も撤退を選択するしかなかった。

[Anri] わかったよ。ここはヘレナの言うとおりにするよ。でもさ、これから儚くも監獄へとつながれるこのボクに、はなむけの極秘情報を教えてくれないかな?

[Helena] ……知らないわ。

[Anri] え? だって、さっき、何か教えてくれるって……。

[Helena] 何のこと? 知らないわよ、私は。そんなこと、何一つ!

[Anri] えー!?

[Narration] 抗議の声をあげた杏里に、ヘレナが鋭い視線と言葉を返す。

[Helena] 何か?

[Anri] ……ちぇ、わかったよ。おとなしく部屋に戻るよ。

[Narration] 杏里のその言葉を聞いて、ヘレナは乱れた服の襟元を直しながら、息をひとつついた。

[Narration] その吐息を聞いた時、圧倒され続けていた杏里の心に余裕が生まれ、すぐさま、イタズラ心に昇華される。

[Anri] ヘレナ……、ごめんね。

[Narration] ヘレナに背を向けながら、杏里は小さな声で謝る。

[Helena] あ……、そ、その……、わかってくれればいいのよ。

[Narration] 背を向けた杏里の肩の落ち具合を見て、ヘレナも自分の言い過ぎに気づく。しかしそれも、この直後の杏里の言葉が届いてくるまでだった。

[Anri] ほんとにごめん。最後までしてあげなくて。

[Helena] ……!!

[Narration] 次の瞬間、杏里は軽やかに走り出す。猛烈な勢いで背中に投げつけられるヘレナの怒声をかわしながら。

[Anri] ふぅ……。

[Narration] ヘレナの声が聞こえなくなるまで、たっぷりと100メートルも通路を走った後、杏里は立ち止まって息を整える。

[Anri] やれやれ……、結局、情報はなし、か。

[Narration] 何も得られなかったのは、明らかに杏里に原因があるのだが、そんなことを気にかけもせずにつぶやく。

[Anri] まいったな。ヘレナといいことできなかったばっかりか、何も聞き出せなかった上に怒らせちゃった。

[Narration] さすがに、少しばかり声のトーンを落としてつぶやきながら、数歩を進む。

[Anri] ま、いっか。

[Anri] ヘレナからは、また機会を改めて聞けばいいや。それに、ニコルやイライザからもいい話が聞けるって言ってたし。

[Anri] 八方ふさがりかと思ってたけど、そうでもないね。うん、前途洋々ってとこだね。控えめに言って。

[Narration] そう身勝手な結論を導き出すと、杏里は通路を進んでいく。ここから、自室までは歩いて数分の距離だ。

[Narration] 今日のところは戻って、ゆっくりとバスタイムを楽しむつもりとしよう、いつもの通りに。

それはまずいのでヘレナを説得する

[Anri] 悲しいな。ならば、キミをこうして抱きしめたまま、退学の宣告を待つとしよう。

[Helena] や、やめて……! そ、そこは……。

[Narration] 杏里の息がかかるたびに、腕が触れるたびに、ヘレナは身体をよじり、息を荒くしていく。

[Narration] その抵抗こそが、杏里に愛情とも言い換えられる嗜虐心を、そして、ヘレナ自身に絶え間ない刺激を、生むことになる。

[Narration] それに気づかないのか、あるいは気づかぬことにしてるのか、ヘレナはなおも抗い続ける。

[Helena] や……、やめて、杏里……。ほ、ほんとうに、教えてあげないわよ。ん……!

[Narration] 杏里の唇が首筋にほんのわずかに触れた瞬間、ヘレナは身体を震わせ、背をそらせた。

[Helena] や、やめて……。あ……、杏里ってば……。

[Anri] ヘレナのやめては嘘ばっかりだ。

[Narration] 背後から杏里に抱きすくめられ、身悶えしながら、荒い息をあげるヘレナ。しかし、杏里のその言葉に、詰と振り返り、応える。

[Helena] そ、そんなこと……!

