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sapphism_no_gensou:2681

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[Narration] 自室にごろんと横になって、杏里は手元にある金属をしげしげと眺めた。

[Narration] コンピューターの部品のように見えるが、その方面に疎い杏里には、何に使うものか皆目見当がつかない。

[Narration] 天京院の持ち物だとわかっているのだから、次に会うまで預かっておくだけでいいのだが……。

[Anri] なんか……気になるんだよな。

[Narration] 昼間の、天京院の態度のせいかもしれない。

[Narration] 知り合ってずいぶんたつが、あんな彼女を見たのは初めてだった。

[Anri] ……誰かに相談しようかな?

[Narration] 杏里はそれをポケットに放り込んだ。

[Alma] まあ、それで、わたしに?

[Anri] うん、アルマって、こういうのに詳しい?

[Alma] 詳しくはありませんけれど……。

[Narration] アルマは杏里の手から金属部品を受け取って、しばらく眺めた。

[Alma] おそらく、デジタルカメラのメモリーだと思うのですけれど……。

[Anri] デジカメのメモリー?ああ、なるほど。

[Narration] 言われてみれば、それらしきメーカー名が刻まれている。

[Alma] クラスメートの持っているのと同じタイプですから。

[Anri] ふぅん……何が写ってるんだろう?

[Anri] アルマは、デジカメは?

[Alma] いえ、持っていません。

[Alma] でも、確か電算室のパソコンで見ることができるはずですよ。

[Anri] そっかそっか……。

[Alma] 杏里様……でも、それは天京院様のなのでしょう?

[Alma] 内容を勝手に見るのは、よろしくないのではありませんか?

[Anri] かたいこと言いっこなしだよ、アルマ。

[Anri] それに……いや。

[Narration] かなえさんの様子が気になって……というつぶやきは、杏里の口の中で消えた。

[Narration] アルマの自習──という名目で電算室の鍵を借り、ふたりはこっそりと忍び込んだ。

[Narration] アルマはともかく、杏里は見つかるといろいろ面倒だ。

[Narration] できるだけ、人目につきたくなかった。

[Alma] さあ、杏里様。

[Anri] メルシー、アルマ。

[Narration] 杏里はメモリースティックをアルマに渡した。

[Narration] どうもコンピューターというのとは、相性があわない。

[Narration] アルマがいなければ、杏里はいまだこれが何かもわからないでいたろう。

[Anri] ……何が写ってるかな?

[Alma] 起動しますから、ちょっと待ってくださいね。

[Anri] なにかいやらしい写真だったらどうしよう?

[Alma] 天京院様ですから、そういうものではないのでは……。

[Narration] アルマが接続の用意をするあいだ、ふたりは、わくわくしながら軽口を叩き合った。

[Anri] ところで、アルマのクラスメートは何を撮ってるんだい、こんな船の中じゃ景色は意味がないし……。

[Narration] 何気ない質問だったが、アルマはぽっとなった。

[Alma] それは、その……お友達の写真を……。

[Anri] ……それだけ?

[Narration] アルマの様子を見て、杏里が顔を寄せた。

[Alma] ほ、本当ですわ……。

[Alma] ただ、その……わざと着替え中やお風呂に入るところを狙って撮っているんです。

[Alma] ちょっと……エッチ、です。

[Anri] なるほど、カメラか……。

[Narration] したり顔で頷く杏里を、アルマが不安そうに見る。

[Alma] 杏里様……なにか、よからぬことを考えていらっしゃいませんか?

[Anri] いやまさか。

[Alma] いけませんよ、カメラなんて……。

[Anri] 案外、好きになるかもしれないよ?

[Alma] そんなことありません!

[Anri] アルマを撮るとは限らないけど。

[Alma] えっ、じゃ、じゃあ誰を?

[Narration] ──などとふたりがじゃれあっているうちに、データの転送が終了した。

[Alma] ……終わりました。これで、もう見られますよ。

[Anri] んじゃ、早速よろしく。

[Alma] はい。

[Narration] アルマは画像データをクリックした。

[Narration] 最初の1枚は、えらく暗くて、何だかよくわからなかった。

[Anri] これじゃわからないな。

[Alma] 次にいってみましょうか。

[Narration] アルマが次の画像を表示したとたん、ふたりは凍りついた。

[Anri] これは……!?

[Alma] ……あ、杏里様?

[Narration] 画面上に鮮明に再現されているのは、明かに陵辱直後の少女だった。

[Narration] しかも、目隠しをされているその少女に、杏里は見覚えがあった。

[Anri] アイーシャ・スカーレット・ヤン……。

[Alma] あ……それじゃあ、この方が……?

[Narration] 最新の被害者。

[Narration] それは、明かに陵辱直後であった。

[Narration] 現場保存のためPSが撮影したものではありえない。

[Anri] なんで……こんな写真を、かなえさんが持ってるんだ……?

[Narration] 呆然とつぶやく杏里を、ハッとアルマが振りかえった。

[Alma] 杏里様……これは……。

[Narration] 杏里は呆けたように、じっと写真を見つめたまま動かなかった……。

sapphism_no_gensou/2681.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)