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sapphism_no_gensou:2661

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[Narration] ここに来て、カフェテラスの一角に座れば、イライザはすぐにやって来る。

[Narration] 別に取り決めがあるわけではないが、自然とそうなったのだ。

[Eliza] いらっしゃいませ。

[Narration] 仕事中のため、あくまでオーダーを取るふりをしながら杏里に近づく。

[Eliza] ──今日は、どうしました。杏里様。

[Anri] うん……ちょっと聞くけど、この船の人間で、もっともお金を必要としてるのは、誰かな?

[Eliza] ……お金ですか?

[Anri] 金持ちだから、お金に困ってない……ということはないよね?

[Anri] 金持ちだからこそ、困るときは破格の困り方をするだろうし。

[Eliza] そう……ですねぇ。

[Anri] 心当たりないかな?

[Narration] イライザはしばらく考え込み、ため息をついた。

[Eliza] 杏里様……それは、ようするに例の脅迫事件についてですね?

[Anri] そうだよ。

[Eliza] では……恥ずかしながら申し上げますが、この船でもっともお金を必要としているのは、私しかいないと思います。

[Anri] ……え?ああ、そういえば。

[Narration] イライザが親の借金を背負い、借金取りから逃れるためメイドをしている事実を、杏里はいまさら思い出した。

[Eliza] 正確な金額は馬鹿馬鹿しいので覚えてもいませんが、百億ドルはくだらないかと。

[Eliza] あるいは今ごろ、利子がついてもっと増えているかもしれませんが。

[Anri] そうか……それを返さないと、治外法権であるこの船から一歩も降りられないんだっけ。

[Eliza] その通りでございます……。

[Narration] イライザの営業スマイルも、どことなく疲れたように見えた。

[Eliza] よほどの幸運がないかぎり、一生をこの船で終えることになるでしょう。

[Anri] ……切実だけど……。

[Eliza] だからといって、お嬢様方を襲って脅迫など──しておりませんよ?

[Anri] うん……だよね。

[Eliza] あとは、まあ……ウェルズさんでしょうか。

[Anri] ウェルズさん?

[Narration] いきなりアルマのお目付け役の名前が出てきて、杏里はきょとんとした。

[Eliza] 賭博の借金がかさんで、職員や船員からもずいぶん借り入れているようですよ。

[Eliza] まあ、私の借金とは桁がぜんぜん違いますけど。

[Anri] ふうん……そうか……。

sapphism_no_gensou/2661.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)