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sapphism_no_gensou:2721

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[Narration] ──そして、ガラ・パーティー当日。

[Narration] ビジターズクラスのみならず、すべての学生が着飾り、盛り上がっていた。

[Narration] ことに多くの学生にとって、パーティーはいずれ社交界デビューする時の練習という意味合いもある。

[Narration] あるいは、年頃の少女だけで気軽に楽しめる、今だけのパーティーとも言えるかもしれない。

[Narration] 多くの学生は、学園を震撼させてきたレイプ事件のことさえ忘れ、今日という日を楽しんでいた。

[Narration] そう──一部の学生をのぞいて。

[Anri] ──どうだい?

[Alma] いえ、やはりお部屋の方には戻っていませんでした。

[Anri] イライザの話だと、パーティー会場でもまったく見かけてないらしい。

[Anri] まったく、どこ行ったんだ、かなえさんは……!

[Narration] 杏里はアルマと連れ立って、今日は朝からずっと、天京院の行方を捜していた。

[Narration] しかしすでに部屋はもぬけのからで、本人の行方もまったく知れない。

[Narration] 杏里は子猫ちゃんたちにも協力を頼んで行方を捜していたが、いまのところまったく手がかりはなかった。

[Anri] ヘレナとイライザは会場で仕事があるから、とりあえずあそこに現れたら知らせてくれると言っていたけど……。

[Alma] バンクロフトさんは、自分も捜すとおっしゃって、テーブルの下に……。

[Anri] テーブル?

[Alma] はい。……どういうことでしょう?

[Narration] そんなこと杏里にだってわからない。

[Narration] 杏里にわからなければ、他の誰にも理解できないだろう。

[Anri] ニコルとクローエは、いまあんまり人のいない学園区を見て回ってくれてる。

[Anri] ニキも、自分から居住区を見てまわってくれると言ってくれた。

[Anri] ……みんな、せっかくのパーティーなのに申し訳ないよ。

[Alma] ……杏里様のために何かできるのが、嬉しいんですよ。

[Anri] ……え?

[Alma] いえ……でも、これだけ捜しても、朝から見た人もいないというのは……。

[Anri] かくれんぼも天才だね、かなえさんは。

[Anri] ボクは昔から、敵も味方も多かったけど。

[Anri] 敵になった相手を、怖いなんて思ったことがなかった。けど……。

[Anri] かなえさんだけは、いやだな。……勝てる気がしない。

[Alma] ………………。

[Narration] 明日になれば、ビジターズクラスの学生と一緒に、杏里は強制退学となる。

[Narration] たとえ天京院が自首したとしても、今度は彼女が退学になるのだから、言葉をかわす時間はない。

[Narration] はっきりと話をつける、今夜が最後のチャンスなのだ。

[Anri] 仕方ない……アルマ、手分けしよう。

[Anri] ボクは船尾のほうへ回るから、アルマは船首のほうから見てきてくれ。

[Alma] ええ、わかりました。

[Anri] とにかくボクが話をしたいと、それだけ伝えて。

[Alma] ──はい。

[Narration] アルマと別れた杏里は、船尾方向に向かう通路へ進んだ。

[Narration] 人間ひとり捜すには、この船は広すぎるほど広いが、あきらめるわけにはいかない。

[Anri] (──どこに居るんだ、かなえさん!?)

[Narration] 焦りつつ、足を速めたところへ──。

[Narration] ──ガツン!

[Narration] いきなり、何かが頭に振り下ろされた。

[Anri] (──なっ!)

[Narration] 意識の海に火花が飛び散り、杏里は暗闇に落ちていった──。

sapphism_no_gensou/2721.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)