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sapphism_no_gensou:2572

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[Anri] さて、お互いの紹介も終わったところで……。

[Alma] はい?

[Anri] こうして裸のスキンシップをとっていることを無駄にするのは、愚かというものだよね?

[Alma] ……?

[Narration] アルマが首をかしげる。イライザは杏里が何を言い出すかおよそ見当はついたので、何も言わなかった。

[Anri] このトレビアーンな日を記念して、お互いをよりよく知ることがボクらには必要だと思わない? 思うよね?

[Alma] ……?

[Anri] よし、そうと決まればアルマもイライザもそんな邪魔なもん外して、脱いで!

[Alma] えっ? ……えぇぇっ!?

[Anri] 大丈夫、鍵もかけたから、もう誰もこない!

[Alma] いえっ、その……ま、待ってください、心の準備が……!

[Eliza] 杏里様、杏里様。

[Narration] アルマにのしかかろうとしていた杏里を、イライザが優しく引き剥がした。

[Eliza] 焦ってはいけませんよ、杏里様。アルマ様はまだ、そういうことに馴れていないんですから。

[Eliza] もっと優しくムードを盛り上げてさしあげなくては……。

[Anri] うん、イライザの言うことももっともだ。

[Anri] どうするのが、いいだろう?

[Eliza] そうですね……。

[Narration] アルマ不在で何か大事なことが決められそうになっていたが、当人はどっくどっく跳ねる心臓を落ち着かせようとして、全く話を聞いていなかった。

[Narration] 気がつくと、杏里が立ちあがり、いつの間にかイライザが隣に座っていた。

[Alma] ……え?

[Eliza] 大丈夫です、楽にしてください。

[Narration] イライザの艶を含んだ甘いささやきが、アルマの耳に吹きかけられた。

[Eliza] アルマ様、ぶしつけな質問ですけれど、ひとり遊びのご経験はありますか?

[Alma] え……よく、わかりません。

[Anri] ああ、イライザ。アルマは本からの知識が多いから、あまり隠語を使うとよくわからないんだ。

[Narration] あら、と目をやって、イライザは再びアルマに向き直った。

[Eliza] ではアルマ様、オナニー、あるいは、マスターベーションのご経験は?

[Narration] 今度は意味が通ったらしい。アルマは明かにうろたえた。

[Alma] あ、……えっと、いえ、別に。

[Eliza] あるようですね。

[Alma] ……はい。

[Narration] 断言されて、アルマはしぶしぶ肯定した。

[Eliza] 自慰行為は、もちろんひとりで寂しい夜に、自分を慰めるため行うことが多いと思いますが……。

[Eliza] 杏里様とつきあうのであれば、他にも必要な時があります。たとえば、準備しておく時などですね。

[Alma] じゅ、準備……?

[Eliza] はい、杏里様に愛していただく前に、自分で少し用意しておくのですわ。

[Narration] それが何を意味するのか、アルマにもおぼろげに理解できた。

[Narration] ますます鼓動は早くなり、顔が熱くなる。

[Eliza] せっかくの機会ですから、少し、それをお教えしようかと思います。

[Alma] は……はい。

[Narration] 雰囲気に呑まれて、思わずイエスと答えてしまった。

[Narration] その様子を、杏里は面白そうに眺めている。

[Eliza] アルマ様は、どこが一番感じますか?

[Narration] イライザの指が、すっ……とタオルの裾から差し込まれた。

[Alma] あ……いやっ!?

[Narration] アルマのそこは汗でヌルヌルにはなっていたものの、まだ何の淫心さえ知らぬように、ひっそりと閉じていた。

[Narration] イライザにはそれが、なんとなく好ましく感じた。

[Eliza] やはり、ここですか?

[Narration] きゅっ、とクリトリスを押しつぶす。アルマが短い悲鳴をあげた。

[Eliza] 申し訳ありません、いきなりでは痛かったですね。

[Narration] 謝りながら、指はツツ……と、アルマの太股を撫でる。

[Narration] 杏里とする時は、イライザはいつもされる側に徹していたので、彼女のこの様子は杏里にも興味の的だった。

[Eliza] まずリラックスして……想像の中で、自分の恥ずかしい姿を思い浮かべて。

[Alma] ………………。

[Eliza] 見せてはいけない所を見せて……触れてはいけない所を触られて……恥ずかしいところをいじられて……

[Narration] 耳元でねっとりささやく声に、アルマはぼうっと聞きほれていた。

[Narration] サウナの熱気だけではない、身体の奥から熱いものがわいてくる。

[Eliza] ほら……濡れてきたでしょう?

[Alma] あっ……!

[Narration] その部分の奥から、じわっ、と何かが湧き出すのを感じて、アルマはひざを閉じた。

[Eliza] そんなに緊張しないで……大丈夫、痛いことはしないから。

[Narration] イライザはアルマの手に自分の手を添え、言葉だけをささやく。

[Narration] アルマは催眠術にでもかかったように、自分の身体が反応していくのを止められなかった。

[Narration] ついにアルマが自分の指を股間に這わせるのを見て、杏里が身を乗り出す。

[Narration] 実をいえば、さっきから参加したくてたまらなかったのだ。

[Anri] アルマ!

