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sapphism_no_gensou:2421

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[Narration] ファン・ソヨンが襲われた事件は、単に杏里への風当たりを強くしただけではなかった。

[Narration] 杏里本人にとっても、きちんと言葉を交わしたことのある知り合いが襲われたという衝撃がある。

[Narration] できることなら、ソヨン本人に会って慰めたいし、事件についても──本人が同意してくれるなら──聞きたい。

[Narration] しかし事件の後、ソヨンはこれまでの被害者同様、来賓用個室に移されてしまった。

[Narration] 面会には申請が必要で、今の杏里に許可がおりるはずがない。

[Narration] 忍び込むことも考えたが、PSの監視はかなり厳しいらしい。

[Anri] ソヨン……。

[Narration] 思わず呟きをもらすと、背後から間延びした声が聞こえた。

[Coe] あー、杏里さんだー。

[Anri] キミたち……。

[Narration] 振り向いた杏里を、少し離れて挑戦的に見ているのは、ビジターズクラスの3人組だった。

[Anri] やあ、げん……

[Narration] 反射的に笑顔を見せて呼びかけようとすると、3人がすすすっ……と距離を離す。

[Anri] ……あれ?

[Clare] 杏里先輩……外にいたら、いけないんじゃないんですか?

[Coe] きんしん、なんだよね?

[Anri] ああ、まあその……。

[Narration] 大半の学生は関わり合いを敬遠し、杏里を見ても知らぬふりを決め込んでいる。

[Narration] こうして、面と向かって非難される方が珍しく、杏里は返答に困った。

[Narration] 3人娘はじっ、と杏里を見ていたが、やがてミリエラが口を開いた。

[Mirriela] 先輩……ソヨンちゃんが襲われたんだよ。

[Anri] ……うん。

[Clare] もしかして……杏里先輩が犯人なんですか?

[Narration] これまたハッキリとした詰問に、杏里は絶句してしまった。

[Narration] が、考えてみれば彼女たちは、ソヨンになついていた。

[Narration] もし杏里が犯人なら──憎い仇と考えるだろう。

[Anri] ソヨンを襲ったのは……そもそもの犯人はボクじゃない。けど……。

[Narration] 杏里は、彼女としては珍しいほど真剣な口調で語りかけた。

[Anri] ボクが真犯人を早く見つけられなかったからソヨンが襲われたとするなら、ボクにも責任はある……。

[Narration] 3人娘は、じっと杏里の言葉を聞いていた。

[Anri] だからこそ、謹慎なんかでじっとしていられない……一刻も早く、真犯人を捕まえないと。

[Anri] ……そう思って、謹慎を破って、犯人を捜しているんだよ。

[Anri] もちろん、PSに見つかれば強制連行されるだろうね。

[Clare] ……ソヨンちゃん……。

[Anri] え?

[Clare] ソヨンちゃん、会ってくれないんだ……わたし達に……。

[Mirriela] いまは、会いたくない……もうちょっと待って……って。

[Coe] ごめんなさい……って。

[Anri] そうか……。

[Narration] この子たちにも会いたくないほど傷ついている。

[Narration] 杏里は胸が痛むのを感じた。

[Anri] きっと……犯人は、きっとボクが見つけるよ。

[Narration] 3人は顔を見合わせて、杏里に向き直った。

[Clare] 杏里先輩のこと、信じてるわけじゃないよ……。

[Coe] ソヨンちゃんが、証拠がないのに疑ったらダメって言ってたから。

[Mirriela] だから、PSは呼ばないけど……。

[Anri] ……ありがとう。

[Clare] でも、犯人はきっと捕まえるっていう言葉は、信じるからね。

[Mirriela] 絶対、ね。

[Coe] 絶対だよ?

[Anri] うん、約束するとも。

[Narration] クレア、ミリエラ、コーの3人は、杏里の返事を聞くと、逃げるようにその場を離れた。

[Narration] そして、途中で振り向くと、杏里に手を振ってから去っていった。

[Anri] ……よし、頑張ろう。ボクがめげてる場合じゃない。

sapphism_no_gensou/2421.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)