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sapphism_no_gensou:2631

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[Narration] いつものごとく静寂な図書館。クローエは貸し出しカウンターの中に座って、本を読んでいた。

[Anri] やあ、クローエ。

[Chloe] 杏里じゃない……どうしたの?

[Anri] なにが?

[Chloe] だっていまの挨拶、とても杏里とは思えなかったわよ。静かだし。

[Anri] いやだな、まるでいつもいつもボクがやかましいみたいじゃないか。

[Chloe] みたい、じゃなくてそうなの。

[Chloe] 何か用?

[Anri] つれないな、ボクが図書館にやって来る理由なんて、キミに会いに来る以外あると思うかい?

[Chloe] ……まあ、ないでしょうね。

[Anri] そうとも。

[Chloe] いまのは皮肉だったんだけど……。

[Narration] 嘆息してクローエは本を閉じた。

[Chloe] それで、用件はやっぱり、事件についてでしょう?

[Anri] うん、ささいな情報でもいいから教えて欲しいな。

[Chloe] そう言ってもねぇ……。

[Narration] クローエは自分の見聞きした噂話を2、3披露したが、それだけで話は終わってしまった。

[Anri] ずいぶんシンプルだな。

[Chloe] ほとんどここで本を読んでるからね。あまり、噂話にも縁がないわ。

[Anri] こんな知の宝庫に居ながら。

[Chloe] 図書館の資料をさぐったって、犯罪を解決する糸口なんてそうそう見つかるものじゃないわ。

[Chloe] こんなところに来るより、現場でも回っていた方がいいんじゃないの?

[Anri] 現場検証はPSが何度もして、その都度何も発見できていないんだ。

[Anri] イライザやニコルを通じて、そっちの情報だけは通るようにしてあるんだけど。

[Narration] だからこそ、杏里は学生の話の中から情報を集めるべし。それが、天京院が最初に決めた方針だった。

[Chloe] けど、最後にものをいうのは、やはり物証だと思うわよ?

[Anri] うーん……。

[Narration] 残された時間を考えれば、杏里とて焦らないわけではない。

[Narration] しかし、逆にいまさら、正統的な手段でいちから捜査している時間は残されていなかった。

[Anri] ボクなりのやり方を続けるしかないよ……神さまも努力は認めてくれるだろう。

[Chloe] 杏里に味方する神さまは少ないと思うけどね。

[Anri] おぉ、ついに神にも見放されたか!──あ、そうだ。

[Narration] 杏里は、ふとレイチェルから聞いたデータ盗難事件の話を思い出し、クローエに尋ねた。

[Anri] ……ってことなんだけど、知ってる、クローエ?

[Chloe] あれだけ騒ぎになった事件だもの。もちろん知ってるけど……。

[Chloe] 杏里、本当に知らなかったの?

[Anri] 不思議だね?

[Chloe] ……まあいいわ。わたしも確かめたわけではないけど、確かに犯人については噂されていたわよ。

[Anri] ……誰?

[Chloe] 天京院さん。

[Narration] 杏里が眼を丸くした。

[Anri] ……かなえさんが……。

[Chloe] 本当かどうかはわからないけどね……まあ、あの人のことだから、本当だとしても、証拠なんか残さなかったろうし。

[Anri] ………………。

[Chloe] ……どうしたの、杏里?

[Anri] あ、いや……。

[Anri] そうか、やっぱりかなえさんには、それぐらいの芸当はできるんだねぇ。

[Anri] この学園のコンピューターから、データを持ち出すような真似が……。

[Narration] 杏里はクローエに礼を言って、図書室を後にした。

[Narration] 足取りは、重かった。

[Anri] なんのために?

[Chloe] 知らないわ。別にあの人が犯人だという証拠だって、あったわけじゃないし。

[Chloe] 本当だとしても、証拠なんて残さないでしょう、天京院さんなら。

[Anri] そうか……。

[Narration] 杏里はクローエに礼を言って、図書室を後にした。

sapphism_no_gensou/2631.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)