[Narration] その手が触れようとした時──。

[Wells] お嬢様、どこですかっ!?

[Narration] 怒声が響き、杏里はがっくりと肩をおとした。

[Anri] ……やれやれ、どうしようかな?

[Eliza] いまのアルマ様は、見せない方がよろしいでしょうねぇ……。

[Narration] 息を荒くし、トロンとした目を宙にさ迷わせているアルマは、確かにこのままウェルズに渡すにはまずかった。

[Anri] やれやれ、しょうがない。ボクが時間を稼いでくるよ。

[Anri] アルマに冷たいものでも飲ませてあげてくれ。

[Eliza] ──わかりました。

[Narration] アルマを託して、杏里は個室を出ていった。イライザは言われたとおり、氷の溶け出したドリンクをアルマに渡す。

[Narration] それを口にして、アルマはようやく意識がこちらの世界に戻ってきた。

[Alma] ……あっ、あの……。

[Narration] いまさら恥辱に縮こまるアルマを、イライザは苦笑して眺めた。

[Narration] そして、もう一度となりに座る。

[Eliza] お許しください、アルマ様。少し調子に乗りすぎました。

[Alma] ……わたし……恥ずかしい……。

[Eliza] いえ、そのような……むしろ、そんなことを仕掛けたわたしを蔑んでください。

[Eliza] でも……。

[Narration] と、やや口調をあらためる。

[Eliza] 杏里様とこれからもお付き合いしていくとなると、こうした事もたくさんありますよ?

[Eliza] あの人は、まあ……ああいう方ですから、まさかそれで相手が嫌がることがあるなんて、きっと夢にも思っていませんし。

[Alma] いや……ではないのです。ただ、恥ずかしいだけで……。

[Narration] おや、という風にイライザはアルマを見たが、口調を変えることはなかった。

[Eliza] では、経験を積んで馴れること……それと、覚悟をお決めになることですね。

[Alma] 覚悟……?

[Eliza] はい……杏里様にすべてまかせる覚悟、ですわ。

[Eliza] 杏里様は、おそらくアルマ様の考えているより何倍も女好きで……

[Eliza] アルマ様には想像もつかないぐらい浮気性ですよ?

[Eliza] そんな人物にすべてまかせるなんて、とても不安かもしれませんけれど。

[Narration] アルマはうつむいたまま、その言葉を反芻しているようだった。

[Alma] でも……。

[Narration] 小さくつぶやく。

[Alma] もし本当にそうだったとしても、あの方は強くて優しくて、愛されるべき人だと……わたしは思います。

[Eliza] ──!

[Narration] イライザはその言葉に絶句し、横顔を眺めているうち、つい本音を語りたい衝動にかられた。

[Eliza] 私、実はアルマ様のことを、あまり好きではありませんでした。

[Alma] ──えっ?

[Eliza] 杏里様のことを嫉妬して……と思わないでください。

[Eliza] それもまったく無いとは申しませんが、アルマ様が、あまりに無用心なのが気にいらなかったのですわ。

[Narration] 嫌いと告白しているわりに、イライザの表情は優しげだった。

[Narration] アルマもそれを感じ、黙って聞いている。

[Eliza] すぐ人の言うことを信じる、騙される、踊らされる……それでは、自分の意思を持っていないのではないかと。

[Eliza] まるで、人形のようだと思って、好きになれなかったのです。

[Alma] そうですね……確かにわたしは、そう思われるような生き方をしてきたのです……。

[Eliza] でも、少し考えを改めました。

[Alma] ──え?

[Eliza] 杏里様をあんな風に評価できる方が、考えなしとは思えませんから。

[Alma] イライザさん……。

[Eliza] 杏里様は子供で、だからこそ純粋で、時に残酷です。

[Eliza] 脳天気で、いやらしくて……。

[Alma] でも、強くて優しくて……。

[Eliza] ──ええ。

[Eliza] いまの私は、杏里様に助けられてあるのですわ。

[Narration] イライザは誇らしそうに言った。

[Alma] ……わたしが、わたしを見つけられそうになったように、ですね。

[Eliza] はい……きっと、そうです。

[Narration] ふたりの間に、共感と理解の気配が流れた。

[Narration] 恋敵と呼ぶべき相手、そしてだからこそ、その人物にしか理解してもらえない思い。

[Narration] その感覚に、彼女たちはしばらくひたっていたようだった。

[Wells] お嬢様───っ!?

[Eliza] あら、杏里様は突破されてしまったようですわね。

[Eliza] 私もそろそろ退散いたします。それでは、アルマ様、お話できて楽しかったですわ。

[Alma] わたしも……わたしもです、イライザさん。

[Alma] あの、また……。

[Eliza] そうですね、機会があれば……。

[Narration] 少女たちは微笑みあった。

[Narration] その頃、杏里はウェルズに通報され、裸で船内を逃げ回っていたのだが。

[Narration] ふたりがそれを知るのは、しばらく後のことである。

sapphism_no_gensou/2572.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)