[Anri] 証拠を見せてあげるよ。いつものヘレナを教えてあげる。いつもみたいにね。素敵なヘレナを。

[Narration] 客観的には短い失神から目を覚ますと、ヘレナはゆっくりと身を起こす。

[Narration] 朦朧としているはずの意識を頭を振って切り換えると、乱れた服を直し始める。

[Anri] ………………。

[Narration] 責め立てていた杏里も当然疲れている。しかし、あれだけ激しく感じて絶頂を迎えたはずのヘレナの、気丈さゆえの復活の早さにはいつも感心させられる。

[Narration] そう思って彼女を眺めていたところに、ヘレナが強烈な視線を向けてきた。

[Helena] ………………!

[Anri] え、と、あの……。

[Narration] さすがに、直前の状況から事態のまずさがわかる。といっても、杏里とヘレナの間ではいつものこととも言えるが。

[Anri] あの、ヘレ……。

[Helena] 杏里! あなたという人は……!

[Helena] こんな場所で、あんな……、何を考えているの!

[Anri] そ、それは、その……。

[Narration] 気にしちゃだめだよ、ヘレナ、いつものことじゃないか。

[Narration] さすがにそうとは言えない。一度、そう口走った時は、一週間もの間、指さえ触れさせてくれなかった。杏里にとって、地獄の一週間だった。

[Anri] (あの時は、結局、押し倒して仲直りしたんだよなぁ……。隙を見つけるまでが長かった……)

[Helena] ……杏里! 聞いてるの!?

[Anri] あ、あ、うん。

[Anri] その、ごめんよ、ヘレナ。キミの可愛い顔を見てたら、つい……。

[Helena] そんなことは言わなくてもいいのよ!

[Helena] ……杏里、あなた、自分の立場がわかってるの?

[Narration] 顔を赤くして杏里の言葉をさえぎってから、ヘレナは、大きくなりすぎた声のトーンを落として杏里に問いかける。

[Helena] ランカスターさんが取り計らってくれたからといっても、謹慎中であることには変わらないのよ?

[Helena] それも、あと二週間余りで退学を待つ身なのよ?無実の罪で!

[Helena] 杏里、お願いだからもう少し慎重に行動して。あなたの潔白を証明するためによ。

[Helena] あなたといると……、私は時々、ひどく自分が許せない気分にさせられるけど、それでも、あなたが大切な友人であることには変わりはないわ。

[Helena] こんなことで、まだ残っている時間を失いたくはないの。失ってほしくはないのよ。

[Anri] ヘレナ……。

[Narration] 言葉を、見失う。

[Narration] 杏里には、6人を数える今の子猫ちゃん達すべてに、分け隔てなく等しく、愛情を捧げているという自信がある。

[Narration] それは、その時、その場所にいる目の前の子猫ちゃんに、自分のありったけの気持ちを注いでいるという意味だ。

[Narration] しかしもし、愛情を、語り、触れあった時間の長さだけで測れるのだとしたら、杏里はヘレナにこそ、もっとも愛情を持っているといえる。

[Narration] それだけの時間を、杏里とヘレナは共有してきた。

[Narration] 口うるさく、正義を信じ、顔を合わせれば風紀のなんたるかを説く少女。

[Narration] 彼女の態度に、時に辟易としながらも、すぐにまた戯れかけてしまう理由は、けして、身体を重ねた時に得られる至福だけではない。

[Anri] わかった、まじめに頑張るよ。

[Helena] ほんとに?

[Anri] 誓って! かなえさんに推理してもらわないことにはどうにもならないけど、そのための情報集めには全力を尽くすよ。

[Helena] うん。

[Narration] ヘレナは、杏里の言葉を受け止めて、短くうなずく。

[Anri] ありがとう、ヘレナ、心配してくれて。うん、こうしちゃいられないんだよね。早速、捜査に励むとするよ!

[Helena] 頑張ってね、杏里。

[Narration] 身を翻す杏里に、ヘレナが声をかける。

[Anri] うん! じゃあね、ヘレナ!

[Anri] あ…………。

[Narration] ヘレナと別れてしばらくたってから、杏里は気づいた。

[Anri] ヘレナの知っている情報を聞くの、忘れちゃった……。ま、いっか。今度会った時に聞かせてもらおう。

[Anri] ……できるなら、ヘレナの身体に聞けるってのがいいな、やっぱり!

sapphism_no_gensou/3022.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)